それから少し経ち、アーカネルの陣営はいよいよ本格的に動くこととなった、アルクラドの地を取り戻すために動いていたのである。
「またお母様にはバックで動いてもらうことになるけど、よろしくね!」
ネシェラはそう言うとアムレイナは頷いた。
「ネシェラこそ気をつけてくださいね。
さあセレイナ、私たちは行きましょう――」
アムレイナはそう言いつつ、セレイナと共にその場を去って行った。
「何をしているんだ?」
リアントスは訊くとネシェラは答えた。
「アーカネル騎士団が動いている裏側の監視役……所謂、密偵ってのをさせてんのよ。
無論、お母様だと存在感が立ちすぎるから、セレイナをつけさせてんのよ。」
リアントスは頷いた。
「こんな状態になってもなお内部の動きに気を配るとは、抜け目がないな。
で、成果は得られたのか?」
ネシェラは頷いた。
「ボロボロとね。それこそ、逆に大勢の人間が怪しいわね。
なんていうか、目を光らせていない人間が少ないのをいいことに、好き勝手している連中がやたら多いのよ。
ただ――肝心の風雲の騎士団につながる件については全然尻尾をつかまさないけど――」
リアントスは考えた。
「てことは――もしかして、アルキュオネの戦いのほうはそのあたりで真相が見えそうか?」
ネシェラは頷いた。
「見えそうというより、ほぼ真相が見えているわね。
つまり、風雲の騎士団の件とはやっぱり別にして考えたほうがいいかもしれないわね。」
リアントスは頷いた。
「やっぱりか――俺も結構探りを入れていたんだが、どうもあの件は職務怠慢が引き起こした問題だったように感じるんだよな――」
ネシェラは考えた。
「ええ、そう。
あれはまさに手間も戦にかけるコストもとにかく手軽で死傷者が発生するということはあってもそれだけで解決するって言う側面のあった作戦――
つまり、人命一つで解決させようというバカバカしい内容だったに過ぎないことはなんとなくだけど見えてきたわね。」
だが、リアントスは――
「だな。
だが――どうしてそれをしなければならなかったのか?
仮にもアーカネル騎士団、騎士道精神に則り、そんな判断をするのもなんとも珍しい気もしなくもないんだが――」
と、まだ怪しむ要素を捨てていなかった。しかし、それについてはネシェラも織り込み済みで、得意げに答えた。
「ええ、まさにそこなのよ。これは私のカンなんだけど――」
リアントスは遮って言った。
「お前のカンでなくたって俺でも予想できるぞ。
あからさまに別の件――風雲の騎士団の件なのかどうかはいいとして、
そっちの件の問題とが重なってアルキュオネの戦いについては雑な作戦しか取れなかった――
そういうことだろ?」
ネシェラは得意げに答えた。
「ふふっ、流石にわかるわよね、その通りよ。
しかもそれについてはしっかりと裏付けまで取ってあるから何かあったことだけは確実ね。」
そうなのか? リアントスは訊くとネシェラは答えた。
「セドラム元執行官長の記録だけど、アルキュオネの戦いについてはしっかりと書いてあったわね。
やっぱり執行官の長ということもあってか、自分が起こした作戦であり、責任にも自分にあるとはっきり書いてあったわね。
ただ――言ってしまうとそれ以外の活動記録が見つかっていないのよね。
もちろん全くないわけじゃあないんだけど、それにしては……あれだけ活動記録を熱心につけている人という割には妙に足りていないというか――」
空白期間か、なるほど――リアントスは考えた。
「だからもしかしたらセドラム自らが消したのか、何者かがセドラムの記録を意図的に消したのか――
そして、消されたところに何かしらの問題があると考えるのが自然って感じね。」
消された記録――
「例の分析機で確認できたのか?」
リアントスは訊くとネシェラは首を振った。
「消した文字ならあぶりだせるけど破り捨てて紛失したページについては分析の対象外よ。」
それもそうか、機械の性質上……。
とはいえ、何かしらの力が働いているのはより確実になったようである。
「実はそこでちょいとカマかけてやろうと思ってね、いくつかワナを張って構えているところなのよ。」
流石はネシェラ……リアントスはニヤッとしていた。
「何をどうしたのかはよくわからんが、こうなったらあんたに負けたやつの吠え面をぜひ拝んでみたいもんだ」
ある日、ヴァナスティアやフォーンの騎士団がアーカネルへと到着すると、
改めて作戦の話が展開された。
それにより、アーカネル騎士団も含めた騎士たちは西の地へと打って出ると、なんとかパタンタまで兇悪な魔物を押し返すことに成功したが、
問題はここからだった。
「魔物も日増しにひどくなってくるな――これではまるで魔界だ」
ディライドはそう言った、これまで見たことのないような魔物や、キラー・スネークなどの平原ではそんなに見かけなかった魔物もウヨウヨといる……
もはや異形の地と呼ぶに相応しい状態だった、故に魔界――なんとも的確な表現である。
「ま、そーゆーワケだから、様々な魔物を各個撃破していくような形で頼むわね。
見たところ、それぞれのポイントでデカイ魔物がいるからそいつらを斃していけばいい感じかしら?」
ネシェラは言うとロイドは頷いた。
「みたいだな、法則は例のキラー・スネークがウヨウヨといたあの森と同じってことか、
つまりヌシクラスの魔物を斃せばとりあえず場は収まると考えればいいってことだ」
アレスも頷いた。
「なるほど、つまりは大きい魔物を狙って斃していけばいいってことだな」
だが、ライアはくぎを刺した。
「やみくもにデカイのだけ斃せばいいってわけじゃあないわ。
必要に応じて取り巻きを先に倒すようにして頂戴、そうでないと多勢に無勢……
大きい魔物との戦いに時間がかかって魔物がどんどん乱入してくるようだと勝ち目なんてないわ。
だからくれぐれも無理のない範囲でお願いね」
となると、魔物を斃す順番というのも大事になってくるってわけか。