海岸の道に出てくると早速魔物の群れが。
「随分と酷いもんだ、俺らがアルトレイに到着したばかりの時も入り口付近まで魔物が迫っていたからな――」
それは申し訳ない……何人かはそう言おうとするが、シュシュラが言った。
「いいのよ、魔物が強すぎるせいよ。そんなことよりもすんでのところで間に合って何よりだったわね」
そう言っていただけるとありがたい。
「よし、それなら早速、あいさつ代わりにフォーン島伝統の大技を見せてやるか」
と言いつつディライドは前に出た。
「おっ! マジで!? なんだなんだ、何が飛び出すんだ!?」
スティアが嬉しそうにそう言うと、ディライドは早速――
「行くぞ! はぁっ!」
なんと、その場から剣閃が瞬時に飛び出し、上空から局所的に魔物の中央めがけて爆散!
「なっ!? なんなんだあれは!? まさか、魔法!?」
アレスも驚いていた。そこへロイドが言った。
「フォーン島伝統の大技っつったろ。そう言ったらずばり”闘気剣術”だって相場が決まっている」
”闘気剣術”……居ながらにして標的に向けて局所的に攻撃を行う剣を用いた神秘なる極意。
特にヴァナスティア聖騎士の扱うのは聖なる極意を行使して繰り出すことから”聖剣術”や”聖剣技”とも呼ばれ、
あだ名す者を葬り去るという――
「そっ、そうか、あれが噂の”闘気剣術”というものだったのか……初めて見たけど、すごい技だな――」
アレスは唖然としていた。
「ぼっと突っ立ってる場合じゃないぞ、敵の援軍だ――」
と、ロイドは剣を取り出して敵に向かい始めると、アレスは焦っていた。
「さてと、残りは男の子たちに任せておこうかしら?」
「そうね、そうしましょ。」
シュシュラは汗をぬぐいながら言うと、ネシェラは腕を組んで得意げに答えた。
その様子にライアとシュタルは顔を見合わせながら苦笑いしていた。
「私らそもそも何にもしていないんだけど、そうしたほうが良さそうね?」
「ネシェラ姉様も言うんだから当然!」
そんなこんなで例の森のところまで戻ってきた一行。
「なんか、空気が重たくないか?」
アレスは不穏な空気を感じるとディライドは剣を取り出した。
「お前たちが通ってきた時に比べると明らかに様子がおかしいということか。
これは問題を除去しないとなんともなりそうにない様子だな――」
するとロイドは――
「いや、なんか、一戦を交えているようだな――」
何かを感じ取ってそう言った。リアントスは訊いた。
「どこでだ!?」
ネシェラも悩んでいた。
「遠くからわずかに聞こえてくるわね、地面を蹴ったような音、
そして恐らくキラー・スネークらしき魔物が地面を這うようなこすった音も――」
エルフ耳なら聞こえるのか? 何人かはそう思ったが理由は定かではなかった。
「とにかく、用心して進むに越したことはないってわけね――」
ライアはそう言うと一行は息をのんだ。
さらに進むが、キラー・スネークの気配が一向にしない。
「この森で何かが起きているのは間違いなさそうだな、見てみろ――」
ディライドはそう言いつつ地面に転がっている魔物の死骸を確かめていた。
「これは――大きな槍のようなもので一突きにした跡だな――」
ロイドはそう言うと、その視線はスティアのほうに――
「おっ……俺!?」
するとネシェラはスティアの持っている大槍に触れながら言った。
「確かに、この手の得物で一突きにしたのは確かね。
でも、それにしてはパワーが強すぎる気がするわね、
言ってしまえば私みたいに上空から一突きにするぐらいの力で貫いているって感じだけど、
これは――」
と、死骸を改めて確認するネシェラだった。
「違うのか?」
アレスは訊くとリアントスが言った。
「全然違う。
上空だったら上から押し潰されたようになるハズだが、こいつはむしろ横から衝突でも食らったかのような感じだ。
だからむしろネシェラかスティアの仕業かと言われればスティアの仕業だと言えなくもない。
だが、こいつがやったにしては死んでからまだそうは時間が経っていない、俺らが以前にここを通ったのは2週間も前の話だしな。
それに――」
その後はライアが続けた。
「それに――彼がやったにしてはちょっと力が強すぎる気がするわね。
彼の能力でやるにはパワーは十分かもしれないけど、この痕を見てよ――」
ライアは死骸の周りを指さしていた。
「これは明らかに魔法の力が働いた痕ね。しかも見てよ――」
と、ネシェラは言うと、その痕は直線状に伸びており、さらに何体ものキラー・スネークの死骸が――
「これはキラー・スネークを一度に轢き殺していると言ったほうが的確ね――」
と、彼女は続けた。
「スティアがやるにしてはちょいと荷が重すぎる所業だな。
てことは他にこういうことができるやつがこの森で大暴れしていたということになりそうか」
リアントスはそう結論付けた。
「マジかよ――俺も負けてらんねえな……」
スティアは悩んでいた。