一方で、女性陣はそっと抜け出していた女勇者の後を追っていた。
「何処へ行くの?」
ライアは訊くとネシェラは答えた。
「ちょっと待ってね……」
彼女はそう言いつつ周囲を見渡していた、すると――
「……とりあえず、ターゲットの一部を確認したわね、彼女に聞いてみようかしら。」
と言いつつ、そこにいる騎士に話しかけた。
「どうかしましたか?」
彼女はそう訊くとネシェラは言った。
「やっぱり、流石は”アナスタシア聖騎士隊”というだけのことはあるわね、
所属している女騎士はみんな美女ばっかりってわけね。」
そう言われて彼女は照れていた。
「そっ、そんなこと……それを言ったらあなたのほうこそではないですか?」
「私? いやいや、私ゃそんなキャラじゃないし。」
また始まった。
「そっ、それより、私が”アナスタシア聖騎士隊”だなんて――」
当人は否定するつもりだったようだが、ネシェラはもはや彼女がそうであること前提で得意げに答えた、
そんな様子に流石の彼女も諦めた様子だった。
「ええ、そりゃあもう。
立ち振る舞いが他のヴァナスティア騎士とはまるで違うもの。
それこそ”聖女とは何か”を体現したような存在――
”アナスタシア聖騎士隊”というぐらいだから”アナスタシア”格を持つ”ヴァナスティアの聖女”によって組織された女性陣で構成されているわけよ。
だからあなたはもしかしてヴァナスティアの聖女様なんじゃないかなって思ってね。」
聖地ヴァナスティアのシンボルと言えば、当然絶対にして唯一無二の神というものが第一に来る。
神の名はこの世界を形作ったとされる”創造神ユリシアン”だ。
だが、それ以上に人々の関心を寄せ集めるような存在がいる、それが”ヴァナスティアの聖女”と呼ばれる巫女である。
神道を極めた彼女らはまさにヴァナスティア神教の教えを極めしものたち、
平たく言えばヴァナスティアの教えの広告塔にもなっているような存在である。
無論、信者からは支持を集めるほどの大いなる存在としても扱われているほどであるため、
それはそれはもう恐れ多い存在である。
しかし、その上で”アナスタシア”という者がおり、彼女は聖女としての格も持ち、
なおかつヴァナスティアの聖騎士としての才をも備えるという武術と神道を両立した存在である。
”アナスタシア聖騎士隊”というのは”アナスタシア”が組織した騎士団であるということだが、
それはあくまでそういう体で通っているだけの話。
実際には聖女としての礼節をわきまえた女性陣で構成された騎士団であり、
どちらかというと対外的にヴァナスティアの広告塔の向きのほうが強い性格をもった組織だということである。
とはいえ、それだけの女性陣が選ばれるというだけあって、人選は割と本気である。
ネシェラはそんな話をライアたちにすると、女騎士が気が付いた。
「あれっ、もしかして――団長のお知り合いの方でしょうか?」
ネシェラはにっこりとしながら答えた。
「ええ、実はそうなの。
しかも団長かぁ……彼女もまた随分と出世したのね。今会えたりする?」
ネシェラたちは彼女に連れられて小さな民家へと案内された。
「ここが私たちの宿舎ですが――」
ネシェラは頷いた。
「ええ、他言は無用よ。
”アナスタシア聖騎士隊”の宿舎なんて他人に知れたらいろいろと面倒だからね。」
そう訊いて女騎士はにっこりとしていた。
「すべてお見通しという感じですね。
ですが――私は武芸のほうはそこまでではないんですよ。
それに、聖女様でもない私が聖女様の代行まで務めさせていただくこともあるなんて……光栄です……」
彼女は遠慮がちだった。
「いいじゃないの、その聖女スマイル、私も好きよ。
これはすぐにファンが集まるってもんね。」
そう言われて彼女はさらに照れていた。
「さてと、彼女はいるかしら?」
そういいつつ、ネシェラは堂々と家の扉を開けると――
「たのもー!」
なにその第一声は。すると――
「ん? そんな変なあいさつをするのは――他にいないわね……」
家の中ではどうやら2人で話し合いをしていたらしく、
片方は落ち着いたような様子だったが、もう片方は――
「何者だ!? 何をしに来た!?」
怒った様子だった。すると――
「御免なさいね、古くからの友人が私に会いに来てくれたみたいなの。
ちょっと変わった子たけど、大目に見てあげてもらえる?」
落ち着いたほうにそう言われると、怒りを収めつつ椅子にゆっくりと座っていた。
すると、落ち着いたほうは立ち上がってネシェラの目の前へとやってきた。
「本当に直接会いに来るなんて流石ね、ネシェラ!」
そう言われてネシェラはにっこりとしていた。
「ええ! 久しぶりね、シュシュラお姉様!」
だが彼女……その印象はどことなくライアや母親のアムレイナをも思わせるような見た目だった、もしかしてプリズム族?