何とか森から出られた。ヌシは結局現れなかった。
だが、出たところは道幅が狭く、結局休める場所を展開するスペースなど見当たらなかった。
そんなこんなで夜になってしまい、結局夜の行軍を余儀なくされていた。
その頃には何とか海岸沿いにまでやってきたが、
辺りは真っ暗のため感動するよりもただただ夜の海は怖いというイメージしかなかった。
「くそっ、サンダー・フールばっかりじゃねえか、面倒だな……」
何人かは武器を取り出して応戦していた。
だが、既にお馴染みの魔物程度になっているそいつらだが、
疲れには勝てることがなかった。
「ぐあっ! しまった!」
リアントスの腕元に魔物の一撃がしっかりとクリーン・ヒット!
「ちょっと! ウソでしょ!? しっかりしなさいよ!」
そこへネシェラがすかさず反撃!
「わっ、悪いな……流石に集中力が続かなくてな――」
リアントスは悪びれた様子で言った。
それにしても、どうなっているんだこいつらは――リアントスは唖然としていた。
「お前ら、疲れないのか?」
ロイドは答えた。
「ああ、エターニス由来の精霊族は基本的に疲れ知らずだ。
いや、疲れるっちゃあ疲れるんだが、体力は割と長く持つ方なんだ。
やっぱり世界の管理者サイドに近しい存在故なんだろうな、だからこそこういう身体なんだそうだ」
そうなのか、リアントスはそう思うとライアが言った。
「確かに、3日ぐらいずっと起きていたことがあったけど、そういうことだったのね――」
なっ!? なんだって!? アレスは耳を疑っていた。
「ちょっと、3日程度で何を驚いてんのよ。
そんなんで私は3か月って言ったらどうする気よ。」
と、ネシェラ……主に人間族の頭は崩壊した。
「3か月……あの時か?」
ロイドは訊くとネシェラは頷いた。
「ええそう、アトローナに武者修行をしに行ったときね。
結局、アトローナに行くまで一睡もせずに行くことになったわね。」
武者修行って……なんで一睡もしなかったんだ、ライアは訊いた。
「その時に考えていたアイデアを切らさないためよ。
でも、そうは言いながら結局別のもっといいアイデアが閃いてそっちを採用したんだけどね。
そのおかげでアトローナでは大成功したってわけよ。」
いろいろと理解が追いつかない。
「でっ、でも……あれはアトローナに行くってことでちょっと興奮気味だったこともあったからね。
今後は二度とないようにしないといけないわね。」
結局休まないのは身体に毒ということらしい。
「ところでアイデアって?」
アレスは訊くとリアントスが答えた。
「”ものづくり”だ、決まってんだろ」
ああそっか、アトローナは究極の職人島……そう言われればおおよそは察しが付くか。
それにネシェラのことだから相場は大体決まっている。
ようやく開けた場所に出たかと思いきや、魔物が大勢いたのでお休みは断念……
だが、こっそりとその場を脱することができたので事なきを得るには得られたのだが、既にその時には朝日が昇っていた。
そして気が付けば昼頃、その間馬車の牽引人員を入れ代わり立ち代わり進むこととなった。
だが、そうなると馬車馬があまり持たなそうだ。馬車は2頭の馬で牽引していた。
「ネシェラ、ロイド、お前らも休んだらどうだ?」
リアントスは言うが、2人は首を振った。この2人は依然として歩き続けたままである。
「この子たちが頑張っているんだから私だって休んでいるわけにはいかないわね。」
「だな。馬ばかり働かせて自分はゆっくり休んでいるってのもなんだか気に入らないからな」
つまりそういうわけである。
「ごめんね、疲れているところ悪いんだけどさ、もう少し頑張ってね――」
ネシェラは優しい眼差しで2頭の馬の頭をなでていた――
「彼女、ああいう顔ができるのか――」
アレスは唖然としていた。
「そうだよ! ネシェラ姉様は優しいんだよ!」
兄貴に対してシュタルがそう言うとアレスは悩んでいた。
「えぇ……あれは優しいと言えるのか……」
アレスはつい最近ランバートが彼女から痛い目にあったことを思い出しながら悩んでいた、お察しします。