話を変え、アムレイナの剣についての話題に。
「プリズム族の女流剣士の剣? 精霊族由来の武器なのかしら?」
ライアは聞いてくるとロイドは答えた。
「そういうのは知らないな。
俺だって見ての通り、使っているのは普通の得物だから、そういう特別なものがあるとしたら――
俺ら一介の精霊族には縁のないものじゃないかな」
一介の精霊族……そうか、世界の管理者というのがいるんだっけ。
「プリズム族も一介の精霊族?」
シュタルは訊くとアムレイナは答えた。
「ええ、私のようなラミュールの里のプリズム族もエターニス由来ですが、
それ以上についてはロイドさんやネシェラちゃんと同じレベルの存在にすぎませんね」
でも――アレスは訊いた。
「この武器を見る限りでは普通の武器って気がしないんだけど――」
それもそのハズ、とてつもない魔法の力を蓄えた青白い色の神秘の宝珠が取り付けられている――これは?
「それ、私がつけたものよ。」
ネシェラはそう得意げに言った……なんだって!?
「みんな宝石とか宝珠とか言うけど、それについているものに関しては正しくは”エンチャント鉱石”っていうもので、
まさに魔法の力を蓄えてなんやかんやするための素材なのよ。
もちろん、見ての通り宝石のように加工することで一種のおしゃれ装備的なものにもできるから、
実用度だけでなくデザイン性にまで加工の幅を広げることができるのよ。
今回、アムレイナお母様のためにいろいろと性能とデザインにもかなりこだわって作ったから、
それはなかなか満足のいくものになったと思うわよ。
その名も”リーガル・セイバー”っていうのよ。」
なんにでも名前を付けたがる。それに対してアムレイナは嬉しそうに言った。
「そうなんですよ♪ なんとも素敵なデザインの剣にしていただいて――
そしてこんなこともできるんですよ♪」
するとアムレイナはその場で祈りを捧げると――
「さあ、暖かな癒しの調べを――<フレア・ホワイト!>」
なんと、アムレイナの身体からその通りの暖かな癒しの調べが――
「さあみなさん♪ この私があなたたち全員を一度に癒して差し上げますわ♪」
すると……なんと、その場で全員がウトウトとし始めると、そのまま幸せに包まれて眠り込んでしまった!
「こっ……これは――さっき罰ゲームと言いながらテストしていたのは、まさかこれだったのか……」
セディルでさえもその場で落ちそうになっていた。
「セディル、あなたも働きすぎですからゆっくりとお休みくださいな――」
そう言われると――セディルはすぐにでも寝落ちしそうになっていた――。
「すごい力ね――まさにプリズム族のなんたるかを示してくれるような癒しの力がこれってわけね――」
と、ライアは唖然としていたが、ふと目をやると――
「あら……ネシェラったら、寝落ちするのがとっても早いわね……」
ネシェラは速攻で落ちていた。だが、そんなことより――
「いや! だからなんであんたそんなにいつもいつもグースカ寝てられるのよ!
たまにこういう時ぐらいしっかりしていなさいよ!」
と、ライアはあの御仁に突っ込んでいた――もちろん、スティアの事である。彼ってば行動がいつも安定しているな。
気を取り直して。ネシェラは説明した。
「フレア・ホワイトといえばまさにプリズム族伝統の癒しの魔法として大体受け継がれているものね。
”フレア・ホワイト”なんてスペルはどうでもいいんだけど、まさに暖かな癒しこそが彼女らの能力そのものってわけよ。
もちろん、こんなのに男が包まれた暁には速攻で彼女に落ちること請け合いね。
それなのに妖かしの香まで有している……異性の心を完全に獲りに行く気満々の身体をしている、文字通りの妖魔の女ってワケよ。」
すっ、すごいな――それは……いいのか恐ろしいのか困惑している男性陣だった。
「でも、わかる気がするー! だって、アムレイナお母様に抱っこされたら私だってすっごく嬉しいもん!
ライアのお母様って本当にすごいんだね!」
シュタルがそう言うとライアとアムレイナはなんだか照れていた。
「もちろん、私の子であるアルクレアやライアにもその素質があることになりますね」
アムレイナはにっこりしながら言うとライアは驚いていた。
「えっ、私にも!?」
いや、そらそうでしょ。
「ライアお姉様ー♪」
ライアはシュタルに襲われながら照れていた。
それからしばらくしたのち、アムレイナは一生懸命に剣を振っていた。
アムレイナの剣は2本あったハズ――もう片方は小剣の”リーガル・ダガー”というらしい。
ロイドよろしく相手によって武器を使い分けるということか。
こちらの剣はもはや装飾品そのものといってもいいようなセンスの代物だった、ネシェラのこだわりと腕の良さがよくわかる逸品である。
そういえば――シュタルは母から剣を預かったことを思い出して取り出した。
「どうせなら私もネシェラお姉様にカスタムしてもらおっかな♪」
そういいつつ、その場にいたネシェラに頼んでいた。
「ふーん、そうなのね。
だけど――ずいぶんと手の込んだ代物ね、一介の剣士に与えるような武器じゃないわよこれは。
お母様も名うての使い手なのかしら?」
それはなんとも無骨で古ぼけた見た目の剣だったが、手にした時点で何かを感じたネシェラ、
そう訊くとシュタルは照れたように言った。
「いやあ――お母さんは違うよ、農家の田舎娘だってさ。
剣なんて結婚する前にちょっとかじったぐらいであとは人並みって言ってたからね――」
そうなのか、ネシェラは納得した。
「ま、ダーク・エルフの事情っていうのもあるからね。
ダーク・エルフのことはあんまり知らないから、いろいろと調べてみるのもいいかもしれないわね。」
そしてカスタムが終わると――
「さあ! できたわよ! 名付けて”ダンシング・ダガー”!
まさに名前の通りの踊れる短剣で、狙った相手をザクザクと切り刻むのよ♪」
剣はピカピカに一新されており、さらに宝玉……エンチャント鉱石によるデザインが何とも光る素敵な剣となっていた。
ネシェラはそれをシュタルに手渡すと、シュタルは早速試し切りを――
「うわあああ! なっ、なんなのこれ!? すっごーい!
剣のほうから剣筋へと導いてくれるみたい! よーし、もういっちょ!」
するとシュタルはとんでもない剣さばきで目の前にある人形を切り刻んだ!
人形は原形ととどめることがなくなっていった――。
「おいおいおい、すごいもの作るなお前――どうなってんだ?」
ロイドはそう言うと、ネシェラは言った。
「うーん、確かに、あの切れ味自身はカスタムしたからこそ出るスペックのそれなんだけど、
それ以外はもともと持っているあの短剣の性能だと思うのよね。
言ってしまえば呪われた剣? そういう類のものなのかもしれないわね――」
そうなのか!? ロイドは驚いていた。
「母親が持っていたそうだな、確か、腕前のほうはからっきしだと――」
ネシェラは悩んでいた。
「からっきしな腕前で扱うにはどう考えても難しい代物ね、
絶対に使い手があの剣に振り回されてもおかしくはないハズ。
これは絶対に何か秘密がありそうよ。」
ネシェラとロイドはシュタルの様子を見て考えていた。