冬になると雪が降り始め、年越しの時期に差し掛かる。
年が明けてから少し経てば、今度はアーカネル騎士選抜の適性試験という大イベントが待っている。
だからそうなる前の年の暮れのうちにランバートもセディルも完全に流星の騎士団に仲間入りを果たし、
その頃においてもこの一団は昨今の魔物対峙において大きな成果を上げていた。
そういったこともあり、既存の騎士団員の中から流星の騎士団への編成を希望する者も集中していたが――
「はいダメ。こいつもダメ。これもダメ、これもダメ――ダメダメね。」
ネシェラ現地執行官の目はとても厳しかった、彼女は流星の騎士団専属の執行官ということでその名を頂いていた。
流星の騎士団はやはりそれだけの活躍をするチームということもあり、現地執行官が付いているのである。
なお、黒曜騎士団などにも現地執行官が付いているため、流星の騎士団だけが特別というわけではない。
「希望者が多いのは嬉しい限りだが――だからと言って誰でも彼でもやってくるのは違うよな――」
ランバートは微妙な面持ちで佇んでいた。
「ところで――誰でも彼でも切っているようだが本当に正しいのか?」
彼はそう訊くとロイドが答えた。
「妹を高く評価していると言われても仕方がないが昔からこういうやつなんでな、だからあとは任せておけばいいんだ。
言ったろ、天才なんだ、だから7つの頃からは大学で勉強をしている。
そんな妹がふるいにかけた上で俺らがあーだこーだ言えばいいだけってわけだ」
7歳で大学!? ランバートは焦っていた。
「確かに、言われてみればなんかおかしいと思ったわね。
以前は16~17歳なのに大学云々って話だったし――年齢的にも飛び級したのかなって思ったんだけど、そうだったのね――」
ライアはそう訊いた、通常は大学へと行くとなると最低でも18歳ぐらいのハズ……まさに神童である。
それについて、ロイドは頷いた。
「ああ。
7歳のネシェラを推薦したのは当時サイスが所属していた研究室の大学教授のエザントだ。
サイスも天才児で10歳の頃にエザントにスカウトされて大学に通うようになっていたが――」
ネシェラ7歳と言えば――
「奇しくもアルクレアたちが失踪した年と同じ年だったってわけなのね――」
セディルが言うとネシェラは言った。
「そう、それでサイスお兄様はエザント先生に頼んで私を研究室に引き込んだのよ。
私の手を借りればサイスお兄様の目的がぐっと近づくかもしれないし、
私としてもアルお姉様の行方が知りたかったから私の願いをかなえることもできるだろうって――そっちが本音だろうけど。
でも、アーカネルで事件が起きているかもしれないのに幼い当時の私をそこに呼び出すことはできなかった、
それでエザント先生に私を託した――ま、これはあくまで私の想像だけど、そんな筋書でしょうね。」
あなたが言うとそうだとしか思えない。
「はい、これ――」
と、ネシェラはだしぬけに書類を渡してきた、ネシェラフィルターに引っかかった候補者である。
「えっ、これ1人だけ?」
アレスは驚いていた。
「ええ、今のところはこの人だけ。ゆっくりと考察して入れるかどうか考えてよ。」
というと、最初のメンバーであるアレス、ロイド、シュタルとライアの4人はその書類の人物を見てなんだかとても嬉しそうだった。
「おいネシェラ、採用決定だ。」
ロイドは言うと、ネシェラは――
「ちょっと、そんな簡単でいいの? 私が見ただけで決めちゃって――」
しかし、シュタルが嬉しそうに言った。
「ううん! 違うんだ、ネシェラお姉様! 私たちね、この人を良く知ってるの!」
そう言われてネシェラは呆気にとられていた。
翌日の事、お城の例の場所にて――そう、あの場所である。
「ふっ……私としたことが、まさかそんな人を選んでいるなんて――因果なものね……。」
ネシェラはなんだか照れていた。
「お前に限ってこんなこと、だいたいいつもの事じゃないか、大したことじゃない」
ロイドはそう言いつつ、その例の場所までネシェラを含めたその5人がやってきた。
「私は外したほうがいい?」
アレスは答えた。
「いや、当時も執行官が一緒だったからね、今回も頼むよ」
サイスお兄様か――ネシェラは考えた。
「んじゃ、今回は私がその役を買って出ることにするわね。」
と言うと、ライアとシュタルはにっこりとしていた。
そして――
「戻ってきたって感じだな――」
その部屋の前へとやってくると、アレスがそう言った。そしてロイドが続ける。
「ああ、俺たちの始まりはまさにこの部屋――これがすべての始まりだ」
シュタル、ライアも続ける。
「ここで私たち4人で話をして、クロノリア行きからメタルマインで戦ったり――」
「そして、ここまでの4年間の苦楽を共にすることになったってわけね――」
そう、この部屋はつまりその部屋である。
ということは――そう、この度流星の騎士団に再配置が決定した人は他でもないあの人だ。
そして、その運命の部屋に入ると、ネシェラはその人の名前を告げた。
「さあ、呼び出しといたよ、あなた方4人がご所望の人物であるルイス=モーティン――この方に間違いないかしら?」
そう、あのルイスのことだった。
「ルイスさん!」
「オッサン!」
「わっ! すっごい久しぶりー!」
「ルイス――」
アレス、ロイド、シュタルとそしてライアはそれぞれそう言った。
「よう! お前たち! ずいぶんと立派になったもんだな! 俺も鼻が高いぞ!」
そう言われて4人は照れていた。
「ところで――本当に俺なんかでいいのか? 俺を流星の騎士団に選んでくれているのか?」
アレス、ロイド、シュタルとライアはそれぞれ言った。
「当然です! ルイスさんは初期メンバーじゃないですか、そろそろ戻ってきてくださいよ――」
「だな、オッサンがあってこその俺たちだった、今でもオッサンの席はずっと空いたままだぞ」
「そうだよ! ルイスさん戻って来なよー!」
「ええ! これからもよろしくお願いするわね!」
と、そんな嬉しそうな様子をネシェラはにっこりと見守っていた。