アーカネリアス・ストーリー

第3章 嵐の前の大荒れ模様

第58節 謎の美女

 そして面接の第1次試験の日がやってきた。
「ありがとうございました!」
 とある受験者が退席すると、面接者のネシェラとアレス、そしてロイドとライアとシュタルが話し合っていた。
「なんか、もう一人のアレスを見ているようだったな――」
「うん、なんかアレスと話しているみたいだった」
 ロイドとシュタルがそう言うとアレスは困惑していた。
「マジメなのはいいんだけど、ちょっとマジメすぎるかな……。 経歴見てよ、なんだかマニュアル人間っぽい印象がねぇ――」
 ネシェラはそう言うとライアはため息をついていた。
「少なくとも、アーカネルに従属するものとしては合格ね。 但し、配属先は騎士でなくて兵士のほうがいいかしら?」
 ロイドとシュタルは頷いた。
「異論なしだな」
「もうちょっと”自分”出してほしいよねぇ……」

 次の受験者は――
「今のはアウトだな。 せいぜい俺ぐらいのが底辺と思ってほしいもんだ」
 と、ロイド……いや、キミの口の悪さも騎士としてはどうかと思うのだが。 とはいえ、場によってはあり得ないほど丁寧なロイド、一応ギリギリセーフとしておこうか。 ちなみにリアントスはもっとヤバイ丁寧さを持っている。
 そもそも何の話をしているかというと、態度の悪さが気になったということである。
「所謂”ハンター崩れ”っていうものね。私としてもあれは断然ナシね。 ロイドのがちょうどいいぐらいよ」
 と、ライアが言う――ロイドの件についてはとりあえず。
「ロイドは行儀がいい方だよねぇ!」
 シュタルは元気よく言った。 しかし、ネシェラは既に不採用の判を押してさっさと流しており、何食わぬ顔をしていた。
「ん? どうしたの? いつまで待たせるのよ? ぼーっとしてないで早く次の人呼んできなさいよ。」
 そう言われて入り口に立っている兵士は焦っていた。
「有無をも言わさずだな――」
 アレスは唖然としていたが、
「いや、むしろ今のは最初からなかったことになっているな」
 ロイドはそう言った、流石は兄貴、わかってらっしゃる。

 予定は10名(ネシェラの中では9名)なのだが急遽もう1人が来ると言われたので4人は再び会場へと戻ってきていた。
「締め切りギリギリの事だったみたいよ。 それに出身地はアルティニア――同郷じゃないの♪」
 ライアはそう言うとネシェラはワクワクしていた。
「それはちょっと楽しみね、どんな人かしら? えっと……女の子みたいね――」
 書類にはそうあった、女の子――嫌な予感がしていたロイドとアレス、また女ばかりでたまるのでは……?
「失礼いたします――」
 そして、その時が来ると――
「……えっ!?」
 そこには何とも綺麗な女性が入ってきたのである。

「ありがとうございました、それではこれで失礼いたします――」
 女性が退席すると4人は話し合っていた。
「ちょっと、キレーな子だったから魅入っててあんまり話聞けてなかったわね――」
 ネシェラは悩んでいた、あんたもそういうカテゴリの女子でしょうよ……。
「うん! すっごく綺麗な子だったね!」
 シュタルは喜んでいた。
「それにしても、あんまり騎士やるって感じもしないのがな――」
 ロイドは悩んでいた。するとライアは――
「えっ、ちょっと! この子なんなの!? 見てよほら! 経歴ほとんど真っ白じゃない!」
 マジかよ、ロイドは悩んでいた。
「せっかくギリギリで来てくれたのはいいけど、それじゃあ流石にダメだな――」
 というが、ネシェラは悩んでいた。
「なんだ? どうしたんだ?」
 ロイドはそう訊いた。
「うん、あの子……ただただキレーな子って感じじゃない気がするのよ、私の”カン”なんだけどね――」
 ネシェラはそう言うとロイドは腕を組んでいた。
「お前のカンはよく当たるからな……。なら、引き留めて確認してみるか?」
 ネシェラは立ち上がった。
「ええ、そのほうがいいわね、今ので最後だし、ちょっと行ってくるわ――」
 ネシェラはそのまま立ち去った。
「えっ、どういうこと?」
 ライアは訊くとロイドは頷いた。
「さっきの女、絶対に何かある――という話だ、それ以上は俺にもわからない――」
「いえ、それもあるけど、私が訊きたいのはネシェラの”カン”のほうよ」
 ロイドは考えながら言った。
「ああ、それなんだよな。とにかく、あいつのカンは昔からよく当たるんだ。 それこそ言ってしまうと――俺はまず外したのを見たことがないな。 リアントスには悪いが、あいつの命中率なんか比較にならないほどの的中率だ。 だからあいつの千里眼に任せておけばほぼ問題がないってわけだな」
 それは最強というより無敵じゃないのか――話を聞いていたアレスとライアとシュタルは絶句していた、 ネシェラについてどこまで驚けばいいんだ。
「そいつはいい質問だがむしろ俺が知りたいところだな」

 アレスたちは書類をまとめてサイスのもとへとやってきた。
「おや、お疲れ様です。ネシェラさんはどうしましたか?」
 ロイドが答えた。
「一次を通過したのは2名、兵士適正者が3名、不採用が5名で、残りの1名はまだネシェラが見てる最中だ。 知っていると思うが、ネシェラのカンは――」
 サイスは頷いた。
「ということは通過でいいということですね。 分かりました、それなら彼女については最終試験までお任せします。 本日は大変お疲れさまでした!」
 ネシェラのカンの信頼度は高い件について。