そして、大通りのとあるオープンカフェへとやってきたネシェラ。
「やっ! お待たせ♪」
いたのはシュタルとクレアだった。
「あっ! ネシェラ! いっつも美人が際立っているねぇ!」
だが、ネシェラは遠慮がちに言った。
「そんなことないわよ、美女ライアやシュタルの可愛さには流石に負けるわよ。
そもそも私ゃそんなキャラじゃあないからね。」
「そんなキャラじゃなくたってそういう女子じゃん!」
「そう?」
「しかも大人っぽいしさ! いいなぁー♪ ネシェラお姉様♪」
「ねぇー♪ ネシェラお姉様ってとっても素敵な方ですよねぇー♪」
シュタルとクレアはもはやネシェラを崇拝しているレベルだった。
「ったく……そんなこと言ったってなにも出ないわよ。」
ネシェラは呆れ気味に言った。
そして、カフェにライアがやってくると、ネシェラが訊いた。
「気持ちの整理はついた?」
彼女らはとあることをしようと計画していたのだった、それは――
「ええ――。
すべてはサイスさんに訊けばわかるのかもしれないのよね……。
お姉様が生きているのか既に亡くなっているのか――たとえ亡くなっているというのなら、
それはそれで受け止める覚悟はできたわ、だから――」
ネシェラはにっこりとしながら頷いた。
「そっか――ライアは強いんだね――」
だが、ライアは――
「いいえ、すべてはネシェラとロイドのおかげ……
あなたたちがいたからこそ希望が見出せたの、だから本当にありがとう――」
そう言われてネシェラは照れていた。
「じゃっ、じゃあ……早速行ける?」
ネシェラたちは早速真実に向かって歩き出した。
流石はネシェラ、女勇者の名は伊達ではないな、いきなり女性陣のリーダーとして成立している件。
「何処に行くの?」
ライアは訊くとネシェラは答えた。
「セディルの家よ、サイス兄様をそこに呼び出してるからね。」
セディル将軍の? ライアとシュタルは不思議そうにしていた。
「彼女とはいろいろとあってね、随分前の格闘技の大会でやり合った仲なのよ。
大会には私が優勝したんだけど、その副賞として彼女とのエキジビジョン・マッチに挑むことになったのよ。
もちろん、そのエキジビジョンで彼女を破ったんだけど、それ以来の知り合いなのよ。」
そっ、そうなんだ――さらっとやばいことを口にするネシェラ……
でも、ネシェラだったらさほど不思議ではない気も――みんなそう思っていた。ネシェラは続けた。
「とは言ってもあくまで他人――一応同族同士ではあるんだけど、
この際だから彼女も引き込んでしまうのもありかなって思ってさ――ダメだった?」
しかし、ライアは言った。
「いえ、そこはネシェラの千里眼を信じる事にしているから構わないわ、
それに、それ以上は後はサイスさん次第だと思うしさ――」
それもそうだ、サイスがどう反応するかである。
セディル将軍の豪邸へとやってきた一行。
家に入ると招いてくれたのはまさかのセディル本人で、
その立ち姿はなんとも美しい落ち着いた雰囲気のライト・エルフの女性という感じだった。
それに貴族っぽく余計に着飾らない辺りも精霊族という感じだった。
「あら! セディルってば、プライベートではすごいエレガントな装いなのね!」
ネシェラはそう言うとセディルは嬉しそうに言った。
「それを言ったらネシェラだってそうでしょう?
仕事でも普段でもそのような服装をしているのですね?」
ネシェラは嬉しそうに答えた。
「まあね……、こういう格好をしていながら無茶苦茶強い女を体現することこそが私自身だってアルお姉様の教えなのよ。」
お姉様の影響――ライアは反応した。
「そう――アルクレアの……」
セディルは暗い表情をしていた。
そして――
「さて、サイスはこの中に待たせてあります。
ここでならゆっくりとお話ができることでしょう。
ほかの者は決して入れることはありません。
どうぞ、ゆっくりとお話しくださいね」
と、優しく言うセディルに対してネシェラが言った。
「セディル、もしよかったら一緒に立ち会わない?」
えっ、いいのだろうか、セディルは訊いた。
「内緒の話がしたい、そう言うことではありませんでしたか?」
「そうなんだけど、この際だからセディルにも訊いてもらったほうがいいかなと思って――」
セディルはネシェラの目を見て、考えていた。
「つまり、内緒の話というのはどうやら相当大きな話だということですね。
そのうえで私を信用していただけるというのなら立ち会うことといたしましょう」
そして――いよいよサイスの前へとご対面。
「おや、みなさんおそろいで。
本日は御覧の通り、セディルさんにお呼ばれしたんですよ。
どうかされたのですか?」
サイスはいつも通りにふるまっていた。
ネシェラはセディルに頼み、サイスを自宅に呼び出したのである。
もちろん、サイスはセディルに何故呼び出されたのかはわかっていない、
ただただ訊きたいことがあるということしか聞いていなかったのだが――
「サイスお兄様、実はセディルにサイスお兄様を呼び出すように頼んだのは私なのよ。」
えっ、どうして? サイスは訊いた。すると、ライアは意を決して訊いた。
「サイスさん! お姉様は生きているって本当なの!?」
そう訊かれたサイスとセディルはびっくりしていた。
「アルクレアが……亡くなったのではないのですか!?」
セディルが訊くとそれについてはネシェラが説明し――
「なるほど、確かに……サイス、あなたがたは私らに気が付かれないようにこっそりと会っているようでしたね。
もちろん私にはお見通しです、ですが――愛し合う男女2人を咎めるなんてこと、
私にそんな野暮なマネはできませんから見なかったことにしましたね――」
そう言われてセディルは考えた、セディルもきちんと把握していることだった。
執行官と騎士との恋――業務に影響を与えるため、御法度とされている。
無論、家族同士親戚同士というのもその類なのだが、
職業柄、家族操業になりやすい都合、止む無しと判断されているらしい。
が、流石に付き合っているという話になると少々話が変わってくるので、これだけは認められていない。
そんな禁忌を冒してまで2人は恋仲となっているのである。
「サイス、今の話――アルクレアが生きているというのは本当なのですか!?」
さらにセディルが念を押すように訊いてきた。