アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第49節 勇者ネシェラの挑戦

 ネシェラはその場にいた女性陣と共に会場へと向かっていた、 ライア、シュタル、クレアの3名である。
「どうしてネシェラが騎士選抜に? 執行官見習いって訊いたけど――」
 ライアは訊くとネシェラは答えた。
「むしろ、現場の指揮を直接担当する側として採用される見込みなのよ。 でも、現場ってことになると直接戦闘も視野に入るわけよ――”現地執行官”って役職ね。 言ってもあくまで見習いだから、執行官としての役についてはそこまで期待される程じゃあないんだけどさ。 でもこの状況下だから騎士のほうの人手が少しでもほしいんでしょうね、エターニスの血となればなおのことね。 それで一応私がどこまで戦えるのか、今回の臨時選抜に出てみて実力の程を確かめてみたいっていうことらしいわね。」
 そうなのか、ライアは納得した。するとネシェラは言った。
「ところでライアお姉様――」
 しかしライアは――
「ライア、でいいわよ、お姉様なんて……ネシェラのほうがお姉さん風じゃない……」
 というと、シュタルも嬉しそうに言った。
「私もシュタルでいいよ! むしろネシェラのほうがお姉さんぽいし!」
 女性にしてはとにかく長身なのが際立つネシェラである。
「あら! でも確かにシュタルってばなんだか可愛い妹って感じよね!」
 するとシュタルはネシェラの豊満なバストの中へと思いっきり甘えてきた。
「わぁい♪ お姉ちゃん♪」
 すると、ネシェラはシュタルの頭をなでながら得意げに言った。
「まったく、しょうがない子ねぇ。」
 お互いに嬉しそうだった。
「わあ! シュタルってば羨ましいです!」
 クレアは羨ましそうにしているとネシェラは――
「なぁに? クレアも来たいの?」
 もはやどっちが年上なんだと言わんばかり、2人はネシェラに思いっきり甘えていた。
「ふふっ、2人とも、可愛いわね!」
 ネシェラは嬉しそうだった。
「なるほど、女性人気は好調の勇者タイプの女の子ってわけね、私もちょっと甘えてみたいかも」
 冷静に考察するライアだったが、彼女もまたネシェラの豊満なバストの中に誘われ――
「まったくもう! 用があるって言ったでしょうよ! 困った子たちねぇ!」
 と言いながらも全く焦っている様子のないネシェラだった。

 いよいよ会場入りしたネシェラ、控室には女性陣に加えてロイドがいた。
「ほらよ、ネシェラ――」
 ロイドは木製の長い物干し竿を手渡した。
「あらありがとう、戦術担当様♪」
 ロイドは頭を掻いていた。
「今回は魔法を使わないで戦うんだぞ」
 ネシェラは頷いた。
「もちろん今回は一切使う気はないわね、私の基礎能力だけで充分よ。」
 マジか……女性陣3人は唖然としていた。
「ネシェラなら楽勝のはずだ、今日の選抜の他の顔ぶれを見る限りはな――」
 と言いつつ、ロイドは去ろうとしていた。
「ギャラリーから見ててやるよ、決着がついている戦いほどつまらないものはないけどな」
 すると、ネシェラは力強く「おう! 私に任せとけ!」と言った。
「見るからにただの棒きれ?」
 シュタルが訊くとネシェラが答えた。
「試験用の武器として認められそうなものが手持ちにないから、 お兄様に頼んでティンダロス邸の物干し竿を拝借してきてもらっただけよ。」
 うそでしょ……本当にそんなもので戦うつもり!?
「一応、支給品があるんだけど――」
「みんなが使わない武器だからイイんじゃない♪」
 どういうことだ。わからんでもないが。

 そして試験開始――実力を確かめてみたいということで筆記試験の類とは関係のない状態の彼女、早速試合に臨んでいた。 だが、流石に相当数のギャラリーの数にアレスたちは唖然としていた。
 選抜試験は4年に一度行われているのだが、 万が一のことがあっても4年間は騎士の補充が利かないため、都度開催の臨時選抜を設けて拡充を行っているのである。 但し、そういう試験に臨む者はだいたい実力者であることも多く、ネシェラとしては劣勢を敷かれているわけなのだが――
「しかしあの女は違う――俺の妹だからって心配なのはわかるが――あの女の戦い方をしっかりと見とくんだな」
 と、ロイドはアレスたちに話していた。
「俺は一切心配してないけどな。 むしろあの女に”挑戦”するやつに同情することしかできねえよ」
 リアントスはつまらなそうに言った。 そして一緒に見ているランバートは悩んでいた。
「妹のことを高く評価しているのは結構なことだが、 だからと言ってそれでも圧倒的な実力差があるんだぞ、例えば初戦の相手は彼女よりもハンターランクが上だ。 彼女、確かゴールド7段だっただろう? 相手はグレート3段だったはずだ」
 まさかの階級が2つも上の相手……あからさまに格上である。だが――
「あいつは腕っぷしや戦いの能力だけで強さを保っているんじゃない。 いいから見てろって、あんたにも世界の広さというものを教えてやるからな――」
 ロイドは何それとなく言ったがアレスは悩んでいた。
「魔法は使用しないでやるって言ってたよな、本当にどうやってそんな格上の相手を……?」