アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第44節 恐るべき防御力を備えた女

 時空都市クロノリア――辺りは魔力の層に覆われている影響で何とも暗々としていた。 街はなんとも整列した建物が立ち並んでいる街並みだが、行きかう人の数は少なく、 住民たちは外からやってきた6人の存在を見てなんだか驚いているようだった。
 さて、どうしたもんだか――町の入り口でどうしようかと悩んでいると、 そこに1人の女性がやってきた。 女性は白いローブに身を包んでいる、やはり精霊族っぽいような印象の人だった。
「暴走したザラマンデルを斃したっていうのはみなさんのことですか?」
 暴走したザラマンデル? 6人は悩んでいた。
「よくわからないけど、確かにザラマンデルを斃したのは俺たちです――」
 アレスはそう言うと、女性はにっこりとしながら6人を促した。
「やっぱりそうなんですね! それではどうぞこちらへ!  あっ、馬車は入口に置いといて大丈夫です!」
 まさか、歓迎されてる? 6人は悩みつつも女性の案内に従うことにした、だが――
「うわぁ!」
 なんと、その女性は急にその場で転んだ!
「えっ!?」
「おいおい、マジかよ――」
「だっ、大丈夫……?」
「ちょっ、ちょっと! 今、顔から行ったけど!」
「なっ!? 何が起きたんだ!?」
「は!? 転んだのか!?」
 それぞれがそれぞれ言うと、女性は起き上がりつつ、顔を押さえて泣いていた。
「うえーん! 痛いよぉー!」
 これは参ったな――6人は悩んでいると――
「痛い、痛いよぉ――っと! はぁー、スッキリしたぁー!」
 女性はどういうわけかにっこりとした顔で嬉しそうに言った、顔には傷一つとしてなかった。
「切り替えはやっ!」
 6人は声をそろえて驚いていた。
「どういうこと……? あれも魔法の力だっていうの……?」
「わ……わからん……」
 ライアとロイドは悩んでいた。

 彼女についていくと、奥には大きな家があった。
「つまりは長の家ってところか?」
 ロイドは訊くと女性は楽しそうに答えた。
「そうでーす! 長ー! ただいま戻りましたー!」
 彼女はそう言いつつ家の中へと入ると――
「うわぁ!」
 なんと、その女性は敷居に足を引っかけて再び転んだ!  しかもまたしても顔から地面にダイブ!
「うえーん! 痛いよぉー!」
 えっ、ちょっと、今のはどう考えても痛いよ――本当に大丈夫?
「――っと! はぁー、痛かったぁー!」
 女性はまたしてもにっこりとした顔で嬉しそうに言った、顔には傷一つとしてなかった。
「どっ、どうなっているのこの子――」
 シュタルは悩んでいた。
「私、そそっかしいんです――昨日も思いっきり転んで顔をぶつけましたし、 一昨日もその前の日もさらに前の日も――」
 って! どれだけ顔から地面に激突させてんだよ! と言うと――
「えっ!? ええっと――」
 女性は考え、そしてにっこりとした笑顔で答えた。
「よく考えたら毎日ですね!」
 6人は唖然としていた――いやいやいや、毎日だったら考えんでもすぐにわかるだろ……
「わかった、謎が解けた。 どうやら魔法の力じゃなくって、そもそも顔面防御力が高い体質らしい、 アレスの防御力以上のな――」
 リアントスはそう言った、そんなまさか――だが、
「あっ、それ、よく言われます! だから本当にそうなのかもしれません!」
 そうなんかーい!

 ということで今度は町の長とのご対面。 これまで、多くの者を門前払いと称しているかどうかはともかく、 クロノリアの侵入すら許すことなかった町の責任者―― いや、魔法の力を管理している存在そのものと言っても過言ではないかもしれないような、 世界全体のパワーバランスを司る者――それがどのような人なのだろうか――
「この部屋でお待ちくださいね!」
 女性は6人をソファへと促すと、部屋を出ていこうとしていた、だが――
「うわぁっ!」
 えっ、また!? またしても躓いて転んで――
「っと! 危ない危ない――」
 転びそうになる前に踏みとどまった! 6人は安心していた。
「それでは、長を呼んできますね!」
 と、彼女はにっこりとしながらそう言いつつ、廊下のほうへと振り向くと――
「ふぎゃあ!」
 せっかく安心したのに! 今度は廊下の壁に顔面を強打していた――
「うえーん! 痛いよぉー! うわぁーん!」
 6人は悩んでいた。そして当然――
「痛いなーもー! こんな短期間に3回も顔強打するやついるー!?」
 それはこっちのセリフである、自覚はしているようだ。 しかし彼女はそう言いつつも、何事もなかったかのようにケロっとしていた。
 するとその時――
「やれやれ、お客様の前でも治らないんだね、それ――」
 と、どうやら長らしき人物の声がした。その声にロイドは即反応した。
「なっ!? うぅっ……急に寒気が――」
 えっ、どうしたの? 大丈夫!? 無論、真っ先に心配したのはライアだった。