アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第42節 覚醒

 ライアの目の前にはザラマンデルが立ちはだかっていた。
「何よ、最後の1人だからって正面から堂々と破ってやろうというワケ?」
 ライアは大槍を取り出しながら言った。
「ったく、どうすればいいのよ、こんな相手――」
 と、ライアは考えながら言うと――
「えっと、確か……こうすればいいのかしら?」
 その手には氷魔法が、そしておもむろに槍へとその力を付与すると――
「よし、できた! 氷魔法剣よ! さあ、どこからでもかかって来なさいな!」
 ライアの挑戦が始まった。

 ライアは例によってロイドのごとく攻撃を繰り出していた。彼に触発されたのだろうか。
「はぁっ! この! さっさと逝きなさい!」
 なんとか押し返しているも、それがなかなか決定打に至らない。
「はぁっ、はぁっ……全然堪えないわね――」
 ザラマンデルの反撃!
「いやぁっ!」
 ライアは弾き飛ばされた!
「もう! 頭に来るわね!」
 ライアは何とか立ち上がった、だが、彼女はもはやボロボロの状態である。
「くっ……手が――力が入らない……」
 すると、目の前にはザラマンデルが――
「私じゃあムリなのかしら……?」
 ライアは覚悟を決めたかのように下を向いて佇んでいた。 すると――足元にはアレスが――
「アレス……こんなところに……?」
 ザラマンデルは爪を大きく振りかぶった!
「もう……終わりね……お姉様……」
 そして、ザラマンデルはその爪を一気にライアへと叩き落した! が……
「こんなところでは終われない! 終われないのよ!」
 もはや最後の抵抗、彼女はその場に置いてあったアレスの盾を持ち上げると、敵の攻撃を思いっきり弾き飛ばしていた!  しかもなんと、その盾からは絶大なパワーが発揮されており、ライアは驚いた。
「えっ!? 今のは何!? なんだっていうの!?」
 ライアはびっくりして盾をその場に落としてしまった。 ザラマンデルは慌てて距離を取り、そして再び――
「また炎!? もう! なんでわけがわからない状態でくるのよ!」
 ライアは再びアレスの盾を取り出すと、正面に構えて攻撃に備えた!
「さっきと同じことができればきっと!」
 ライアは祈りを込めていた、そしたらなんと――
「本当に……うまくいった――」
 なんと、ザラマンデルの炎攻撃を思いっきり弾き返してしまった!  そして、その炎はザラマンデルめがけてクリーン・ヒット! ザラマンデルは勢いよく吹き飛んだ!
「なっ!? こっ、これは……!?」
 なんだかわからないが、自分の身体から力が溢れてくるようだった。 今のは盾のせいではない、盾はあくまで媒介、自分の力が盾に加わって相手に攻撃を弾き返したようだ、彼女はそう理解していた。
「この力はもしかして!」
 ライアは急いでロイドのもとへと駆け寄ると――
「私が癒しの精霊だというのなら彼を助けて見せなさい! <ヒール・ウォータ!>」
 なんと、ライアは回復魔法を唱えた!
「うっ……うぅっ……なんだ、どうしたんだ……!?」
 なんと、ロイドは気が付いた!
「なっ!? まさか、本当に回復魔法か!?」
 すると、ライアは嬉しそうにロイドに抱き着いた――
「良かった、本当に無事で良かった――」
 その状態にロイドは非常に焦っていた。
「なっ、何でもいいが、どうして急に力に目覚めたんだ?」
 ライアは我に返り、改まって話をし始めた。
「それがわからないのよ、急になんだかこんなことができるようになって――」
 ロイドは気が付いた。
「いや、待てよ、この空間は――」
 ロイドは立ち上がると、辺りを見渡していた。
「いつの間にか魔力の層が濃くなっているな、もしかしたらこの魔力の層を使って自分の力として利用できているのかもしれないな――」
 そんなことが……? ライアは訊くとロイドはさらに続けた。
「魔法を使う際の源である”マナ”っていうのは何処にでもあるものなんだ。 それを”エーテル”に変換することで魔法として行使することができる、俺はそう教えられた。 だが、ここには魔力の層の構成要素である”エーテル”がそこら中にある、だから魔法としてそのまま使用することができるわけだ」
 そうなのか、ライアは考えた。するとロイドは背後の気配に気が付いた、吹き飛んだだけでやられていないことを忘れてはならない。
「ちっ、しぶとい野郎だな! ライア、みんなを叩き起こしてもらってもいいか!?」

 ロイドの次なる作戦にみんなは驚愕していた。
「嘘だろ!? 本当にそんなことができるってのか!?」
 リアントスは驚いていた、無理もなかった。
「もう、こういうのはできるものはできると思い込んでやってもらうしかない。 つまり、すべてはイメージだ、それだけで対処してほしい。 俺も最初はそれでやってきたわけだからそれしかない!」
 そう言われても――アレスもスティアも困惑していた。
「でも、人間族でも使えるものなのか?」
「いきなりできなかったことをやれって言われたってなあ……」
 それに対してリアントスが言った。
「使えるも何も、するしかないんだろ?  それこそ大昔は人間族だって使えていたって言うぐらいだし、 そもそも戦術強化担当が言うんだからやるしかないんだろ?」
 シュタルは何とも前向きだった。
「それでできるって言うんなら私はいくらでもやるよー!  ライアができたんだもん、私だってライアに続くぞー!」
 まさか、彼らがやろうとしているのは――