アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第40節 一難去ってまた一難

 グリフォン相手になすすべもなく、ただただ悪戦苦闘している6人。
「あのホールド・ブレイクを喰らうとひとたまりもないな、どうするかな――」
 するとその時――
「<フレイム・ショット!> さあ、焼き鳥になりなさい!」
 ライアが炎魔法を次々と発射!
「お前の彼女……いや、あの女、また違う属性の魔法を使い始めたぞ。 いきなりどうなっているんだ?」
 リアントスはそう言うとロイドは言った。
「一度使い始めるといろいろと使ってみたくなるもんだろ、そう言うことじゃないのか? だが――」
 炎はどうやら効果は抜群のようだ!
「おい、火は滅茶苦茶利いているようだぞ、あのまま押し込めば勝てるんじゃないのか?」
 確かに、筋骨隆々と言えど鳥は鳥なので毛はしっかりと生えている、あれは燃えやすそうだ。
「弱点ってわけか、よし、こうなったら……」
 すると、ロイドは魔法を組もうとしていたが――
「お前、炎魔法の適性はなかったんじゃないか?」
 リアントスは言うとロイドは得意げに言った。
「いいから、俺に任せておけ――」
 すると、ロイドは剣に炎をまとわせ――
「何っ!? まさか、”魔法剣”ってやつか!?」
「ああ。これなら別に魔法を直接ぶつける必要はねえ、適正云々の話も帳消しだ」
 そのままロイドはグリフォンに突進した! それに気が付いたライアは必死に炎魔法を浴びせ続けて注意を向けていた!
「ナイスだライア! もらったぜ!」
 ロイドはそのままグリフォンの背後から勢いよくぶった切った! だが――
「グギャア!」
「なにっ!?」
 グリフォンは尻尾でロイドを勢いよく振り払った!
「うわっ!」
 ロイドは転倒!
「ロイド! マズイ! 早くよけろ!」
 だが、そこへグリフォンが――
「このっ! こっちを向きなさい!」
 ライアはなおも必死になって炎魔法を乱射! だが――
「ロイドぉー!!」
 グリフォンのホールド・ブレイク! ロイドの身を猛禽の爪でがっしりと抱え込むと――
「ギャアアア!」
 と、グリフォンはロイドからとっさに逃げていた。
「……えっ?」
 シュタルが慌てて駆け寄ると、ロイドの上には無数の氷の針山が突きたたっていた、ロイドが慌てて発動したスパイク・アーマーのようだ。
「危ねえ、もう少しでやられるところだった……」
 その様に全員ほっとしていた。
「で、グリフォンは?」
 リアントスは振り向くと、グリフォンは一目散に逃げだしていた……
「突然のことでビビッて逃げ出したようだな――それならそれに越したことはないか――」
 ロイドはため息をつきながら言うとさらに続けた。
「できればああいう魔物は魔法が普通に使えるメンバーで相手をしたいもんだな」
 確かに、それは異論なし。属性の弱点を突いて戦えるのならそのほうが楽に決まっている。
「俺も魔法剣みたいなのを使いてぇな!」
 スティアは少々羨ましそうに言うと、さらに続けた。
「それより、お前のさっきの一撃、しっかりと刺さったみたいだがどうしたんだ?」
 ロイドは首を振った。
「いや、毛がフサフサだから見た目上は確かにしっかりと命中しているようだが、 実際には急所がしっかりと外れちまっている、早い話、僅かによけられてしまったようだ。 ったく、面倒なやつだな――」
 伝説の魔物の名は伊達ではないということか。

 さらに先に進んだ一行。
「見ろよ、だいぶ上に来たもんだな――」
 リアントスは山道から下のほうを見下ろすと、確かにずいぶんと高いほうまでやってきたことを思わせるような光景だった。 だが、魔力の層で覆われている中であるがゆえに視認性はあまりよくなかった。
「そろそろ5合目って感じだろうか、ということはつまり――」
 アレスが言うとシュタルが頷いた。
「もうじきクロノリアに着くってことだね!」
 そういえばクロノリアはそのあたりにある町だったか。するとロイドは――
「いや、どうやらついたようだぞ――」
 と言った、山道は途中で消えており、どうやら山の中のほうへと誘う道が広がっているようだった。 しかもその道には山門がいくつか設置されており、如何にも何かあると思わせるような装いをしていた。
「こんな山の上に広場があるとは――」
 山門をくぐって行くとそこには広場があり、その真ん中に何やら石の像のようなものが置いてあった。
「これはなんだ?」
 リアントスは訊くとロイドは考えていた。
「こいつは太古に存在していた”ザラマンデル”っていう竜の魔物らしい。 よくはわからないが、古の時代に存在していた”兇獣”の一族らしい。 とんでもない時代だったみたいだな――」
 確かに……ドラゴンとかキラー・スネークの話だけでもお腹いっぱいなのに。
 そしてさらに先に進もうとするも、ロイドは異変に気が付いた。
「ん? どういうことだ?」
 どうしたんだ、アレスは訊くとロイドは指をさしていた。
「あそこが町の入り口? でも、それにしては妙ね、あんな魔力の層があったら中に入れないじゃない――」
 そう、ライアの言うように入り口が塞がっているのである。
「おいおいおい、まさかここまで来て門前払いとかってないだろうな……」
 スティアは頭を抱えながら言うと、リアントスは――
「いや、どうやらそう言うことじゃあなさそうだな。 どうやらここにきて、最終試練とやらが立ちふさがっていると思ったほうがいいかもしれないな――」
 えっ、どういうことだ!? というと、ロイドも気が付いた……
「おい、あの像――」
 えっ、像がどうしたって? アレスもすぐさま気が付いた、先ほどの石像から礫がぼろぼろと落ちていたのである――
「嘘でしょ、まさか――」
「ええー!? もういいよー、先に町に入れてくれればいいじゃん――」
「まったくだぜ、こっちは山登ってきてクタクタだぜ……」
 ライア、シュタル、スティアも唖然としていた。
「ったく、グリフォンをやっと退けたかと思えば今度はザラマンデルかよ!」
 ロイドは剣を構えると、他の5人もそれぞれ構えていた。 石像は石化が解けると、鈍く光る緑のうろこが表に出て、その全体像があらわとなった――。 それこそ先ほどのグリフォンよりもさらに一回り大きく、竜というよりは四つん這いとまでは言わないまでも、 四足で構えているなんとも野蛮な巨人というイメージである。
「これは斃すしかなさそうだな――やれやれ、クロノリアの連中っていうのは……」
 リアントスは呆れていた。
「くっ、俺たちでこんな魔物に勝てるとでもいうのか!?」
 アレスは盾を持って構えていた。