アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第39節 伝説に名を遺す怪鳥

 さらに魔物の群れをかいくぐって行くと、次第に魔物の数も少なくなってきた。
「上に行くほど魔力も濃くなってくるようだな、大丈夫か?」
 リアントスは心配していると、アレスは答えた。
「ああ、大丈夫だ。良くはわからないけど慣れたのかな?」
「うん、私もなんだか平気になって来ちゃった」
 シュタルもそう言うが、スティアは――
「……大丈夫?」
 ライアは心配そうに訊くと、彼は――
「おっ、おう……大丈夫だぜ、このぐらいどうってこと――」
 少々辛そうだった。彼はまったく魔法に耐性がなさそうだ。
「こいつは何とかしてやりてぇが流石に無理だな。 いいからお前、荷台で少し休んでろ――」
 と、ロイドは言うとスティアは――
「いや、もう少しなら大丈夫だ――この程度――」
 我慢するなよ……何人かは呆れていた、5人が平気なのに自分だけ1人……恐らく悔しいのだろう。 するとその時――
「ちっ、なんか来やがったな――」
 と、魔物の登場である、リアントスはボウガンを取り出した――すると、
「なんだよ、鳥の魔物じゃねえか、だったらどうってことはない――さっさと片付けるぞ」
 と、得意げに構えていた。だが――
「何っ!? あいつはまさか!」
 ロイドは驚いていた。
「喰らえ!」
 リアントスは構わずボウガンを放った! だが――
「グギャア!」
 矢は刺さったにも関わらず、すぐさま地面に転がってしまっていた――
「なっ!? なんだあの鳥は!?」
 すると鳥の魔物は風を巻き起こし、6人を一度に吹き飛ばした!
「うわぁっ!」
 リアントスは悔しそうにしていた。
「ちっ、刺さりが甘かったか――次こそは!」
 だがしかし、彼の前にロイドが立ちはだかって静止した。
「待った! あいつは遠隔耐性持ちだ! 考えもなしに打っても通じるような相手じゃない!  だから気を付けるんだ――」
 なんだって!? リアントスは驚いていた。
「鳥のくせに……効かねえってか!? そんなバカな!? なんなんだあの魔物は一体――」
 ロイドは頷いた。
「ああ、あいつは……アーカネルの人間だったら誰でも知っている伝説の魔物だ。 そう、アレス――お前の持っている盾にもそいつのレリーフが刻まれているだろ?」
 えっ!? アレスは訊き返した。
「えっ、でも、それって言うのは、アーカネルの国章ということになるけど、もしかしてそれの事か?」
 そう言われてリアントスは驚いていた。
「おい、まさか、あの魔物ってつまり――」
 ロイドは頷いた。
「そうだ、あいつこそが伝説の魔鳥”グリフォン”ってやつだ――」

 アーカネルという国が出来上がる前の暗黒時代、今よりももっと魔物が多く存在していた。 当時は魔法も当たり前に使われているような時代であり、精霊も人間も魔族もなく、魔物との大きな戦が繰り広げられていた。 中でも今のアーカネルのある地方においてはとある君主の治める国があり、その地方の魔物を斃すためにと各地からつわものたちを集めていた。
 だが――その中でもとてつもない力を持っていた魔物がいた、それこそがグリフォン…… しかし、死闘の末にその魔物を斃すと、その魔物を斃した勇士たちを讃えるため、 そしてグリフォンを斃すために集まった勇士たちの絆の証として、その鳥を模したレリーフを国章とする新たな国が出来上がった―― これがアーカネルの始まりである。
「マジかよ……クロノリアの話に乗っかったら、まさか伝説の魔物とご対面できるとは思ってもみなかったな――」
 リアントスは剣の柄を握りしめながら警戒していた。
「それで……やっぱり強いのか?」
 アレスは恐る恐る訊いた。
「俺も初めて対面するから詳しくはわかんねえんだが―― 言っても伝説の名をかたるほどのモンスターだ、相当だと思っていいだろうな――」
 見るからに筋骨隆々でガタイも大きめの4足歩行の鳥のモンスター、 翼は退化しているのだろうか、空こそ飛べそうだが滞空時間はそこまでという感じでもなさそうな大きな鳥はこちらへと迫ってきていた。
「とりあえず、展開するしかないな!」
 というと、各人はバラバラになって構えていた。
「あっ、しまった! 魔法バリア!」
 ライアは焦っていた。
「いや、これだけのモンスターだとそれが有効かどうかさえも怪しいところだな。 ライアの手も心配だし、様子を見ながら戦うぞ。最悪、このまま逃げるのも――」
 ところが――アレスはグリフォンに追われていた!
「くそっ! なんだこいつ! しつこいな!」
 その速さは例のキマイラとは比べ物にならないほどだった……。
「アレス! 受けろ! お前の足じゃ無理だ!」
 そう言われてアレスは正面を向きつつ、悔しそうに盾を構えた、 奇しくもその盾に刻まれているレリーフと同じ魔物が相手とは――
「ぐわっ! 力が強いなこいつ……」
 グリフォンはあの猛禽の爪を使ってアレスに襲い掛かった!
「くそっ!」
 アレスはそのまま盾を捨てて逃れていた、盾はがっつりとグリフォンに抑え込まれてしまったのである。
「くっ……盾が……」
 そしてそのままなんと! グリフォンは盾を真っ二つに!
「ウソだろ!? 鉄の盾だぞ!?」
 6人はその光景を見て唖然としていた。
「何が幸いするかわからんもんだな、早速ストックが役に立つとは――」
 ロイドはそう言うと、アレスは慌ててそのまま馬車へと取りに行った。
「用意周到だな、ストックを持っているとは」
 リアントスは言うとシュタルが言った。
「私も前に鉄の剣がイカレたことあるからね――最近の魔物は本当に強いや……」
 どうやら経験から来た反省らしい。