さらに進むと、集中的に魔力の層に覆われた場所へとやってきた。
「おっ、ちょうどいい休憩場所があるじゃないか――」
と言いつつ、ロイドはその場所へと近づいていた。
「休憩場所? 山道の途中点にしか見えないけどな――」
リアントスは言うとライアが言った。
「つまり、さっきの魔力の層の現象があそこでも起きているってわけね。
魔物すらも入れないってこと?」
ロイドは頷いた。
「まあ、そう言うことだな。
言ったように、こんな狭いスペースだと魔物も入るのも遠慮しちまうだろう、だから休憩場所として使えるってわけだ。
ちょうど馬車も入れるスペースだから一晩明かしてしまうのもありだな――」
マジかよ!? リアントスは耳を疑っていた。
「こんなところで!? ってか、本当に安全なのか!?」
ロイドは言った。
「こんな魔力がバリアを張っているかのように形成しているなんて言うのは普通ではありえないことだ、
当然、”フィールド”そのものも同じだけどな。だからつまり――」
ライアが答えた。
「つまり、クロノリアの人たちがなんらかの目的で休憩場所として作ったということかしら?」
ロイドは考えながら言った。
「ライアって的を射た発言するよな――」
そう言われてライアは少々得意げだった。
「まあ――女ってのは得てしてそういう生き物だろ、お前の妹がまさにそれを体現しているじゃないか、
しかもこの得意げな態度もまさしくそのままって感じだしな」
リアントスはそう言うとライアは嬉しそうに言った。
「あら! ネシェラもそうなのね! 会える日がますます楽しみね!」
それに対してロイドとリアントスはお互いに顔を見合わせつつ、悩んでいた。
あまりの濃密な魔力ゆえに入るのも躊躇われるような状態だが、
そこでロイドは適当に魔法をぶつけ、一時的に魔力の層をこじ開けることにした。
一行はそこへ入り込むと、魔力の層は元通りの状態に戻っていた。
すると、魔力の層の外側に魔物が現れたが――
「こっちに気が付いていないようだな」
アレスが魔物の様子を見ながら言うとロイドが答えた。
「こっちから手出しもできないが向こうはこっちの存在を認識できていないようなんだ。
だから最悪落ち着かない光景になる可能性もありそうだが、とりあえず安心していいだろう」
というと、スティアが背伸びしながら言った。
「ふあっ……なんだか疲れたな……」
それに対してリアントスがつっこんだ。
「ずっと寝てたくせにどうしたら疲れるんだ?」
スティアは照れていた。
「だから! どこに照れる要素があるのよ!」
ライアもつっこんだ。
適当な木を寄せ集め、ロイドは魔法を放った。
「<フレイム・ショット!>」
その様を見ていたアレスは唖然としていた。
「便利な火おこし法だな――」
それに対してリアントスが言った。
「そういや、魔法って炎魔法か氷魔法から入るとか言っていたよな、
ロイドが炎魔法使うシチュエーションって焚き火するぐらいしか見ない気がするんだが」
ロイドは火の調子を見ながら答えた。
「魔法というか”エーテル”には属性ごとに適正って言うのがあってな、
俺は火の適正がないんだ、つまり苦手ってやつだな。
反面、その反属性の氷は俺の得意な属性でな、攻撃魔法を使うのならとりあえずこれっていうレベルだな」
そういうものなのか、リアントスは言うとロイドはさらに続けた。
「魔法を使う上では適性は非常に大事だ。
特に古の時代は回復魔法すらも一般的だったらしいが、
どの属性が得意かで使用する回復魔法の系統も大体決まってくるみたいだな」
そうなのか。
適当に夕飯を取り、そして夜が訪れた――。
「狼が鳴いている声がするわね――」
ライアは寝袋に潜りながら外の様子をうかがっていた。
「でもここは安全だ、ライアも早く眠るといい」
ロイドは背中に置いた荷物をにもたれかかりながら焚火を前に座っていた。
「野宿なのになんだかすごくとても落ち着いた野宿ね、
いつもなら周りに騎士たちが入れ代わり立ち代わり張っているところなのに――」
ライアはそう言うとロイドは答えた。
「だな、それこそ”結界”なんていうのを張れば簡単に野営できるだろうな、
クロノリアに導かれているようだからそれぐらいの代物が欲しいところだ、今後のことを考えるとな――」
確かにそんな気がする――ライアは考えた。
「どうしたんだ? 眠れないのか?」
ロイドは改まって訊くとライアは頷いた。
「ねえ、隣に行ってもいい?」