アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第31節 今のは”奇跡”だった

 すると、早速サンダー・フールからの襲撃が。
「来たぞ! 構えろ!」
 騎士たちが襲撃に備えていた。 物々しい現場ゆえに船での旅を楽しんでいる暇などなかったようだ。
「よし、俺たちも準備しようぜ」
 と、リアントスは言うと、ロイドは早速弓を構えた。
「そんな所から届くのか?」
 アレスはそう訊いた、魔物はまだ50メートルも先にいるのに早すぎないだろうかと言うと、ライアが言った。
「妙案があるんでしょ。で、何をするの?」
 すると、ロイドは頷いた。
「魔法というやつの力を見せてやろうと思ってな、 ここまで来たらお叱りを受けることもねえだろ。 だからライア、リアントスも弓を構えてくれ」
 いやっ、でも……リアントスは言った。
「でも、流石にちょっと遠すぎるんだが――飛んでいる位置もちょっと上すぎるしな……」
 だが、ロイドは得意げに言った。
「魔法の力を信じるんだ。 それに、お前らを魔法でサポートをするのは俺じゃない――」
 えっ、どういうこと? ライアは訊くと、ロイドは得意げのまま言った。
「言っとくが、エターニスのライト・エルフの上下関係は魔力では決まってないからな。 そういうことでだ、ランブル、出力は20%程度で十分だから頼むぞ」
 話を振られたランブルは冷静に答えた。
「承知しました。 さあみなさん、遠慮せずにお願いします!」
 どっ、どういうこと!?

 だが、その光景は何とも圧倒的だった。 船から次々と放たれる矢は、普通ではありえない軌道を描くと、 50メートルも先にいるサンダー・フールの群れめがけて吸い込まれるように命中していった!
「なっ!? どうなっているんだ!?」
 アレスは驚いていた、弓矢のヘタクソな彼やシュタル、そしてスティアでもサンダー・フールへと確実に命中していった!  無論、その光景に騎士や兵士たちもとても驚いていた。
「ちょっとやり過ぎちまったか……」
 ロイドは悩んでいるとランブルは非常に申し訳なさそうにしていた。
「どっ、どうしましょう……私、とんでもないことを――」
 そこへロイドは……
「いや、”奇跡”ということにしておこうか。 それにこの状況下だからな、それぐらいの”奇跡”が起きてもおかしくはない…… ということにしておこうぜ」
 いいのですか……ランブルは恐る恐る訊くとロイドは得意げに答えた。
「大丈夫だ、こういう場合に便利なやつがいるからな、 サイス=ラクシュータって男と、例のクソ野郎ってやつだ。 あいつらがうまいこと回収してくれるから期待しておけばいい。 あんたはたまたま”奇跡”を見ただけだということにしといてくれ」
 わかりました! ランブルははっきりというと、ロイドは改まって言った。
「えーっと……そうだな――次回からはとりあえず、出力8%程度で頼めるか?」
 しかしその時――
「おい! 敵はまだ滅びてねえぞ!」
 リアントスは注意を促していた、残った敵が船めがけて襲い掛かってきたようだ。するとロイドは――
「なあ、ランブル――目の前に来たら20%でぶっ飛ばしていいからな」
「わかりました――」
 ランブルに言うと、ランブルは剣を引き出していた。
「私でもわかるわ、彼、魔力が強いのね――」
 ロイドは頷いた。
「以前にも言ったがサイスもあの部類だ、あいつの魔力も強いぞ。 ちなみに妹もあれぐらいの強さを持っている――俺の知り合いは結構特殊でな、魔力強い者だらけなんだ」
 特殊と言われても……そもそも魔法が使えるということ自体が特殊の部類なんだけど。

 とにかく何とか魔物の群れを撃破した彼ら、考察をしていた。
「魔物の数によるということはわかった。 それ次第で何とか運航可能ということになりそうだな」
 リアントスは言うとアレスが訊いた。
「でも……それにしては少し数が多すぎるし、 それに、そうするとやはり”奇跡”を使わないことには――」
 ランブルが言った。
「いえ、リアントスさんの言いたいことはそう言うことではないですね。 ”奇跡”はあくまで大多数を減らしたに過ぎないということですよ。 数さえ条件が合えば”奇跡”に頼らずとも大丈夫ということになりそうですね。 それにもし、クロノリアのプロジェクトが成功した暁には、 この状況も打破できるのではないでしょうか、私はそう信じていますね!  だから数週間の辛抱なんじゃないでしょうか?」
 まあ……うまく言った場合の話にはなるが。
「とりあえず、一筋の光明が見えたというところにしておくべきだな!」
 最後はスティアがいい感じに締めてくれた。
「それはいいんだが、できれば弓矢使うときにきちんと魔物を狙ってくれるとよかったんだけどな」
 と、ロイドは苦言を呈していた。 ”奇跡”は確実に当たるとはいえ、威力のほうは実際の命中率に依存するらしい、 何でもかんでもうまくいくわけではないということだな。