アーカネリアス・ストーリー

第2章 碧落の都

第27節 馴れ初め

 とにかく、とりあえずはアーカネルの想定通りに事をこなすため、一路クロノリアへと進むことにした。
「クリストファーか……お前の親父の代では執行官だったんだな」
 リアントスはそう訊くとロイドは答えた。
「ああ、そん時の執行官長はセドラムってやつだ、フィダンの森のあの件を推し進めた首謀者だな。 今は隠居しててランペールにいるらしいが、たまにどこかに出かける姿が目撃されるそうだ」
「けっ、いい気なもんだ、さっさとくたばればいいものを……」
 リアントスは腹を立てていた。
「ところで3人ってどんな知り合い? いろいろ訊いたけど、もう少し聞いてみたいな……ダメ?」
 シュタルはそう訊くとリアントスは答えた。
「ああ、別に構わないぞ」
 彼らはまさに例のアーカネルから南東にある島の都市で暮らしている者たちだった。 その島の名前はリオルダートと呼ばれている。
「で、こいつらはそのリオルダート島のオンゾーシってわけだ」
 ロイドはそう言うとリアントスは言った。
「俺はオンゾーシじゃねえ。オンゾーシはこいつだ、そうは見えないだろ?」
 と、スティアを指して言うと、スティアはなんだか照れた様子だった。
「軽めにディスられて何故照れるのよ……」
 ライアは呆れていた。
「俺はこいつの家の分家、一応こいつと俺の親同士は兄弟なんでな、つまりは従兄弟ってわけだ」
 そうなのか、アレスは考えていた。
「やっぱりお前もオンゾーシじゃねえか」
「違うっつってんだろ」

 続いて、ロイドとの関係。
「こいつの親父と俺の親父とはもともとハンターとしてバディを組んでいた仲だった。 リオルダートはアーカネルの手とは無縁な民主国家でな、 その分ハンター業が盛んで魔物対峙とかになるとハンターに任せるのが一般的でもある。 俺の親父はそこに目をつけてリオルダートでハンターとしての実績を積んでいたそうだ」
 そして――
「でも、やっぱり本土のほうがいいってことになってな、 そのうちこっち側へと戻ってきたわけだが当時はアーカネルによるハンターへの規制も厳しく、 仕事もそんなに多い方じゃなかったから止む無くアーカネルに入団することに決めた。 無論、仕事量からしてもリオルダートでハンターしているよりかはアーカネル騎士のほうが待遇がいい、 こいつの父親も一緒についていったってわけだな」
 そして、ハンターへの規制が緩和されたのはリアントスの親父とロイドの親父がアーカネル騎士になった後で、 あの執行官長セドラムが辞めた後の改革からだった、つまりはリアントスの親父はその際の世界を見ていないということである。
「ただ、親父たちは既にそれぞれ結婚して子供も生まれていたからな。 俺は親父が亡くなり、お袋によって育てられた。 ロイドのほうはお袋さんが病気で早くに亡くなって親父に育てられたんだっけな」
 ロイドは頷いた。
「ああ、妹を産んでから1年後に亡くなった。 とはいえ、俺の周囲はサイスのように身内同然のやつもいるからな、 幼少のころはまだエターニスに住んでいて、本当に家族同然の連中ばかりだったよ。 お袋が亡くなってから2年後にはアルティニアに住を移し、そこであんたの姉貴……”雪女”と出会うことになったわけだ」
 そうなんだ、ライアは納得した。
「ロイドと初めて会ったのも、こいつがアルティニアに引っ越した後からだった。 俺たちの仲はそんな感じだ」
 リアントスはそう続けた。それからは何度か連絡も取り合うようになっていたようだ。
「てか、俺もアルティニアに住んでいたからな、ロイドの親父の紹介のおかげでな。 親父が元アーカネル騎士ということもあってアルティニアでなら遺族年金でなんとか過ごしていける状況だった。 だが――そんなお袋も元々身体が弱い方だったせいでとうとう身体を壊し――俺が8つの頃には亡くなっちまった……」
 その3年後には風雲の騎士団が消息を絶っている。
「で、こいつは――まあ、オマケみたいなもんだな」
 と、リアントスはスティアを指して言った。
「オマケって……」
 アレスは唖然としていた。
「ハンターやるならリオルダートで登録するのが一番と思ってな、あそこはまさにハンターの総本山たる本部のある都で、 ある学生時代の夏休みに俺とロイドと何故か妹までもがリオルダートに行くことになった。 その折に本家のこいつと出会うことになってな、何の縁かはわからないが、とりあえず一緒に行くことになった。 正直、俺的にも本家云々とかは何でもよかったんだが、なんだかんだで一緒にいるからな――無鉄砲で怖いもの知らずの命知らずなのが玉に瑕だが……」
 と、スティアを指して言うと、スティアはなんだか照れた様子だった。
「だから、褒めてないってば……」
 やっぱりライアは呆れていた。するとリアントスは揶揄い気味にロイドに訊いた。
「そういや、お前の美人の妹様は元気か?」
 ロイドは得意げに頷いた。
「ああ、もちろんだ。是非にリアントスお兄様に遭いたいそうだ」
 するとリアントスは――
「いっ、いや……俺は遠慮しとく……」
 と、あからさまに嫌がっている……やっぱりロイドの妹、ヤバイ予感しかしない件。