昔話はその辺にして、アレスたちは休むことにした。
時間が少々遅くなり朝起きたのもその分遅くなってしまったが、
いずれにせよ、パタンタで一晩明かすタイミングを考えるとちょうどよいタイミング……
このために少々夜更かしをしていると言ってもいいだろう。
翌朝、アレスたちはサイスに出会った。
「なんか悪いな、昔話につき合わせちまって……あんただって朝早いだろうに――」
ロイドは申し訳なさそうに言うが、サイスはにっこりとして言った。
「いえいえ、むしろなんとも懐かしいものでしたので、私も話をしたかったですからね。
それで今日の午前中は特別公務ということで特殊な勤務体制をさせていただくことにしました。
なので私も実は先ほど起きたばかりです。
その間の私の仕事についてはすでにほかの者が代行を務めていますので、その点は問題ないでしょう。
それに私もクリストファー氏の進言については気になっていますから、
時間はそんなにありませんが、これからアーカネルに滞在している彼に会いに、
そして話の真意について伺うことを予定していますね――」
なんともちゃっかりしているサイスだった、そのための特別公務ということである。
確かにクリストファーの進言は気になるところだった。
「特別公務なのにわざわざ出迎えまでしてくれるなんてな――」
ロイドはそう言うとサイスは気さくに話した。
「今回あなた方に任務を与えたのは私ですし、
それにロイドさんとはある意味身内のような関係ですので気になさらないでください。
そうなるともちろん皆さんとも身内みたいな関係という感じになりそうですけどね」
なんともいい人である。
ロイドはもちろんだがライアも彼には結構お世話になっていたようで、
ある意味身内のような関係と言えるらしい。
「あっ、そうそう、一つだけ忘れていました。
今回のミッションですが、実はハンターズ・ギルドにも協力を要請することにしました。
例によってクロノリアの件ということもありまして、昨今の情勢からするとアーカネルだけにはとどまらない話になりそうです。
そういう側面もあり、協力というより共同で事に当たることにしようという方針にしました。
まあ――重役会での名目上は話を穏便に済ませるためにあくまで”協力”なんですがね」
ということはそれを考えたのは頭が切れるサイスの考えだなとロイドは思った。
「まあ――メタルマインの件以来ヤバイ情勢になっているからな、
それならハンターにも切り札的なものを与えて少しでもこの状況を打破したいとするなら正しい選択だな。
問題はハンター共がその話にうまいこと乗っかってくれるかどうかだが――」
サイスは頷いた。
「はい、その点には心配は及びません。
今回のミッションにはより協力的な人材をと特別な依頼として打診していますので、
なんとか予算的にも都合が付けられる範囲で良かったと思いますね」
すべては計算のうちか。
サイスや町の人などに見送られ、一行はアーカネルを出立した。
そしてオーレストへと通りかかるとそのままパタンタ方面へと向かおうと、町の外へと出ようとしているところだった。
そう言えば――
「ハンターズ・ギルドからの協力者ってこのあたりで合流するんじゃなかったっけ?」
アレスはそう言うとロイドは言った。
「いや、そういえば詳細な合流場所の指定ってなかった気がするな、
オーレスト近辺って話だけだった気がするが――」
と言いつつ、ロイドはどこかへ行こうとすると――
「ロイド! 何処に行くんだ!?」
アレスは慌てて訊いた。
「悪りぃ悪りぃ、こういう場合は直接訊いてきたほうがいいかと思ってな」
直接? アレスは首をかしげているが、彼は去ってしまった。するとライアが言った。
「直接ギルドに訊いてみるってことでしょ、それしかないわよね。
私も行ってくるからアレスとシュタルは馬車での待機をお願いね――」
そう言いつつ、ライアは去って行くロイドを追っていた。
「ハンターにはねぇ、”ギルド”っていう組合的なものがあるんだよ!」
「それは知って……いや、覚えとくよ――」
ちなみにアレスはレザー・ハンター5段、ハンター活動に手を付けたばかりの新米である。
2人は戻ってくるとライアがすぐさま話をした。
「流石はロイド、”ゴールド・ハンター・マスター”ともなれば顔が利くのね。
とにかく、別の仕事を請け負っている最中ですって。
今ならパタンタ方面に行けば会えるかもしれないから会いに行ってみたらどうだって言われたわ」
2年の間にハンターの段位階級も各々昇段させていた。
”マスター”の名を賜るのは10段のとき、つまり、
今の階級をマスターしているということを表し、次は階級が上がる段位であることを意味している。
「ということでだ、このまま素直にクロノリア方面へと向かえばいいっていうだけの話らしい。
すぐに出発しようぜ」
それは都合がいいのかどうなのかはともかく、
ロイドはそう言うとシュタルは嬉しそうに言った。
「そんじゃあ、クロノリアに向けてしゅっぱーつ♪」
彼女は手綱を引いていた、御者役を嬉しそうにこなしていた。