アーカネリアス・ストーリー

第1章 流星の騎士団

第13節 武器

 メタルマイン・シティは町の真ん中に坑道の入り口があり、その周辺にいろんな建物が散開している感じだ。 坑道の入り口にはいろいろと作業の道具などが置いてあり、今はそれ以上に人の数のほうが多い。
 残念なことに、メタルマインについてからというものの、歓迎ムードなどはなかった。 どうやら大勢の兵隊や作業者は鉱山の中でいろいろと格闘しているようだが、 その原因がなんなのか言うまでも無いだろう…… ”メタルマインの魔物討伐ミッション”なんてものを受けているぐらいだから。
「戦況はどうだ?」
 ルイスは一人の兵隊に尋ねた。
「あまりよろしくないです。どうやら未知の魔物が存在しているらしく、 我々の手には負えない状況が続いています」
 そんなバカな――この鉱山の魔物だけ不自然な状態になっているというのか?
「なかなか考えにくい状況ね。この事件、これで終わるのかしら?」
 ライアは皮肉めいた一言を発した。しかし、それに同調するものは少なくはない。
 ということで、彼らは鉄の高騰の原因にもなっているメタルマインの魔物討伐ミッションを実行することになった。
「なあ、ちょっと待て。ロイド、お前武器はどうする気だ?」
 先程のオーガとの戦いで折れてしまった大剣、ほかに換えが無いのがネックだった。 一応、腰に携えている中剣などもあるのでやれなくはないが、戦力ダウンは避けられないだろう。
「待て待て、せっかくだからここで武器を買っていかないか?」
 ルイスはそう促した――えっ、鉄の産地で……まさか鉄の武器?

 メタルマインにある武器屋へと隊長に連れてこられた。 武器ショップにしてはあまりにボロイ小屋のようだけれども営業中のようだ。
「今のこの状況で鉄の装備がマトモに作られているのはこの町のここだけだ」
 盲点だった。鉄は大部分がアーカネル城下ほか、多くの町に出回っている。 また、経済の取引の対象でもある鉄鉱石、今は数が少ないので値段も高騰している―― もちろんその理由は採掘量の都合で在庫が枯渇しているだけである。
 とにかく、採掘場で売り出すよりは大きな町に出して利益を上げるほうが都合がいいハズなのだが。
「ザダン! 俺だ、ルイスだ!」
 ショップの中に入るとルイスは大声でそう言った。
「ん? その声は……ルイスじゃねぇか、久しぶりだな!」
 声の主はボサボサな長い髪と髭を生やした背が低めの小太りの男だった。 空想上の生き物である”ドワーフ”みたいなヤツだといえば通じるだろう。
「ザダンも相変わらず、小さな町のオンボロ小屋の鍛冶屋をやっているのか?」
「いろいろとあってな。それよりなんだ、わざわざ城の騎士になってまでこの俺を冷やかしに来たのか?」

 本題に入った。
「武器ねぇ……最近、鉄鉱石もあまり質のいいものが入荷されなくてな、 作業連中の道具を作ったり修理したりするのがやっとだ」
 と、鉄鉱石はここで作られてもここで消費されている現状だ。 確かに、鉄鉱石を掘り出す場所や道具をきちんと確保しないと鉄鉱石など掘れやしない。 その鉄鉱石を土に対して使うにしても魔物に対して使うにしてもである。
「なんとかならないものか?」
 ロイドは訊ねた。
「ん……まあ――一応、その辺に鉄製の長剣が並んでいるだろ?  今はそれが限界、お前の望む大型の武器はムリだ、諦めてくれ」
 そうか、それじゃあ仕方がないか。
「じゃあ、私はこれにする!」
 ということで、長剣で全然問題の無いアレスとシュタルは早々に決めた。ん、ライアは?
「私、あれがいい!」
 ライアはある戸棚の上を指しながら言った。 ロイドはその方向に見上げると、彼もそこに食いついた。
「おいオッサン! 俺もあれがいいぞ!」
「ボウズたち、あいつはダメだ。あれは一介の戦士で無いと渡せねぇ」
 と言い放ち、頑なに拒んだ。 2人が要求しているもの、そこには大型の鉄の剣と大型の鉄の槍があった。
「そこをなんとか頼めないだろうか? こいつら、例の連中なんだ。 エルヴァラン、レギナス……」
 ルイスはそう言うとロイドは親は関係ないだろうと言いかけた。 しかしルイスは目くばせしていた、この際だからこういうところで親の名前を利用してやれと言わんばかりだった。 まあいいか、それで話が通じるのなら……ロイドは考え直した。
「……まさかティバリスとアルクレアか!?  ほうほう、なるほど……こいつは面白れえじゃねえか、 そのクソ生意気そうな美男美女のツラ! 本当にそっくりだな!」
 なんだそれは……。しかし何がともあれ望みの武器は手に入った。 防具は支給額の関係でムリだったがなんとかなりそうだ……いや、 このあとのことを考えると防具が何であれ、それほど意味を成さないことになるなんて。