アーカネリアス・ストーリー

第1章 流星の騎士団

第11節 巨大な魔物との対峙

 馬車を降りるや否や、ロイドは真っ先に切りかかった。
「アレス! ロイドに続け!」
 ルイスはそう指示を出すと、アレスは言われた通り盾を前に突っ込んだ。
「隊長、私も行きますわ」
 ライアも2人に続こうとしていた。
「ちょっと待て! ライアは後ろから弓だ!」
 ルイスはそう言うが……
「隊長、オーガは”ミサイル・ガード”持ちです。 つまり、あのガタイで矢を通すのは難しいと思います」
 近くまで来ると良く分かる、表皮が非常に硬そうで、 中途半端な弓の威力では恐らく貫通すら難しいだろう。 しかも相手の大きさが大きさなので、弓の矢程度の小ささではびくともしないだろう。
「むむむ、そうか……。ならば、全員でそろって接近戦だ!」
 ルイスの号令でオーガと衝突した。

 ロイドがすでにオーガ相手に背後を取ったり、 あちこち動き回り翻弄しながら戦っていたが、相手もただ大きいだけでなく、 タフで大きさの割によく動き、なかなかしぶとかった。
 一方でアレスはオーガの重たい棍棒の一撃をなんとか盾で弾き返すも、 あまりの強さに何度ものけぞり、しまいにはクラクラしてきた。
「アレス! ムチャするなよ!」
 ロイドはアレスを励ましていた。 しかし、アレスは今は立っているだけで精一杯、盾役も楽ではない。
 シュタルやライアも攻撃を上手く当ててはいるが、いずれも決定打にいたらず、 非常に厳しい戦いとなっていた。
「弱点が突きづらいな――」
 ロイドはそう漏らすとシュタルは訊いた。
「えっ、弱点ドコ?」
「言ってしまえば人型モンスターだからな、皮膚の硬さは大体俺らと共通している」
 ああ、そういうことか……シュタルは考えていた、自分の弱点――
「くそっ、みんな! 一度退くぞ!」
 結局、ルイスがそう指示を出すことに。 肝心要のアレスが盾役として機能していない、体力的に限界があったのだ。 それによって魔物の注意があちこちに向き、攻撃がしづらくなってしまった。 止む無くルイスが自分で何とかしようと考えて指示を出したが、 それにはまずはこの状況を解消するべく各人に集合命令を降すことになった。 ところが――
「あっ、しまっ……」
 ライアが転んでしまった! マズイ!
「ライア! 危ない!」
 シュタルは心配した。ライアは出来る限り、転んだその場で座りながら弓矢の乱射をした。 しかし、いずれも軽く振り払われており、オーガの猛進は止まらない!
 そしてオーガはライアの目の前で棍棒を大きく振りかぶった! ライアは逃げられない!
「くっ、間に合わない!」
 アレスやルイスが彼女のもとへ向かうには少し距離がありすぎた。 たとえ間に合ったとしてもあの棍棒の一撃では耐えられそうに無い、もうダメか――
 すると、オーガが棍棒を振り下ろすと同時に途中で何かと何かが激しくぶつかる音がした!
「ロイド!」
 ロイドが頭上にかざした大剣を盾に棍棒の一撃を弾き返していたのだった―― オーガはこれに対して右手の棍棒を頭上に大きく振り上げたまま大きくのけぞっていた。
「あっ……!」
 シュタルはオーガのその状態をみて閃き、瞬時に行動に出た!
「脇の下ぁ!」
 シュタルは瞬時にオーガの右脇めがけて剣を投げつけつつそこに飛びつくと、そのまま勢いよく切り抜いた。 オーガは右脇を抱えてうずくまると、シュタルはここぞとばかりに追撃!  すかさずあご首に一太刀勢いよく掻っ捌いた。オーガは大きなうめき声と共に崩れた。
 そしてオーガが倒れると、同時にロイドもその場に崩れ落ちた――

「ロ……ロイド、ロイド!」
 アレスはロイドに駆け寄った。ロイドは頭から血を流して倒れていた。 盾にした大剣は棍棒の一撃で大破してしまい、棍棒は彼の頭にしっかりとヒットしていたようだった……。
「なっ、何てことだ! 俺のミスで!」
 ルイスは自分を責めていた。
「そんなの……無いよ……」
 シュタルはロイドに寄り添い、涙を流していた。
「そんな! 私のせいでロイドが……」
 ライアも自分を責めていた。 くそっ、何てことだ、こんなところで仲間一人を失うなんて!
「ねえ! 嘘でしょ! 嘘って言って! こんな、こんなの……!」
 ライアの悲痛が響き渡る――何ともいたたまれない状況だ、 仲間一人失い、その場にいなくてはいけないが、 実際の気持ちはそれとは反対で、この場にいたくない、 悲しく、切なく、いたたまれない状況だった。
「ねえ! ロイド、ロイド!」
 ライアの悲痛な声はしばらく続きそうだった。だが、しかし――
「……ぬっ……あー! うるせえー! 人を勝手に殺すな!」
 ロイドは上半身を起こしながら言った。
「へっ? ロイド?!」
 一同呆然としていた――なんと彼は生きていたのだ!
「ったく……今度こそマジで終わったかと思ったが……我ながらよくやるもんだな……」
 すると、さっきのムードは一気に吹き飛び、みんなで喜んだ。 みんなでロイドを呼んだり、心配していた。 中でも特にライアは――
「なっ、なんだ!?」
「ロイド! よかった、本当によかった……生きていたのね……」
 彼女は特に泣きながら喜び、ロイドに抱きついていた。すると――
「うぅっ……ヤバイ、頭がクラクラする……」
 彼は頭を抱えていた。 しかし、怪我をしていたにせよ割と平気なようだ、本当に無事で何よりだった。
 道の真中で崩れているオーガをアレスとルイスでなんとか退かし、 今度は御者役にシュタルがかって出ると、馬車は再び動こうとしていた。 ロイドはライアの肩を借りつつも、何とか自力で馬車に乗れた。