流石はゴールドランクのロイド、狼2匹程度では彼には物足りないことだろう。
そしてその背後、アレスは先陣を切って魔鳥の群れへと盾を前にして突っ込んだ。
「来い!」
アレスの防具は重そうだ。
金属製の板を体中に纏うだなんて私には到底出来そうに無い――シュタルは彼を眺めながらそう考えていた。
次はライア。
彼女はいろいろと器用にこなす戦いが出来るようだ。
それこそ、魔鳥の群れ相手に狙いを定めて弓を射るなど私には出来そうも無い――シュタルはそう考えていた。
さらにそれだけでなく、
「アレス! 横!」
「わかってる、けどっ!」
「もう、仕方が無いわね!」
アレスの前盾を突破し、横へと回り込んだ魔鳥相手に剣を引き抜いて両断した。
流石はスチール6段、手慣れている。
ならば……シュタルはどうかというと、彼女の得意技はもちろん――
「このっ!」
アレスの攻撃を翻弄している魔鳥相手にスキをついて重たい一撃を与えた。
「えっ!?」
「もー! アレスー! きちんと攻撃を当てなよー!」
そう、彼女の特性はとにかく素早いこと、命中率の高い一撃で敵に攻撃を確実に当てるのが得意なことである。
言っても、アレスのような重装備タイプではすばしっこい敵を相手に攻撃を確実に当てるのは難しいことだったのかもしれないが。
対してアレスについては御覧の通り……
「アレス! 力はいらない、当てようと思えばいいんだ!」
ルイス隊長が前に出て見本を見せると、攻撃は簡単に魔鳥に命中した。
戦いが終わった後、反省会が開催された。
「俺、ああいうすばしっこいのはダメなんですよ」
と、アレス。確かにそんな気がしていた。
「だから……どうすればいいんだろう……」
アレスは悩んでいた。
「なあロイド、ロイドはどうするんだ?
狼は平気みたいだけど、鳥とかだったらどうやって当てる?」
「ああ、ちょっと見てろ」
ロイドは背中からなんと弓矢を取り出し、
遠めにある木の枝に狙いを定めて打ち抜いた。
「こうするんだ」
なんと、ロイドはそのイメージに反して、そんな繊細な武器をも扱えるのかー!
みんなでそんな目でロイドを見た。
「お前ら……何のつもりだ……」
ロイドはキレた。
「あのなぁ、言っておくが、俺は元々こっちの使い手だ。
それだけじゃ戦えねえと思って今はただこうなっているだけだ」
ライアが楽しそうに言った。
「あら、奇遇ね、私もそうなのよ」
「知ってる、雪女が言ってた、雪女もそうだったらしいな。
だからネシェラもそうなった」
「じゃあ、ロイドの弓の腕は”雪女”仕込みなのかな?」
ライアは何かとロイドと話したがる、姉の線か……。
とにかく話を戻して、
「要は当てることだけを考えればいいんだ。
弓だってどんなに狙いを定めても当たらなきゃ意味が無い」
それもそうだ。
「しっかしライアにシュタル、
お前らよくあんなのにクリーンヒットさせられたな。
文字通りの一撃必殺……流石の俺でもそこまではいかなかった」
ルイスが絶賛していた。しかし、
「当てようと思えば当てられるもんだ。
戦い慣れしている連中だったらあんな的、外すわけがない。
知り合いにもっと上手いのがいてな、
特に魔鳥なんて出会った時点で打ち落とされていることだろうよ」
ロイドはそう言うとアレスとルイスは絶句した。
「まあ……いい。アレス、お前はああいう連中には出来ないことをやるんだ。
たとえば今回の盾役、おそらくお前にしか出来ないだろう」
アレスの利点は守りが堅いこと、
このメンツなら魔物の攻撃を受け止める役目といったらアレス以外に考えられないだろう。
「攻める手段なんて少しずつ覚えればいいんだ。
それにアレスは守りがとりえだからな、
そこから攻める方法を考えればいいんだ」
「守りから……攻めに転じる……」
すばしっこい敵は俺の天敵――アレスは注意しながら意識的に挑んて来た。
慣れてくれば当てること自体は簡単だった。
「所謂”スピード・アタック”って技だね!」
シュタルがそう言った。それにしても――
「”スピード・アタック”の中でも遅い部類のやつだな。
ただ――あんなアーマー・ナイトにあんな攻撃を繰り出されるとなんか怖いな……」
と、ロイドが言った。あんな重厚な装備で早い動きの攻撃を繰り出されると確かにそう思うかもしれない。
「おっ、重たっ……」
アレスはキツそうだった、あれでもっと重量のある重鎧だったら当人の体力が持たない可能性がありそうだ。
それに、その動作が怖い主な理由として、あんなカチカチな物体が機敏に動くさま、ぶつかったときのことを考えるとそれ自身が凶器になりそうだったからだ。
「確かに……ねえアレス! 無理しないでいいからね!」
ライアはそう訴えた。
「完全に防具に振り回されているな……このアドバイスは失敗だったか……?」
ルイスは後ろで悩んでいた。
「まあ……あれ自体が凶器だから案外剣を振るよりかはぶつかっていくだけでも十分かもしれないけどな。
でも、そろそろもたねえから俺がやってやるか。アレス! 俺と交代だ!」
と言いつつ、ロイドはアレスの前に立ちはだかった。
「なあロイド……こんなんどうやって敵の動きを追うんだ?」
アレスは訊くとロイドは腰の剣を構えた。
「俺の場合は追ったりはしない。むしろ、先を読むんだ――」
するとなんと、ロイドは鋭く剣を振りかざすと、そこから何かが飛び出した!
「えっ!?」
それにはアレスも驚いていた。
「ほほう……剣閃を飛ばして攻撃する術を持っているのか、やるな!」
ルイスは感心していた。剣閃によりバタバタと墜落していく魔鳥たち、その光景を見てアレスは愕然としていた。
「自分の中で何がやりやすいかは自分自身で決めないといけない。
俺もまだまだ全然未熟だが――それでも雑魚散らしには何が最適かと言われたら、
少なくとも居ながらにして攻撃できた方が楽だということは分かっている。
もしだったらアレスも練習するといいと思うぞ」
確かに……シュタルとライアはそう思った。
「すごーい! ロイドってあんなことまでできるんだね!」
「やるわね、ゴールド4段の名は伊達じゃないってことね」
そして、戦い続けていくうちにアーカネルとそう変わらぬ外観の”オーレスト”を越え、
問題の”パタンタ”の町までやってきた。
その町ではなにやら問題が起きていた。