ロイドの幼き頃のお話、ライアは聴かせてもらっていた。
ライアの姉のアルクレアとロイドのファーストコンタクトはアーカネルのお城だった。
ロイドが5つの頃、その時はアレスも一緒だったようだがアレスはあまりその時のことを覚えていないらしい。
アルクレアはその当時17歳、まだ騎士見習いだが正式に騎士団に入団しているわけではない。
彼女は新米と同じなめし革の鎧を来ていて、エルヴァランとティバリスがいるところへ着くと面倒臭そうに鎧を脱いだ。
「よう、アル! 訓練はしんどいか?」
と、エルヴァラン。今さら言うまでもないが、アレスの父親である。
「ん~、ラクショー、かな?」
アルクレアは妹と違い、明るくて”カワイイ”性格である、どうしてこうも違うのだろうか。
「アルらしいな。ったく、面倒だからさっさとこっち(現場)にくりゃいいのに」
ティバリスの口の悪さはロイドと同じ、親子そろって同じレベルである。
「それは無理だろう、いくら腕がよくても年齢だってあるし、第一、彼女はまだ学生だぞ?」
「んなことぐらいわかってる、たとえばの話だ、本気にすんな」
一方のエルヴァランはアレス同様マジメなので、ティバリスはそれに説明をつけている。
「あれ? そーいえば、レギナスは?」
「レギナスは仕事。リオルダートでサイスを暗殺中」
「えぇ~!? サイスったら、殺されちゃうのかぁ~、つまんないの~」
「オイオイ、ティバリス、レギナスはリオルダートでサイスさんの護衛だろ!」
あの4人はすでに知り合った仲で、こんな他愛のない会話を交わす仲でもあった。
また、サイスはこの時、お城の役人になるべく勉強中であった。
「つまんないか――まあ、その代わり俺がいるから許してくれ」
「んま、そう言うティバリスに免じて許してやるか!」
マジメなエルヴァランはこういう話についていけなかったようだ。
「そ、それより、今日こそ連れてきたんだぞ!」
連れてきたのは自分の息子、当時は5歳のアレスの登場である。
「あっ、えっと、ボクはその……」
「ん? 何カナ~?」
アレスは恥ずかしがって、結局親の陰に隠れてしまった。
「アレス、ほらどうした? お姉ちゃんにアイサツは?」
しかし、アレスは黙って引っ込んでしまった。
「あっはは! アレスクン、カワイイね!」
アルクレアは笑いながら優しく言った。
「こんなハズじゃなかったんだけどな。それよりティバリス、お前のとこのはどうした?」
ティバリスは周囲を見渡しながら言った。
「さあ? そこらにいるんじゃねえの?」
ロイドはいつの間にか、アルクレアの後ろにいたようだ。彼女はその気配に気が付くと――
「あらっ!? アナタが噂のロイドたんね~!」
「なっ、何だこの女!?」
お互いの第一声がこれ……。
アルクレアはロイドの目の高さに合わせるためにしゃがんだ。
「お姉さんの背後を取るなんて……ロイドたんなかなかやるな!?」
「……は?」
「は? じゃないでしょこいつぅ! こ~してやるぅ~!」
ロイドは思いっきり、子供にしてはややきつめに抱きしめられた……。
「痛てて! 痛ててて! 離せこの女!」
お姉様はロイドを離すと、ロイドは足早に逃げて行った。
「お前、ロイド好きだよな――」
お互い初見であるものの、アルクレアは前々からロイドには興味津々だったらしい。
「そう言うわけで、ファーストコンタクトじゃあ散々な目に会ったし、
何故好かれたのかもよくわからないで今日に至るわけだ」
「それで終わりじゃあないでしょ?」
面倒臭がって終わりにしようとしていたロイドをライアは咎めた。
「わかったよ、話せばいいんだろ」
「そうよ。それで、”雪女”と呼ぶ理由は何?」
「……そこを根に持っているのか」
ライアとしては別にそう言うわけではなく、単にそこに至るまでの経緯が知りたいだけだった。
アルクレアは騎士に入団して以来、家に帰って来ることはほぼなく、
”如月”の姓を名乗る辺り結婚したことになっているが、ライアは納得していなかった、
そんな噂がたっているにも関わらず、家に戻ることもなければ再会したことすらなかったためである。
「そうか、要するにだ、お前はあの女の話をすれば気が済むのか」
しかし、何故かロイドは頭をかき、言葉に詰まった様子である。
そして、諦めたかのようにため息をつきながら話し始めた。