エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第3章 安定の策士ライフ

第21節 やっぱり意味不明の女

 その日……クラウディアス中が一時的に荒れに荒れることとなった。 ただし――事態は瞬時に収まったが、その後は落胆するものが続出した。
 クラウディアスの1階の横庭にて。
「ったく……言い方少々不謹慎だが、皮肉にもディスタード帝国と戦争している時のほうがまだマシだった気がするな――」
 クラフォードは言うとティレックスも頭を悩ませていた。
「くっ、くそっ! 戦争のほうがマシだなんて認めることはできないのに……否定もできない! どうかしてるぞ!」
 ティレックスは渾身の皮肉を訴えていた。それに対してクラフォードは頭を抱えながら続けた。
「言ってしまえばほとんど戦争のようなものだからな、 戦争に発展してもおかしくはない出来事という意味でだ、無理もない――」
 そこへラシルが現れた。
「戦争? まさか、ディスタードやウォンターの残党が!?」
 その様を見て、何人かが呆れていた。
「何寝ぼけてんだよ、さっきあんなことがあってどうしてそんな冗談が言えるんだよ――」
 えっ……ラシルは申し訳なさそうに訊いた。
「あ、あの……すみません、僕、昨夜はずっと作業していたので、今起きたばかりなんですよ、まだ寝ぼけていますかね?」
 そうだったのか、2人は悩んでいた、それならどう説明したもんだかと――。 だが、説明すると――
「な!? なんですって!? じゃあ……今後どうなるんですか!?」
「それは――とりあえず、俺らに損はないようになっているらしいから安心してほしいということだな……」

 テラスでリリアリスから直接話を聞いていたヒュウガは笑っていた。
「どういう冗談だよそれ! もう、愉快という言葉しか出ねえな! 傑作かよ!」
 もはや呆れかえっているという感じのその態度に対してリリアリスはため息をついていた。
「そこ、そんなに笑うとこ? なんかおかしいことしてる?」
「いやいやいや! どう考えてもおかしいだろそれ!  なんで上場してガッツリ稼いでいたクセに廃止しちまうんだよ!」
 そう、なんとシルグランディア・コーポレーションはまさかの上場廃止を宣言したのだった。 無論、そうなると各々が保有しているシルグランディア株の行方が気になるところだが――
「とりあえず、一旦廃止しただけだからね……と言っても改めて上場するかは未定だけど。 もともと資金力はあるし、このまま有限会社として続けていこうかなってさ――」
 ヒュウガは考えた、言われてみれば確かに、 もともと有限会社を発足するとは訊いていたので株式と名乗っていたことについては気になっていたのだが、 そうか――グラエスタの貴族を貶めるためにか……って、 その目的と行動の釣り合いの取れてなさについてはやっぱりどう考えてもおかしいとは皆が口にすることである。
「で、株買ってくれた人には申し訳ないから、申し出た人には無条件に1.08倍を支払うってか?  まーたずいぶんと大盤振る舞いだな?」
「ったり前でしょ、信頼してうちを買ってくれたんだもん、そのぐらいするのは当然よねぇ、 しかもクラウディアスの名前を引っ提げて展開しているんだしさ。」
 ヒュウガは悩んでいた。
「でもま、それで場を落ち着かせたってのはいいことじゃないか?」
「まあね、フツーに考えれば”お前ふざけんじゃねえぞ”だけど、 むしろポジティブな意見のほうが多くてなんだか嬉しかったわね。」
 そこへスレアがやってきて言った。
「まったくだよ、ここまでクラウディアスをひっくり返した女がやっていることだからな、 それだけで十分信頼に足りえるほどだったと受け止めておけばいいんじゃないか?」
 そう言われたリリアリスは得意げに返した。
「あら! ってことは私のこの立場って責任重大ってことになるわね!」
 今気が付くことじゃないだろ……ヒュウガとスレアは呆れていた。

 だが、そんな中でもこんな行動が。
「売らないんですか? 先日の終値の1.08倍で買い取ってくれるらしいですよ?」
 ラシルはその議員に訊いた。すると議員は――
「そんな、もったいなくて売れませんよ。 あの人のことだからまた上場してくださるに決まっていますよ、だからこれはその時まで取っておくつもりですよ」
 そう言えば再上場の可能性についても触れていたんだっけ、ラシルは考えた。 もちろん、あくまで可能性なので保証がないのがネックだが。
「上場しないというのならそれはそれです、なんといってもこの株券自体が価値があるものなんですからね。 だって、あの人の会社の株ですよ?  経営しているのはこの世界でも珍しい精霊様、そう考えるとこれ自身にご利益があるといっても過言ではないですからね!」
 そういう考え方もあるのか、ラシルはそう思った。 しかし、その考え方に賛同する者は少なくはないようだ。
 するとそこへリリアリスが現れた。傍らには頭を抱えているスレアの姿も。
「あれ? どうかしました?」
 議員は訊いた。
「ええ、上場手続きを進めようかと思ってね。」
 な、なんだってー!?
「ど、どういうこと!? 上場廃止したばかりなのに!?」
 ラシルは悩んだ。