エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第65節 新たなる展開、意地の悪い2人

 ドリストン大陸での今後についてはキラルディアを主導とするクラウディアス連合軍がなんとか取り持つことになった。 例のアガレウスの件についてバフィンスに訊いたが、特に情報を持っていなかったようだ。 ただ、彼によるとそもそも各地に散らばった旧ウォンター勢については少し前のディスタード本土軍を見るにいろいろと暗躍していることもあるようなので、 イングスティアの犯行勢力もその一部でしかないんじゃないかと言っていた。 ということは、その件についてはまた問題が起きそうな予感だが、とりあえず今回の件についてはこれで一旦終止符を打つことになった。 今後は各クラウディアス連合国の勢力軍が注視していることは言うまでもない。
 そして問題のキラルディアからの協力勢はシャナン様とクラフォード、そしてティレックスが会議室で話をしていた。
「まさかヴェラルドさんたちがこちらにいらっしゃるとは。 なるほど、来るもの拒まずと言われたのですか、リリアさんらしいですね!」
 シャナン様がそう言うとヴェラルドが答えた。
「いやー、まさかこうしてクラウディアス様……いえ、みなさんと一緒に共闘できるとはまさに夢のようです!」
 クラウディアス様……もはや旅の仲間同然なんだから”様”をつけるのは辞めなさいとリリアリスに言われたヴェラルド、それで言い直していた。
「私としてはそれこそブリュゼルさんの息子さんと一緒に戦う日が来るのだと思ってもみませんでした。 しかし、それにしても、メドーナさんまで一緒にいらっしゃるとは――」
 メドーナはキラルディア国務長官の座を担っている人物である。 今は別の者が代行で職務を遂行しているようだ。 本来であれば国を離れる身ではないが、今回はとある理由でついてくることとなったのである、それは――
「私はこの2人の目付け役です。 毎度のことながら暴走癖があるので必要と判断し、同行することになりました」
 目付け役って――クラフォードは呆れていた。それに対してヴェラルドは――
「いやぁー参ったなぁ、こうしてがっちりと首に縄をつけられるとあんまり自由にできないもんなぁー♪」
 ヴェラルドのことは当初から軽そうなやつと思っていたクラフォードとティレックスだがこの軽さ、リファリウス以上である。 女性に関してのお話がない分だけ一部の勢力からはヤツよりはマシと言われるかもしれないが。
 そしてメドーナが”2人の”という通りキラルディアからはもう一人がついてきた、それは――
「国家戦術対策委員会長のバスカーさんも来られたのですね、 クラウディアスの戦術対策について視察されたいということでしたね、 後で担当の者をつけてご案内いたします」
 するとそこへメドーナはすかさず言った。
「私からもお願いいたします。 なお、こちらからの要望ばかりで申し訳ないのですが、 その担当の者につきましては男性の方をお願いしたいです」
 それに対してバスカーが焦って言った。
「なっ、何故!?  いや――だって、クラウディアスと言えばまさにインテリ美女たちの楽園!  ……いや、インテリな女性たちが大活躍していらっしゃるというではないですか!  だから、そのような女性たちが大活躍している様も含めてぜひ視察しようと――」
「なりません。 そもそもすでに本音を”ぶちまけている”時点でアウトです。 あなたのそういう下心を懸念して私に目付け役を全うせよとお達しが来たこと、お忘れでしょうか?」
「下心なんて滅相もない!  私はただ、クラウディアスがどのような国であるかを見たかっただけです!  そしてクラウディアスといえばインテリ美女です! いいじゃないですか!」
「ダメです。 その発言は性差別、セクシャル・ハラスメントに該当しますので慎んでください。 それに、キラルディアにおいてもインテリな女性はいると思いますので、その認識を今一度改めるよう是正してください。 もっとも、インテリ美女かインテリ美女でないかで人を区別すること自体が論外ですが」
 バスカーとメドーナの言い合いの間にヴェラルドが割って入った。
「まあまあまあ! とりあえず人前だしさ、この件はここで一旦終わらせよう、ね?」
 だがしかし、メドーナは――
「……わかりました。ですが、あなたにも言いたいことがたくさんあります。 お二方共に後ほど改めてお伝えいたしますので、お時間には必ず会議室に来てください」
 怖い……。でも、それを言われるだけのことをしている2人であることを悟ったクラウディアス勢3人だった。 そこへリファリウスが会議室へ笑いながら入ってきた。
「っははははは! やってるねー。 ヴェラルドさんもバスカーさんもなかなかの大物らしい。 でも、それを言ったら私も同罪だなぁ。」
 それに対してクラフォードとティレックスの心の声が漏れかけていた。
「なんだよ、自覚してるんじゃねーか、なのになんで直そうとしない?」
「直すわけないだろ、リファリウスだぞ? でなきゃ既に直ってるハズだ」
 確かに。しかしその一方で、メドーナが申し訳なさそうに言った。
「りっ、リファリウス様……いえ、リファリウスさん!  その節は大変ご無礼をおかけいたしました! 本当に申し訳ございません!」
 えっ、何があったのだろうか、クラウディアス勢3人はそう訊くとリファリウスは得意げな態度で――
「これですわ――」
 と、なんと、いきなり清楚で美しい女性の姿、あのレイリアの姿が……っておい、まさか――
「うふふっ、メドーナさんったら、私が案外女装姿がお似合いなんじゃないですかって言うんですよ。 そういうことでしたら私、喜んで女装の1つや2つ、いくらでもご覧に入れますわ――」
 という彼? 彼女? まあ――この人のセリフはともかく、リファリウスのこれについてはメドーナが考えたことらしい。 既に別途語られている通りだが、キラルディアを説得するために行ったことである。 だが、どこぞのルルーナよろしく、その完成度は非常に高く……
「ぉおっ! レイリアさんではないですかぁ! いいなぁ、やっぱり綺麗だなぁ……」
 と、バスカーは言った。 ってかこいつ、なんでもいいのか……ティレックスとクラフォードは頭を抱えていた。
「てか、見れば見るほどなるほどなって思うよ――」
 レイリアはにっこりとティレックスを見つめていたが、そんな彼女に対してティレックスはそう言った。 恐らくルルーナの件のことだろうが、クラフォードは首をかしげていた、まだ彼には話せていない。 話さなくても問題はなさそうだが、そもそもルルーナ自体がクラフォードもご存じの通りの”アレ”のため……
 ん、ということはこのバスカーってやつ、ルルーナにも食いつくんだなとティレックスは思っていた。

 ある日のこと、リファリウスが”ブリーズチャート”を抱えていた。だが――
「それ、本当にあの時の槍か?」
 クラフォードが訊くとリファリウスが得意げに答えた。
「そうだよ、改良版だけどね。 ご存じ”バークレティス”と同じでパワーが怪しかったからね、経年劣化というやつだろう。 だからそれを補充するためにこうして装飾っぽく足してみたんだよ、 これならアリヴァールの石碑も満足してくれることだろう。」
 それならそれでなんでもいいか、クラフォードはそう思った。
「そういえばリリアさんとルルーナさんは?」
 クラフォードは訊くとリファリウスは答えた。
「姉さまは空飛ぶ乗り物の開発に行ったよ。あと、ルルーナ姉さまは……」
 ヒュウガが答えた。
「姉さまも一緒じゃなかったか?」
 ん? リファリウスはヒュウガに訊いた。
「あれ? クラ君知らないの?」
「ああ、知らない。 それに”あえて知らせる必要はない”というスタンスだから、基本的には誰も打ち明けてない。 打ち明けてなくてもバレているパターンはあるけど、それはそれだな」
 リファリウスはニヤっとしていた。
「相変わらず意地が悪いね、”あえて知らせる必要はない”か、どこかで聞いたような話だな。」
「ああ、聞いたことよりも言ったことを思い出したほうが早いと思うぞ」
 クラフォードは首をかしげていた。それに対してヒュウガは――
「こっちの話だ。 ともかく、2人の姉さま方はガレアで仲良く開発中だ。 どうしてもっていうんだったら別に止めはしないが――」
 クラフォードは身震いしながら言った。
「い……いや、いい。 あの2人に絡まれるといろいろとつらいところがあるし、 ましてやあの2人が一緒ってことになるとなおさらだ、だから遠慮しておく――」
 クラフォードは逃げるように去っていった。それに対してリファリウスとヒュウガは――
「やれやれ、またしても問題を前にして逃亡か、万人狩りの名が廃るな。 まあ、彼にはウィーニアさんっていう美人の彼女がいるからねぇ。」
「万人狩りなんてのはそもそもその程度だってことだ、今に始まったことじゃないからな。 つか、さっき女性陣に彼女の件で集られていたぞ」
「さっきそれでアリエーラさんとフロレンティーナさんが目をキラキラとさせていたところを見たよ。」
「お前も無言で意味深に肩叩いていたしな、俺も便乗した口だが」
 2人はニヤニヤしながら話をしていた、やっぱり意地が悪いよこの2人――