長き長き道程「エンドレス・ロード」 ~プレリュード~ 最後の奇跡 第1部 第2章 第34節

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第2章 再起への誓い

第34節 傀儡

 他のシェトランド人は敵の拠点内に侵入してからというものの、 とりあえずセイバルを制圧するためと暴れまわっていたのだが、 次第にその流れがあらぬ方向へと向かっていることに気が付き、危機を感じていた。
「な、なんかおかしくねえか? 急に敵の数が増えているような――」
 エイゼルはビビりながら言うと、他のシェトランド人が話をした。
「増えてるっつーか、ぶり返しているみてえだぞ――」
 ぶり返し!? どういうことかとエイゼルが訊くと、目の前にはアイゼルが――
「アニキ! 無事か!?」
 しかし、そのアイゼルの様子がおかしい――
「……すべては女神様の意のままに――」
 なんと、再びあの時のように目が虚ろになっていた!  そして、そのエイゼルの目の前にはイールアーズが――
「イール! 気をつけろ! なんか、妙なことになってるぞ!」
 エイゼルは訴えるように聞くが、イールアーズは――
「俺は……ルイゼシアを守る――お前たちの手から妹を守る――」
 なんと、彼までもが妙なことになっていた。 そして、イールアーズの背後からセクシーな姿のエレイアが――
「ウフフッ♪ こいつが愛する”テラ・パワー・コア”のためなら何でもすることはみんな知っているでしょぉん?  そう、こいつの目には、この私が”テラ・パワー・コア”に見えているのよ……ねっ、お兄ちゃん♥」
 エレイアは可愛げな声でそう訴えると、イールアーズは――
「ああ、ルイゼシア、俺のルイゼシア――お前は”テラ・パワー・コア”、偉大にして大いなる存在――」
 虚ろな目をしながら彼女のことを見つめるとそう言った。
「だからお兄ちゃん、お願いがあるの! こいつら、私のことをいじめようとするの!  それをセイバルの人たちが助けてくれて”テラ・パワー・コア”って名前をつけてくれたのに、 こいつら、セイバルのことをやっつけようとするんだよ!」
 エレイアは訴えるようにそう言うと、イールアーズは剣を持ちながら言った。
「それはよくないな、お兄ちゃんが何とかしてやろうか――」
 だが、エレイアは――
「うふふっ、大丈夫よ、私はあなたの可愛い可愛い”テラ・パワー・コア”だもの♪ でしょ、お兄ちゃん♥」
 と、無邪気な表情で言うと、イールアーズは――
「もちろんだ、俺のルイゼシア―― お前はすごく可愛い、とても可愛い、この世で一番可愛い―― ルイゼシア、俺のルイゼシア――”テラ・パワー・コア”……」
 再び虚ろな目で彼女を見つめていた。するとエレイアは――
「フフッ♪ そうよ、流石はお兄ちゃんね♪  私はこの世で一番可愛いのだからそのことをこいつらにもきちんと教えてあげるわ♥ うっふぅん♥」
 と、エレイアは色っぽい仕草でどこか邪悪な面持ちでそう言うと、エイゼルたちの前に色っぽく立ちはだかった。
「くそっ! これがぶり返しの真相かよっ! だが、今度はそう簡単に毒香にかからんぜ!  どうして命令コードとやらが効いてないんだかわからんが”Dの40237AF”!  それとも”Bの8A50D13”がいいか!? ローナちゃんが俺に託してくれたコードだぜ!」
 ”Dの40237AF”は以前と同じくバリアブル・コアの初期化、エレイアの状態が元に戻るコードである。 一方で”Bの8A50D13”は、バリアブル・コアの活動を一旦停止させるためのコードで、 彼らにとっては第2の切り札的なコードそのものだった。
 しかし、そこへ――
「この女の色香がぶり返していないところからすると、効果期間が浅かった連中ということだな?  まあよい、とにかく、お前たちがここまでやってこれたことについては褒めてやろう。 それに、おかげさまで”鬼人の剣”と呼ばれる手練れまで手に入れることもかなった、 万人斬りは惜しくも逃してしまったが……とにかく、私の計画通りに事が進んでいるようで何よりだ――」
 その男の登場にエイゼルをはじめ、何人かのシェトランド人たちは驚いていた。
「貴様はドライアスか! てめえ! 今日という今日こそ決着をつけてやるぜ!」
 エイゼルらはその男相手にそのようなことを口々に言っていた。 そう、その男はドライアス、一部のシェトランド人がよく知る宿敵であり、 シェトランド人そのものにとっては因縁となる敵そのものだった。 ところが、そのドライアスは全く動じていない――
「そういえば、今の命令コードがどうかしたのか?」
 えっ――エイゼルたちは呆気に取られていた。
「貴様らのような知恵遅れにはいいことを教えてやろう。 お前たちの確認したすべてのコードだが、 この女は今では異常なコードとして認識するように設計しなおしてある。 つまり、この女にはそんなものは通用しないのだよ」
 得意げに言うドライアスはさらに続けた。
「そもそもそんな貴様らのような傭兵崩れの連中が扱うような古臭いコードなど、 今更このような先進的な研究を行うような場で使い続けると思うたか?  時代遅れの貴様らにはわからぬだろうな……今ではもっとシンプルな命令コードが主流だということをな!  なあメリュジーヌ……いや、”シュリーア”よ! 今すぐここでこれまでのことを報告せよ!」
 するとエレイアはその場で畏まり、説明を始めた。
「”道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ”はシェトランドの一団の進撃をトリガーとし、 そして古臭いコードによる異常を検知しましたため、それを攻撃行為とみなして作戦を開始―― ですが、それについてはドライアス様の仰せの通り、彼らの仲間を装う事といたしました」
 まさか、茶番だったのか!? 古い命令コードがハッキングされることも――
「そして鬼人剣・イールアーズを”テラ・パワー・コア制御室”へと誘導、 鬼人剣・イールアーズがエレベータから迂回している間、 鬼人剣・イールアーズが目視した”テラ・パワー・コア”のホログラムを消去、 同時にホログラムが投影されていたベッドの上に私が横たわり、 ”シュリーア”の力を持って”テラ・パワー・コア”に成り済ますことにも成功。 それにより、鬼人剣・イールアーズの獲得にも成功いたしました。 なお、その道中”シュリーア”の衣装へとチェンジすることに成功し、 ”シュリーア”となるべく再起動を実行している状況下にございますわ――」
 なんだって!? それじゃあイールアーズは――
「なお、”シュリーア”の力を行使したことによってさらなる”シュリーア”化が進み、 私の誘惑魔法効果も現在上昇中でございます――」
 なっ、誘惑魔法効果ということは――
「現在、施設内の誘惑魔法効果は58%まで上昇中、これより完全”シュリーア”化に移行後、 施設内を完全に取り込むまでにあと1分あれば完了いたします。 同時に、これまで私の色香を経験した男たちの再”美の奴隷化”についても3分後に開始します――」
 再”美の奴隷化”!? ということはまさか――
「ふっ、どうやらすべては順調だということのようだな、よろしい!  では”シュリーア”よ! これより”悩殺破壊女神・ヴィーナス・シュリーア”への完全起動のロック解除を許可する!  そして定刻通り事を運ぶのだ! それによってこの私が! この世界の新たなる支配者として君臨する!  そのために”シュリーア”よ! 今後はこれまで以上に私のために尽くすのだ!」