エンドレス・ロード ~プレリュード~

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第2章 再起への誓い

第32節 目的

 記憶が曖昧なりにもセイバル軍の土地についてはある程度詳しかったエレイア。 しかしその服装はセクシーな女王様そのままだった、今は他に変えがないのだから致し方がないが。
「大丈夫なのか?」
 イールアーズはそう聞くとエレイアは元気そうに答えた。
「大丈夫ですよ、ここは私に任せてください!  みなさんのことはあまり覚えていませんが私はセイバル軍の生物兵器として改造されてしまった身、 セイバルのことはきちんとつかんでいますから、私の言う通りにしていればいいんですよ!」
 それに対してローナフィオルが心配そうに訊いた。
「みんなことはあまり覚えてないって、ディルのことは……?」
 そう言われたエレイアは胸に手を当てたまま呟いていた。
「ディル、今は無事かしら……今頃どうしているのかな……」
 なんだかせつなそうな感じだった。 しかし、そこにアイゼルが……鼻を伸ばしながら言い寄っていた。
「大丈夫かエレイアちゃん! 辛いんだったらいつでも言いな! いつでも俺が抱っこしてやるぜ!」
 それに続いて次々と男共は調子よく「俺が、俺が」と声を上げてきた、こいつら――イールアーズは頭を抱えていた。 その一方のエレイアはただただニコニコとしているだけだった。
「ローナちゃんも疲れたら俺に言うんだぜ、お姫様抱っこしてやるからな!」
 と、エイゼルは調子よくローナフィオルにそう言うと――
「うん♪ あんたには絶対頼まないから大丈夫♪」
 彼女には速攻でそう答えられ、酷く落ち込んでいた――いい加減諦めろ。するとそこへ――
「あっ、ご指名だ――」
 ローナフィオルはスマートフォンが鳴動していたのですぐさま反応した。
「残念だけど私はここまでね、ガレアから直ぐに迎えが来るわ、だから――」
 それにイールアーズは驚いていた。
「直ぐって、まさか……ガレア軍はもう到着したのか!?」
「先遣隊がやってくることになっているのよ、だから軍といっても少人数の部隊なのよね。 それに、ほら……メリュジーヌの毒香にかかってた男たちもこのままにしておけないし、 死亡者も出ているしね……あ、その人たちはうちらで何とかするから安心してね」
 イールアーズは頷いた。
「ガレア軍の目的はそういう連中の保護か」
「とりあえず最初の目的はソレね、誘惑魔法を長らく食らっていると後々響くみたいだしね」
 ローナフィオルに対してエレイアは心配そうに訊いた。
「一緒に来られないのですか?」
「うん、ごめんね。 とにかく、ここは私に任せてエレイアたちは連中を何とかして!」
 前向きに言うローナフィオル、エレイアもまた答えた。
「わかりました! こっちの男たちは私に任せてください!  あなたは死体と倒れている男たちをお願いしますね!」
 それに対し、何人かの男たちはとても名残惜しそうに彼女を見送っていた。 だがしかし――
「彼女は彼女で私たちと共に戦っているんです! だから私も頑張ります!  みなさん、よろしくお願いしますね!」
 と、エレイアが言うと、名残惜しそうにしていた男たちの態度はどこ吹く風か、 すごく楽しそうに「はい! エレイアちゃん!」と言ったようなニュアンスでそれぞれ答えていた。 そんな様にイールアーズは再び頭を抱えていた。
「……まあいいか、この際……敵を倒すということなら――」

 そんな中、その様子をカメラ越しに遠くから眺めていた連中が――
「とうとうここまで侵入してくるとは――」
「そんな! あれはメリュジーヌでは!?」
「何だって!? まさか、連中に寝返ったとでもいうのか!? 命令コードはどうしたんだ!」
 その連中は口々にそのようなことを言っていた。
「ドライアスを呼べ! やつに何故このような状態が発生しているのか説明させるのだ!」
 そして、そのドライアスはすぐさま呼び出されると、一番偉そうなやつがカンカンに怒っていた。
「お呼びでしょうか?」
「何をのんきなことを! モニタを見ろ!  これまでずっと大丈夫と豪語していたようだが今はあのようなありさま、どういうことだか説明してみよ!」
 ドライアスは監視モニタを見た。
「ほう、何かと思えばヴィーナス・メリュジーヌ様ではございませんか、なんとも神々しい」
「この期に及んでまだ戯言をぬかすか!」
 お偉方の態度とは裏腹にドライアスは平然としていた。
「ふむ、確かに南の研究所にて、バリアブル・コアの情報にアクセスした記録がありますね」
「南だけではなかろう! 西も! 北も! 東も! 全部、全部からのアクセスがあるとここには記録されている!」
「それはそうでしょう、我々の職務の都合上、 データベースへのアクセスは一般的ですからねえ――」
「そういうことを言っているのではない! やつらはシェトランド人だろう!  それをどういうことだか説明せよと言っているのだ!」
「はて、何を指して問題と言っているのか理解に困りますね。 よく見てください、彼女はヴィーナス・メリュジーヌ様です、 我らが生み出した生物兵器であるヴィーナス・メリュジーヌ、 個体番号はSHCORE-001-VARI-003、”道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ”です。 そして、その近くにいるのはあの女神の隷共…… 今宵もまた鬼人剣を含めた男共をすべて自らの美の奴隷にされたのでしょう…… そう私は認識しておりますがね」
「ドライアス! ふざけるのも大概にしろ! とにかく、あの状況をなんとか打破するのだ!  今回の件についての責任はお前に一任されている、貴様の首がかかっていることを忘れるでないぞ!」
「確かにおっしゃる通り、今回の件については私の責任の下で行っております故、そのようにいたします――」
 ドライアスはそう言うと部屋を早々に出て、部下に漏らしていた。
「ったく、ただの能無しの分際で――これだから学のない無能は困るのだ、 何故あのような者が我らの上に立ち総司令官などという要職に就いているのか理解に苦しむな……」
「まあまあまあ。ですが所長、本当にただの女神様のお戯れなのでしょうか?」
「ふん、まったく……女神様もお戯れが過ぎる。 だが、あの能無しにまともに取り合っていても意味がないのでな――」
「そんな! それなら何とかして対処しないと!」
「その必要はない、すでに手は打ってある。それに、こうなることは予定のうちだ」
「は?」
「ククッ、とにかく、私の邪魔立てするものがいるとなれば、たとえ誰であろうと容赦はせんということだ、 それがたとえ総司令官であろうと女神であろうと、もちろんデュロンドにグレート・グランド、 それからあのディスタードだろうとな! 貴様もそれを覚えておくといい……」
「はっ、はい、わかりました――」
 ディスタード……まさか――