エンドレス・ロード ~プレリュード~

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第2章 再起への誓い

第24節 恐怖のツンデレ美女

 ディルフォードは気が付くと、家の中のソファに寝かされていた……目の前にはあの女――
「うふっ♥ さあディル、あーんして♥」
 女はご飯をスプーンで口の中に入れようと待っていた、男の名前をどうやって仕入れたかはわからないが――
「なっ、なんのつもりだ!?」
 彼はそう訊くと、女は怒り出した。
「”あーんして”っつったら素直にあーんすりゃあいいんだよ!」
 女は彼の口に無理やりスプーンを突っ込んだ! その場は彼女のペース、ディルフォードは参っていた。
「うふっ♥ ねえディル、私が作ったご飯、おいしい?」
 ……拒否したり無視したりしようもんなら間違いなく殺される。 別に野垂れ死ぬのであれば願ってもない相談ではあるけれども、 この期に及んでディルフォードは恐怖感を抱いていた。だから彼はおいしいと答えた。
「あら♪ それはよかったわ♪  さあさ、もう疲れたでしょ? 今日はもう休みましょうね♪」
 女はベンチ引きずり、彼が寝ているソファにくっつけ――えっ!?
「うふっ♥ ねえディル♥ 私と一緒に寝ましょ♥」
 え、えぇ――
「あん? この私が一緒に寝てやろうってのがそんなに気に入らねえってか!?」
 い、いや、そういうわけでは――ディルフォードは困惑していた。
「つべこべ言わず、この私と夜を共にすりゃあいいんだよ! このイケメン男が!」
 女というより、ただの恐怖でしかなかった。 とはいえ、そんなこと言おうもんなら、彼女を拒否しようもんなら、死よりも恐ろしい恐怖が待ち受けているに違いない。 とにかく、とてつもない恐怖を覚えた彼は素直に彼女の言う通りにした。 見た目は完全に美女、エレイアみたくふるまっていれば男受けしそうな感じのいい女だと思うが、 こんな態度を見せるところ、彼個人としても残念でしかなかった。

 しかし、朝起きたディルフォードは彼女の豊満なバストの中で目を覚ました!!?
「えっへへへへへ♪ 万人斬り様も所詮は男ね♪」
 自分は彼女の胸の中で寝ていた……のか!? ディルフォードは冷や汗をかいていた、 万人斬りってことも知っているのか……?
「うふふっ♪ 嬉しいわね、こーんなイケメン男さんが私の大きな胸の中でぐっすりと寝てくださっただなーんて♥  女冥利に尽きるってのはまさにこのことを言うのね♪」
 あ、あの……ディルフォードは悩んでいた。
「ちなみにあんたの彼女とどっちが胸が大きいよ?  流石のイケメン男さんなら女の10人や20人は軽くいるでしょ♪」
 ……いるわけないだろ――ディルフォードは悩んでいた。 それに、質問の内容については答えたくない……。 それでも間違いなくこの女の胸のほうが大きいことは確実……
 そういえば、あの時のエレイアも大きかった気がした、プリズム族の体質のせいだろうか?  そう考えると、プリズム族って胸のサイズが大きい種族ということになるのだろうか?  とはいえ、ディルフォードとしてはそこにはそんなに興味がないためどうでもいいのだが。
 そもそも、プリズム族は基本的に胸が大きいらしいが、それとは対称的にシェトランド人は控えめである。 恐らく種族的な原因があるものと思われるが、エレイアのが大きいのは恐らくプリズム族の体質を引き継いでいるからだろうか。
 ただし、例外として同じシェトランド人でもローナフィオルの胸は大きく、 ディルフォードの印象にも大きく残っていた…… 一部の男どもが酔った勢いでローナフィオルのことを”巨乳の女神様”などといって囃し立てていたのだが、 それを聞いたローナフィオルが頭にきてそいつらを1人ずつ順番に折檻していたっけ…… 折檻にはディルフォードもほぼ強制的に手伝わされていた――そんな怖い思いをしたエピソードである。
 とにかく、ローナフィオルの胸は”巨乳の女神様”と言われるぐらいには大きいということである、 ただし彼女の気の強さはディルフォードでさえ手におえないので本当に”巨乳の女神様”などとは言わないように!
 そして――
「ちなみに大きいのと小さいの、どっちが好き? やっぱりシェトランドさんなら小さいほうがよかった?」
 その問いにも答えたくなかったディルフォード、何も言わなかったら怒られるかもしれないと考えていたが、それは甘かった。
「そっか♪ 甲乙つけがたいってことね♪ つまりはどっちもお好みってことなのね♪  まったくもう、このド変態さん♥ 大きいのがご所望ならここにありますわ♥」
 や、やめてくれ……ディルフォードはいやそうな顔で切に願っていた。
「ということは……昨夜はよく眠れたってことよねえ? まさか、この私に抱かれてダメとか言わないだろうな――」
 うっ、またしても殺意が……。
「いえ、言いません。おかげさまでよく眠れました――」
 しかし、男女が2人で何とかというようなことはなかった、それがディルフォードとしては幸いだったのだろう。
「はぁ? 何を寝ぼけているのよ? プリズム女の巨乳を抱いて寝られてとってもいい思いをしたって言えばそれでいいんだよ!」
「はい! そうです! 貴重な体験をどうもありがとうございました! おかげさまでとても嬉しかったです!」
「あらん♥ ありがと、ディル♥ だからと言ってキスとかしねーからな。」
「え? ええ、そうですね、流石にそれはちょっと――」
「はあ? 私とキスできて残念ってか!?」
「いえ! あなたとキスできなくてとても残念です!」
 しかし、彼女は小悪魔的な態度で舌を出しながら「えへへへへ♪」と言って笑っていた。 もう女というやつはわけがわからん! ディルフォードはパニックになっていた。

 プリズム族の彼女はレヴィーアという名前らしい。何度も言うが、見た目は確かに美人で間違いない、のだが――
「うふっ♥ ねえディル♥」
 美人で間違いない……のだが――
「つべこべ言わず、私と一緒に寝りゃあいいんだよ!」
 理不尽に怒るし、とにかく怖かった。素直に従うしかない。
「ねぇディール♪ 私の大きな胸の中で眠れて嬉しい?」
 またフラグが立った、ただでさえ答えづらいのにどう答えようか――
「う、嬉しいです――」
「大きいのがますます好きになりました?」
「は、はい! もちろんです!」
 もはや脅しに近いものがある。
「ふふっ、あら、そう――じゃあ、あんたから見て私ってどんな? 恋人? 妹? 姉? 母親?」
 なんだその選択肢は。だけど――そうだな、しいて言えば姉というところがちょうどいいだろうか。 不思議と恋愛感情はない、エレイアとは違って。 母親に近いものはあるが、どちらかというと何故か面倒見のいいお姉さんという感じがする――
「じゃあ、私のことは今度から”お姉ちゃん”って呼びなさいな♪」
 と、ディルフォードは即効でフラグを回収するハメになってしまったようだ、どうしよう――
「ねえ、”お姉ちゃん”って――」
 優しそうにそう言う彼女の裏側には殺意がしみだしていた、これは――観念するしかない!
「お、お姉ちゃん、ありがとう――」
 それにはレヴィーアは優しそうな眼差しで楽しそうに答えた。
「うふふっ♪ いいのよ、私のディール♪ お姉ちゃんがいい子いい子してあげるから♪」
 とにかく、ディルフォードはドキドキしていた、他所の女性の胸の中で寝ているからというのもあるが、 それ以上に彼女の存在が怖かったからである。果たして翌日、彼は目覚めることがあるのだろうか。