エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第2章 策士の真骨頂

第7節 自分ペースの特別執行官陣

 リファリウスやリリアリス、さらにアリエーラがクラウディアスにて特別執行官としての職務に就いたばかりの話。
「重鎮はいないような空気を醸し出していたのに、案外いるものね。」
 リリアリスはそう言うと議員の一人がそれについて話した。
「王国制ですからね、決定権を持つのはやはり王ということですよ。 それ以外での決め事は議会での多数決が必須になりますが、今しがたお話した通り――」
 リリアリスは悩んでいた。
「貴族議員の存在――グラエスタ貴族がそのあたり実権を握っているということか。」
 議員は頷いた。
「左様でございますね。 我々のような平民出の議員の話なぞ聞く耳持たぬことでしょう。 特にアクアレア出身の議員などとなると、そこいらにある路傍の石などに等しい存在――」
「また随分と酷い扱いね、手っ取り早く追い出す方法があればいいんだけど――」
 それが後になって本当にあっさりと追い出せることになろうとは夢にも思わなかった2人だった。
「まあいっか、それでも、クラウディアスが現状を保っていられるのはそれでも一応彼らのような存在がいるからに他ならないみたいだし――」
「皮肉にもですけどね、しかもその数も非常に多いことですし――」
 数――リリアリスは確認した。
「確かに、議員の過半数どころか3分の2をグラエスタが占めてら。 これはリアスティン陛下の目指す、王を中心とした民主政治の実現とは言えない政策ね。 これはなんとかしないと――」
「なんとかなるものでしょうか?」
 リリアリスは考えた。
「王を中心とした民主政治……決定権は王にあることを語れば実現は用意よね。」

 そして、行動に移した矢先、いきなり衝突が。
「陛下! いったいどういうことでしょうか!?」
 レンドワール……グラエスタの貴族議員で一番威張り散らしているそいつがエミーリア姫に物申していた。 それには一緒についていたリリアリスが答えた。
「どうもこうも……前陛下においては王を中心とした民主政治、 つまりは民衆のための政治の実現ということで、そのためには国内の格差を是正をすることが鉄則―― ということですよね、エミーリア女王陛下♪」
 リリアリスは楽しそうに訊くとエミーリアは前向きに答えた。
「お父様は国を存続させていく上ではまずは平等であるべきを訴えられています!  だから国を運営していく人たちも各町から平等に選ばれなければいけないんです!」
 そう言われると――レンドワールもぐうの音も出なかった。

 これまではグラエスタ貴族を中心にしてなあなあで議員が決まっていたクラウディアス、 その裁量は貴族たちのみが知る――ろくでもないことは察しが付くが、 今後は各町に選挙区を設けて各選挙区から議員が選ばれるようになったのだった。 ただし、グラエスタ貴族の反発は根強く残っており、話をまとめるまではそこそこに時間を費やした。 とはいっても、王の命令に逆らうことは、それはそれで彼らとしても避けたいところ……。
 そこでリリアリスが出した妙案は、 グラエスタ選挙区に限っては議員定数の範囲内であればこれまでと同じ方法で議員を決めてよいということで折り合いをつけたのだった、 リリアリスとしては恐らくグラエスタ貴族は誰がなってもそんなに大きく変わらないだろうと考えてのことである。
「あいつら、まだひと悶着ありそうね。」
 アリエーラは悩んでいた。
「国を動かしていくのって大変なのに……そんなにいいものなんでしょうか?」
「自分が優位に立つような国の運営にしたいんでしょ、私らにはまったくわからない感覚よ。」
 それに対してスレアが訊いた。
「おたくらにはわからないのか、なんとも欲のない人間だな。 言われてみれば精霊族だっていってたけど、精霊ってそんなもんなのか?」
 リリアリスは答えた。
「それは人によりけり、精霊も同じことね。 ま、でも、そのあたりは私らなんか典型的なもんで、自分が興味があることがとにかく最優先される性格なわけよ。」
「じゃあ、あんたの興味はなんなんだ?」
「私っつったら当然モノづくりに決まってるでしょ。 今だってこうして火入れ用の窯を作るところから始めているんだからね。」
 そんなことしていたのか――スレアは呆気に取られていた。
「じゃあ、アリエーラさんの興味は?」
「彼女が勉強熱心なのわかるでしょ?  ルーティスでやっていたこともクラウディアスに来た目的もそれ。」
「なるほど、知的好奇心を満たしたい精霊とかなんともイメージ通りなお人だな」
「言われてみればそのとおりね。 多分大学教授タイプなのかもしれないわね。」
「……当人には悪いが、”美しすぎる女教授の歴史的大発表”ってまさにその通りにしか思えないな――」
 まったくだ。