エダルニアへの進撃を開始しようとする少し前の話、”天命の刻30”という催しも水面下では動き始めていた、今回はその時の話である。
ララーナとメルルーナ、そしてシェルシェルの3人はクラウディアスの城下町を散策していた。
家族水入らずという感じである。
「それにしてもお姉様、久しぶりですね!」
シェルシェルは楽しそうに言うとメルルーナも楽しそうに答えた。
「シェルシェルこそ、本当に久しぶりね。
相変わらずガレアに出入りしているっていうけど、元気してた? いい男でも作った?
外出る時ぐらい服変えたっていいのに」
シェルシェルは答えた。
「服はねぇ、みんなこれがカワイイって言ってくれるからシルエットはここから変えるつもりはないんだ♪
それにいい男はそう簡単にできないんだよねぇ、だって、リファ様が一番素敵なんだもん!
あんなに素敵な人と肩を並べられる人なんてなかなかいないよ!」
話を聞いてメルルーナも嬉しそうだった。
「確かにリファ様は特別な方よね! あの方に抱かれたら本当に女やっててよかったって思うもの。
もう、彼の為だったら私も何だってするわ!」
リファ様人気は、それがたとえ妖魔であろうと例外なく女性の間ではまさに究極の存在のようである、どうなってんのよ。
しかし、そんな彼に対して恐ろしい計画が――
「お母様! 私たち3人でリファ様を誘惑し、そして最高の幸せを感じさせてあげましょう!」
と、シェルシェルが真顔で言うと、メルルーナが言った。
「いいわねソレ! うふふっ、リファ様には最高の時間を味わってもらいましょう!」
そしてララーナも楽しそうに言った。
「うふふっ、確かにそれはいい考えね。
つまり、私たち3人でリファ様の子供を作って差し上げるのね、
確かにあの方の子供となれば――それはそれは女冥利に尽きるわねぇ――」
……計画の内容が恐ろしすぎるんだが。
でも、リファリウスと言えばこれぐらいのことでは動じないとかどうなってるんだあの男……。
だが、その時――
「あら、なんだか面白そうな計画じゃない! みんなであいつの子供を産むのね! それはそれはどんな子供が生まれるか楽しみ!」
と、3人の背後からリファリウスの姉貴分のリリアリスが楽しそうに言うと、3人はとてつもなく慌てていた。
「おっ、お姉様!? 今の話――」
シェルシェルは訊くとリリアリスは得意げに答えた。
「聞いてたわよ、全部ね。あんなのでよければどうぞどうぞ、いくらでも好きなだけ持ってってくださいな!
それこそもう、2度と自我が取り戻せないぐらいメロメロにして3人のための生ける屍にしちゃってくださいな♪」
そっ、それは――シェルシェルとメルルーナは悪びれていた。
「じょ、冗談ですよ! お姉様――」
「そ、そう、冗談ですよ冗談!」
だが、そんな中、ララーナだけはにっこりとしていた、
「うふふっ、まったく、リリアったらイジワルなんですから♪」
ん? イジワル?
でも、確かに――リファリウスは動じないどころかその手の技が効いた試しがない気がする――
てか、これまでどれだけその手の大茶番を演じてきたことか。
リリアリスによって3人はお城の前まで促されると、
彼女は1人ずつ抱え上げ、5階のテラスへと直接乗り込んだ。
なんだあの人は……と思うものは少なく、またやってんなーと思う人多数という風物詩である。
「相変わらず可愛い番人様ね♪」
「えへへ♪ 可愛いのはプリズム族の標準装備だもんね♪」
リリアリスが楽しそうに得意げに言うとシェルシェルも楽しそうに得意げに返した。
「ふふっ、久しぶりじゃない、色っぽいプリズム・ロード様♪」
「そんな、お姉様にはかないませんわ♪」
リリアリスが楽しそうに得意げに言うとメルルーナも楽しそうに得意げに返した。
「またしてもお母様をこうして抱え上げられるだなんて光栄だわ♪」
「うふふっ、こちらこそ、あなたのようなたくましくて素敵な女性に抱えられることほど嬉しいことはないわ♪」
リリアリスが楽しそうに得意げに言うとララーナも楽しそうに得意げに返した。
「ほんと、素晴らしい能力を持っているわよね、リリアったら♪」
「えへへ♪」
最後に、テラスでその様を眺めながらじっと待っていたフロレンティーナが楽しそうに言うと、リリアリスは可愛げに返した。
その傍らでアリエーラとフラウディアがニコニコとしていた。
リリアリスから話題を振ってきた。
「それにしてもラブリズのまさしくコアとなるお3人が直々にいらっしゃるなんて。
しかもお母様に言及すると、とても忙しくあちこち飛び交っているようじゃないの、
何がどうしたのよ?」
「それにはいろいろとありまして――」
ララーナは軽めに説明すると、リリアリスは頷いた。
「シェトランドの件ね、確かにいろいろと厄介よね。
お母様に言われたように、ディスタードに関しても一応調べたけど――」
それについてフロレンティーナが言った。
「出所ははっきりしていないけど、かつてディスタードにいたエージル司令官ってのがいて、
私らはそいつのおかげでこうなれたってワケなのよ。でも、問題はそのせいで犠牲者が出ていること。
よくわからないけれども、その犠牲の中にはロサピアーナのあるダムサード大陸にあるどこかの国の民族が関わっているそうよ」
ダムサード大陸にあるどこか――そう言われてララーナは頷いた。
「つまりはクレイジアの魔女ですね……。
それにクレイジアといえばずいぶん前に私の特徴によく似た女性がいるという話を伺ったことがあります。
セイバルもダムザード大陸ですし、ということはつまり――」
それに対してリリアリスは地図を出して言った。
「ええ、既に知っているハズだけど、クレイジアはここでロサピアーナがここ、
そしてセイバルの独立領土がここで、クレイジアもセイバルもロサピアーナの隣国ね。」
さらにリリアリスが頭を抱えていた。
「残念ながらクラウディアスとは国交がないどころか仲が悪いみたいだから、手出し不可って感じね。
クレイジアもロサピアーナとは同盟を組んでいるみたいだから、こちらからはどうにもできないわね。」
ララーナは頷いた。
「ロサピアーナとクレイジア……どちらも外の国からの受け入れについては消極的な国のようですので安易に立ち入りはできないそうですね、それは困りました――」
アリエーラが頷いた。
「とにかく、どうやらセイバルにしてもディスタードにしてもそのクレイジアの魔女というのが関係していることは共通しているみたいですね――」