リリアリスはフロレンティーナたちと合流していた。
「これはこれはまーたなかなか贅沢なレッスンね、美人教師フローラ先生とマンツーマンだなんて!
しかもまーた女3人いる中で男1人とかますます贅沢ね!」
リリアリスはイツキに茶化すように言うと、イツキは狼狽えていた。
それに対してはフロレンティーナも狼狽えていた、
フロレンティーナが何言ってもイツキは全く動じていないのに流石はリリアリス、
元々頭が上がらないのだがますます頭が上がらなかった。
「今まで私が男6人の中で女1人だったわけだが――」
と、ハイドラが言うとリリアリスは楽しそうに言った。
「紅一点ってことでしょ? いいじゃない、アイテムで例えるのならまさに高級ブランドのプレミア品って感じじゃない。
私も女一匹で”百花繚乱のリリアリス”とか言われながらエンブリアを縦横断してきたからね、
思い返すと私も実はレアアイテムだったのかも。」
レアアイテム……そんなつもりはないが、なんかそう言われると何となく悪い気はしないハイドラだった。
「女一人ってなるとなんかちょっとお得感があるわよね!
特に紅一点なんて特別よね! この中だとみんな経験したことがあるわけでしょ?」
と、フロレンティーナも楽しそうに言うが、リリアリスは――
「うん、まあ――そうなんだけど、足引っ張るやつばっかりいたってねぇ――」
元々”ネームレス”というそれとはあてはまりにくいフロレンティーナ、
”ネームレス”だらけのそれと組していたハイドラとは違い、
”百花繚乱のリリアリス”は”ネームレス”たらしめる力を用いて他を圧倒していたこともあり、
むしろ不満のほうが多かったようだ。
ところで前述した聖殿の話についてだが、これはリリアリスが何度もよく夢に見る内容なんだそうだ。
彼女は特に話をしたかったわけではないのだが、フロレンティーナが彼女の様子を見てちょっと心配だったので、
リリアリスが思い切って話したのである。
「夢の内容だからね、そんなに覚えているもんじゃないけれども何故か何度も見ているうちに何となく覚えるようになったのよ。
でも、どういうことかしら、あの光景――以前にあったような気がするのよ。」
そんなに何度も見る夢とは――
「それにあの神殿だけど、恐らくこのエンブリアにはないわね。
そう言うことからも”ネームレス”は異世界人だと思うのよね。」
異世界人説についてはリリアリスもリファリウス同様に考えているらしい――いや、もしかしたら彼女が発案したことかもしれないが。
「どんな神殿なの?」
フロレンティーナが訊いた。
「どんなだったかな、エンブリアではないのは間違いないけれども、
それ以外なら3つほど思い当たる場所があるわね。
1つは小さな島国、聖なる島とも呼ばれているところでまさに聖地というところね。」
その話を聞いてハイドラは反応した、なーんかどこかで聞いたことがあるような気がする――
そして2つ目は森の中にある神殿だが、リリアリスはわからないそうだ。
だが、あの夢の話ではむしろ周囲は青い空と広い海が見える場所だったと思うのでその神殿ではないと考えていた。
「で、3つ目は確か半島の先っぽだった気がするわね。
しかも断崖の上にある神殿だから夢で見た光景の条件には合致するし。
で、多分あの神殿が一番条件にあてはまる気がするんだけど、例によってやっぱりよく思い出せないのよね――」
思い出せなければ止む無しか……。
ガルヴィスはシャアードと話をしていた。
「お前の技、間違いなく本物だな」
ガルヴィスにそう言われてシャアードは意表を突かれた感じに驚いていた。
「なんか、そんなやつには見えなかったけど、認めるときは認めてもらえるんだな」
ガルヴィスは真顔で答えた。
「当たり前だ、俺のこと何だと思ってるんだ、俺は別にどっかの誰かさんみたく意地悪なことはしないぞ。
もっとも、そのどっかの誰かさんは女に対しては無茶苦茶甘いけどな」
それはリファリウスのことか、シャアードはそう考えると思ったことを話した。
「いや、多分それは男と女じゃあ考え方が違うからじゃねえか?
男だったら少しぐらい厳しいほうがいいかもしれないが、
女はあまり厳しすぎてもダメな生き物だからな、同じ生き物だと思ったらダメだ、そういう区別なんじゃないのか?」
だが、ガルヴィスは全否定。
「それだけには見えないから言っている。いいか、あのヤローはだな……」
と、リファリウスの悪口を根掘り葉掘り聞かされる羽目になったシャアードである、
言わなければよかったと後悔しても後の祭りである。