リファリウス、そしてカイトと遭遇した後と言えばエンブリスが消滅してパニックになったということが記憶に新しい。
さらにその後に見たこともない魔物が出てさらにパニックになったという話もあったが、それらの魔物はクラウディアスへと……。
と言ってもあそこにはリファリウスが重鎮として控えているのだから、ヤツが何とかしていることだろう、ガルヴィスはそう思った。
それにしてもフェニックシア消滅の折には魔物の話はあっただろうか、
それについてはあまり覚えていなかったガルヴィス、そもそもフェニックシア消滅の折にはその大陸にいたのだから、
魔物がどうとか考えている余裕はなかった。
そしてエンブリスが消えてから1年後、セラフィック・ランドの第3都市であるスクエアが消滅したばかりだが、
ということは次はまさか、第4都市のフェアリシアが!? そんな噂がまことしやかにささやかれていた。
そしてその際、ガルヴィスはルシルメア大陸の中央部にあるルシルメアの街に呼び出されていたのである。
呼び出したのは他でもない、例によってカイトである。
「ったく、わざわざ俺を呼び出すとはどういうつもりだ?」
ガルヴィスはルシルメアの駅の出口で出迎えていたカイトに向かってそうもんくを垂れていた。
「そしてもんくを言う割には呼びかけにきちんと応じてくれるキミもキミだよね」
言われてみればそうなんだが。するとカイトにF・F団の事務所という場所へと促された。
そこにはシエーナとシャディアスがいてどちらも久しぶりに会う顔だった。シエーナが話を始めた。
「ガルヴィスさん、お久しぶりです。
実はあなたに引き合わせたい人がいるので、紹介しようと思いまして――」
シエーナについては1年前にカイトと遭遇した後に少しだけ話をしたことはあったが、それ以来である。
ただ、言っても雰囲気的にどことなくカイトに似ているような感じもあり、ガルヴィスにしてみればどちらと話してもそれほど変わりはない感じだった。
「引き合わせる? 誰だ?」
すると事務所の奥から誰かがやってきた。
「あら? リリアさん、もうよろしいので?」
やってきたその人物に対してシエーナはそう訊いた。
「ええ、いつまでもくよくよしていられないからね。
だからとにかく、彼女のためにも前を向いて進むしかないのよ……」
なっ、何があったのだろうか、言われてみれば確かに、そのリリアという人物の目元は微かにうるんでいた、
悲しい出来事があったような感じを思わせていた。
そして、リリアという人物は態度を改めて話をした。
「あんたがガルヴィス=クラナオスね。
私はリリアリス=シルグランディア、弟分のリファリウスがずいぶんと世話になったみたいね。」
まさかのこの女、リファリウスの姉ってことか!? ガルヴィスは驚いた。
「ううん、言っても記憶がないから本当に血縁関係にあるのかわからないんだけれどもね。」
リリアリスは話をしていた。この女も実は”フェニックシアの孤児”だという。
実際、フェニックシアに現れたがガルヴィスらが現れる前にフェニックシアを去っている。
”フェニックシアの孤児”と言われてもおかしくはない時の人だったが何故かそれを避けてきているという――
言うなれば”隠れフェニックシアの孤児”と言ったところだ。
「何故フェニックシアを去った?」
ガルヴィスは訊いた。
それこそ彼女もまたその当時の姿はガルヴィスら同様に幼い状態だったのだが、それを考えるとなかなかの決断と言えるだろう。
「さあてね、どうしてかしら? 深い理由はないわよきっと。」
特に理由はない感じである。なんだか変わった人物だった――そのあたり、リファリウスとも共通しているようだ。
だが、それにしても――どことなくリファリウスに似たような雰囲気を思わせる彼女、
第1印象もなんとなくそんな感じだが言動から性格的なものも見てみると、かなりそっくりである。
それこそ本当に血縁関係にあるのかもしれないのだが、本人はそれを肯定する事はなかった。
話を続けよう。
「泣いていたようだが何かあったのか?」
ガルヴィスはそう訊くとリリアリスは言った。
「あら、気にしてくれるなんて――怖いイメージしかないのに案外優しいとこあるじゃん。
ちょっとね――スクエアが消滅して……大事なものをあそこに置いてきちゃったから後悔しているのよ――」
それは――何とも言えなかった。だが、大事なものを失ってしまった悲しみと言えばガルヴィスたちにも覚えはあった。
「あんたの中で割り切れればいいんだけどな。
それはそれとして、俺を呼び出したのは?」
リリアリスは言った。
「あんた、あちこち世界を見回っているそうじゃないの、頼もしい限りね。
それで、せっかくだからいろいろと情報をもらおうかと思ってさ、それで話をしたかったってワケよ。」
しかし聞けばこの女、それなりにこの世界を股にかけている気がするのだが、ガルヴィスはそう思った。
”フェニックシアの孤児”なりの能力者、それによってとある場所では”百花繚乱のリリアリス”と呼ばれて恐れられている彼女だが、
どんな情報が欲しいのだろうか、ガルヴィスは首をかしげていた。
それに対してリリアリスは驚きながら訊いた。
「えっ、”百花繚乱のリリアリス”ってまさか、ローアドル大陸?」
「そうだ、そのまさかだ。何かやらかしたのか?」
何かやらかしたも何も――リリアリスはかつてローアドル大陸での出来事、
それはそれはとてつもないパワーで敵を蹴散らしていったということをやっていたのである。
それに対してガルヴィスは話した。
「だろうな、”フェニックシアの孤児”がそれぐらいのことをすればそうなると相場が決まっているようだからな。
俺も以前はトライトで大暴れしたことがあったが、
数か月ぶりに当時の連中と鉢合わせになったら”唯我独尊のガルヴィス”などと呼ばれていろいろと面倒したことがある。
ついでに”フェニックシアの孤児”が揃いも揃ってみんな二つ名付きで呼ばれているっていうオチまでくっついていた。
下手なことはするもんじゃないな」
なんだそれは、シャディアスはそう訊くとガルヴィスは答えた。
まだ、あくまで一部地域に限るが、”唯我独尊のガルヴィス”をはじめとし、
それぞれ”自由自在のシャディアス”、”油断大敵のカイト”、”用意周到のシエーナ”、”不言実行のヒュウガ”などと呼ばれ始めているそうだ。
極めつけは”希少価値のリファリウス”――
「き、希少価値って――」
リリアリスは笑いながら訊いた。
「ふっ、おそらく、ヤツの性格を刺して言っている言葉だろうな」
ガルヴィスもあからさまに面白がりながら答えた。
「あらまあ、盲点でしたね、二つ名付きで呼ばれるほどとなると、いろいろと面倒ですね」
「ふーむ、確かにそれは一切考えていなかったな。以後、行動する際には慎みを持たないと、だね――」
シエーナとカイトはそう言いながら反省していた。
「ってか、自由自在ってなんだぁー! むしろヒュウガの不言実行ってかっこよくねえかぁ!?」
シャディアスはそうもんくを垂れていた。
「でも、私の二つ名が百花繚乱だなんてちょっといい響きね、自重しろと言われたら確かにその通りなんだけれども。
ま、でも、一応誉め言葉として受け取っておかないとね。」
しかし、戦においての百花繚乱……なんだか地獄絵図を展開していそうな光景が繰り広げられていたことは想像に難くなかった。
「それにしてもリファさんとリリアさん暴れ過ぎでは――」
「そうね、これはちょっと気を付けないといけなそうね……」
シエーナの問いにリリアリスはそう答えた。
「でも、まだ一部だろ?」
「一部と言ってもな、同じ調子で暴れていたら数か月後には世界的にすっかり有名人だ」
シャディアスの問いにガルヴィスが答えた。
そう言われたシャディアスは複雑だった。
「自由自在……」