エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

果てしなき探求 第1部 ガルヴィスとリファリウス 第1章 ヴァルジア紛争

第14節 明るい未来

 ガルヴィスは立ち上がり剣を背中に収めると、そこへとある人物がやってきた。 そいつに対してガルヴィスが話をした。
「わざわざこんなところで待ち合わせさせて、俺とヤツを引き合わせたかったからか?」
 そいつは答えた。
「まあ、そういうことだね、仲違いしている関係を修復できないかと思ってさ。 もちろん、こうなることはある程度”予測”していたけれど、 それでもリファリウス氏が絡むと”予測”の正確さが失われるから試すことにしてみたんだけどムダだったようだね。 それに、そもそも向こうはキミに対してそこまで気にしてなく、単にキミが一方的に敵意むき出しな状態。 どちらかというと、あっちはあの出来事のせいでものすごい焦りを感じているって感じだね」
 それに対してガルヴィスは言った。
「焦っている割には余裕の態度なのが気に入らねえ、どうして両手に華なんだ?」
「別におかしいことじゃないよ、両手に華と見てしまうからいけない、物事の本質をきちんと見極めるんだ」
「やつの本質は見た目通りだ、いつもチャラチャラしてやがる、それ以上でもそれ以下でもない」
「やれやれ、そんなんじゃあ先が思いやられるねえ――」
 ガルヴィスの物言いにそいつ――カイトは呆れていた。

 ガルヴィスは改めて話した。
「ところで、たったこれだけのために待ち合わせか?」
 スクエアの港にたどり着く前、連絡船の中で寝ていたガルヴィスだが、 起きた時に何故かここに来ないといけない感じがしていたのである。 以前にも似たような感覚に囚われたことがあり、それはカイトとシエーナのいたずらだったことがわかり、 その時は2人に怒鳴りつけていたことがあるガルヴィス。 そう言うこともあってか、今回のこれもカイトの仕業だとすぐに気が付いたのである。
 ガルヴィスの問いにカイトは話した。
「クラウディアスに行くつもりなんだろ? あそこは今やリファリウス氏のお膝元も同然の状態だよ」
 そう言われたガルヴィス、耳を疑っていた。
「何故やつが?」
「話は簡単さ、リファリウス氏がクラウディアス開国の立役者の1人だからだよ。 ついでを言うと、クラウディアスの重鎮の一人として君臨してしまっている、 あの国の担い手が足りていないところもあってか、その役を買われたみたいだね。 フェニックシアでのこと、流石に覚えているだろ?  あの策士ぶりには舌を巻くほどだ、もはやこの私でも手に負えない。 たまたま氏の策士っぷりが”見えてしまった”こともあるけど―― それがどういう計算でどういうロジックで組み立てた計画なのかはまるで見当もつかないレベルだ、お手上げだよ。 ちなみにグレアード軍からルーティスを守ったディスタード帝国の将軍というのもリファリウス氏ってわけさ。 少なくとも、氏がこの辺りを均してくれているおかげで世界平和が広がっていくっていう寸法なのは確実さ、未来は明るいね!」
「だが、やつはリセネリアさんを救えなかった――」
「キミもいい加減にしたらどうかな? 確かに彼女が亡くなったのは悲しいけれども、 それは決して氏だけの責任ではないのは重々承知しているだろう?  八つ当たりはよくない、そろそろ大人になるんだ」
 そう言われたガルヴィスは肩をがっくりと落としていた。
「それは分かっている、わかっているんだが……あいつを見ると無性に腹が立つ――」
 カイトは呆れ気味に言った。
「確かにあの人にはそういうところがあるね、男性陣にはすこぶる受けが悪いんだ。 一方でそれとは打って変わって女性人気は異常なほどだ。 一見すればなんだか不思議な感じだけれども、 それこそ、物事の本質をきちんと見極めれば、実は至って普通の光景に見えてくるものさ」
 なんだよそれ、ガルヴィスは呆れていた。
「で、今やウォンター帝国っつーのがなくて、 ディスタード帝国ってのが出張っているって旅の途中で聞いたんだが。 それとあの野郎との関係は?」
 ガルヴィスはそう訊くとカイトは話をした。
「ディスタード帝国は4つに分かれていてね、 リファリウス氏はその中でアール将軍を名乗って一つの管轄を収めている。 表向きはディスタード帝国ガレア領というご立派な名前だけど、 その裏の姿はディスタード帝国に対抗するスパイ組織といった感じさ」
「ふん、やつらしい行動だな」
「氏はまさに策士だからね、単じゅ……キミと違って複雑な構造の思考回路の持ち主だから、 自分探しの手法がキミとはまるで違う」
 自分は単純……そう言われかけたことをすぐに察知したガルヴィスだったが聞き流した、 あいつと比べられたらそう言われても仕方がないと認識しているからだった。
「お前も自分探しの旅をしているのか?」
 ガルヴィスはそう訊くとカイトは考えながら言った。
「いや、そんなことしたところで何の意味もないよ。 というか、それは実はリファリウス氏自身もうすうす感じている、 自分にかかっている妙な出来事といい、それを気にする以前の話だってことをね」
 どういうことだ? ガルヴィスは訊くとカイトは答えた。
「それこそまさに物事の本質を見極めろっていう話になってくるわけだ。 なーに、答えはすぐに見えてくるさ、そう遠くない未来にね」
 相変わらず訳の分からないやつ、ガルヴィスはそう思った。 こいつの性質としては同じことを何度も言っている場合は訊いたところでまともな返答はない、そう思って諦めることにした。