クラウディアス連合国が提唱するセラフ・リスタート計画、
セラフィック・ランドの復活を願って実行される計画だがロサピアーナ軍によるクラルンベルへの軍事侵攻の本格化により一時中断、
デュロンド経由でのクラウディアス連合への働きかけによりクラルンベルの解放を実行したが、その作戦自体はとりあえず成功した。
しかし現時点ではその効果のほどは不明、
ロサピアーナからの声明などのアクションもなく素直に諦めたような感じでもなさそうだった。
また、そのクラルンベル解放作戦の最後にロサピアーナによるデュロンドへの直接攻撃として大型破壊兵器を差し向けられたが、
これをクラウディアスの特別執行官である4人の女性陣によって難を逃れることに成功している。
ところがそれによって頼みの綱の4人の女性陣が負傷し、数日間意識がない状態が続いていた――
クラウディアスのシステム・ルーム、ヒュウガは毎日のようにとあることを実行しようと端末を操作していた。
「ダメだ、さっぱり応答がないな。マジでどうしたんだろ――」
それに対してティレックスは悩んでいた。
「ティルア軍の応答はなしか。
一応、大使館を通じてデュロンド国にも掛け合ってみたけど、
ティルア軍はもとよりデュロンドの自分のところの軍からも連絡が付かなくて事実確認を急いでいる状況だって聞いたな――」
ヒュウガは言った。
「ああ、それはわざわざ悪かったな。
やっぱり正規ルートからの問い合わせは違うな、そうか、デュロンド側でも状況がわからないのか――」
ティレックスは頷いた。
「正規かそうでないかの違いはない気がするけどいずれにしても応答がないということでしかないし――。
で、それでなんだけど、デュロンドからのお達しでクラウディアス側でも何か情報があったら相互に共有したいってことで、
もし何か都合がいい連絡手段があれば教えてくれって言ってたみたいだぞ」
ヒュウガはティレックスのほうに向き直って言った。
「マジで? それならそれで面倒もないんだがデュロンドって俺のメモリーにはインプットがないんだよなぁ――」
ティレックスは頷いた。
「そこは安心してほしい。
ティルアというかグレート・グランドの親交国で、アルディアスとも親しい国だ。
前々からクラウディアスとも友好関係を築きたいって言ってたんだが事あるごとに何かしらの事件が起きてな、
毎回計画倒れで困っているらしい」
ヒュウガは悩みながら言った。
「事あるごとってなんだよ、第一何か起きたんだったらそれこそヘルプを求めてくればいいじゃないか」
ティレックスは首を振った。
「いや、あの国はエンブリア教に対してはかなり厳格な国でな、
単にセ・ランドと仲良くできるからって言うのとはなんか違うみたいなんだ。
つまり、要は宗教国家っていうところで、
宗教の問題が自国内でどう落としどころをつけるか決めないと外国とは容易に関われないとかそのレベルで慎重に対応しているほどなんだよな」
そう言われてヒュウガは思い当たる節があった。
「なるほどな、それでデュロンドは対アルディアスについては例の敬虔なエンブリアヌスがいるおかげですぐに落としどころをつけられたと、そういうわけだな」
ティレックスはため息をつきながら言った。
「世の中、何が幸いするかわからないよな――」
それに対してヒュウガは端末で今の内容を入力しながら言った、TODOリストのようである。
リリアリスらが不在のため彼はそれを記録しているらしい。
「ま、それをどう進めるかについては俺が決めることじゃないからとりあえず保留にしておこう」
ティレックスが言った。
「ヴァドスやエミーリア姫、カスミさんなどにも言ってきたんだが、
とりあえずヒュウガに言ってくれって言ってたからな――」
ヒュウガが驚きながら訊いた。
「は!? なんで俺!?」
ティレックスは頭を抱えながら言った。
「頼みの綱のクラウディアス特別執行官様がそろいもそろってダウンしているから。
リファリウスもいないみたいだしマジでどうなっているんだ?」
ああ、そういうことか――ヒュウガはそう言うと一つだけ提案をした。
「一番偉い人がいないということで臨時の手段ということだったら俺のほうから提供できるぞ。
どうやらデュロンドはネット回線が使えない国みたいだから、
安全な通信を提供のもとでこちらから一台端末を用意してチャットで連絡を取り合うっていうことができるぞ。
通信を第三者に傍受されないとかそう言ったレベルでのやり取りが可能だから、それで検討してもらえるのなら――」
そう言われるとティレックスは立ち上がった。
「わかった、それで一旦提案してみることにするよ。
ただしリリアさんたちがいないからあくまで臨時の手段だってことで訊いてみるな」
そう言いながらティレックスは去ると、ヒュウガはティレックスが去った後を見ながらニヤッとしていた。
「なーんだあいつ、なんだかんだ言って結構しっかりしてんじゃねーか。
アルディアスのルダトーラ・トルーパズ団長ティレックスとか言われて揶揄われていたみたいだが、
もうすっかりイタについているみたいだな」
それから数日が経ち、今度はとある御仁が訪問してきた、それは――
「お母様! ようこそいらっしゃいました!」
と、エミーリア姫が言った。ララーナである。
彼女は例によって可愛らしいミニスカートというプリズム・ロード・スタイルと、
彼女のトレードマークである市女笠を被っていた。
そして市女笠を脱いだ彼女は言った。
「あら、相変わらずカワイイお姫様、わざわざ城門前でのお目見えだなんて嬉しいわね」
何故か城門前、それもそのハズ、エミーリアはお城の庭の手入れをしていたのである。
その作業中での出来事だった。
それに対してエミーリアは嬉しそうに言った。
「私も嬉しいよ、お母様!」
エミーリアはララーナに懐いてきた。
「あらあら。それよりリリアたちに会いたいのですが――」
そう言われるとエミーリアは態度を改めて言った。
「お母様! ぜひ、ぜひお姉様たちに会ってください!」
エミーリアはララーナを5階にある彼女らの部屋へと促した。