それから1週間が経ち、3人はクラウディアスの公式サイトができたことで喜びを分かち合っていた。
「やっぱり業者の手が入るとそれらしくなるわね」
フィリスがそう言うとリリアリスが言った。
「私ゃ業者かい。」
「似たようなもんでしょ、どう見てもプロの犯行です。
それよりも今のクラウディアスらしい華やかな装いのページってのがいいわね」
すると、アリエーラが端末を操作しながら言った。
「ここにクラウディアス特別執行官からのお知らせページがあるんですよー♪」
そう言いながらリンクをクリックすると、アリエーラは驚いていた。
「えっ!?」
それについてリリアリスが答えた。
「やっぱりクラウディアス特別執行官の顔として、先にアリの顔が出ないことにはと思って、順番を変えさせてもらったわ。
アリが先、私は後、最後に私ら2人が仲良く並んでいる写真という配置に変えてみたのよ、どう?」
それは――アリエーラは内心複雑だった。
「アリってば、そっと私の方を先にするんだもん、やっぱりここはアリが先であるべきでしょ?」
それに対してフィリスが頷いた。
「確かに! やっぱりアリこそが先に表示されるべきね!」
フィリスにまでそう言われ……アリエーラはそんな2人を前にして話に呑まざるを得なかった。
「フィリスも入ったらどう?」
「えっ、私? でもまあ……悪くはなさそうね」
鎖国体制にあったクラウディアスだったが、国交回復に対して本格的に取り組むことを宣言し、
手始めにセラフィック・ランドとルーティス、そしてグレート・グランドとの国交を正常化することを目指した。
「国交正常化の範囲を制限しているみたいだが、何か理由でもあんのか?」
グレート・グランドから大使としてやってきたクラフォードが訊いてきた。
それに対してティレックスが答えた。
「アルディアスは表向きはディスタードのガレア領になっているからな、
ルシルメアもガレアとは同盟を結んでいる、
クラウディアスとディスタード本土軍は敵対関係だから、そのあたりを懸念して見送りにしているんだよ」
「でも、その割にルーティスならいいっていう決断なのは?
ルーティスだってガレア軍の特区だろ? 確かに特区ということなら別って考え方もできそうだが、
だからといってそれはそれで大丈夫なのか?」
リリアリスが答えた。
「確かに、ルーティスは中立国家という歴史的背景があって、
ガレアは特区に――特別独立行政区として指定した地域、つまりは政治には一切関与しないのよ。
だから今回の決断についてはルーティス独自の決断ということになるわけよ。」
そのあたりはガレア軍は甘いと言われる要因でもあるわけだが――
「でも、ルーティスの位置は南方の国にとっては戦略的な要所にもなりやすい場所だ、
この貴重な拠点を抑えることでセラフィック・ランドはもちろん、アルディアスもディスタードさえも攻められてしまう。
そしたらそん次はルシルメアまでもが攻められてしまう、そういう状態で成り立っているのがこの辺りの性質だな」
と、そう説明したのはまさかのあのバフィンスだった。
「ま、そんな感じのことを俺の戦友が言ってたぜ。
中でも特に、南方の国の中でも厄介なのは故ウォンター帝国だな、
あそこは大昔に解体してそれっきりって感じだが、当時の連中はあちこちで、
この辺り一帯にも勢力を伸ばしてクラウディアスとかを脅かしていた勢力だからな」
そんな強大な国が――バフィンスはさらに話を続けた。
「クラウディアスは流石に抑えられなかった。
それこそ、ウォンター帝国の衰弱・解体の原因はクラウディアスとの戦争に負けたことが原因だからな」
やはりクラウディアスはそれほどまでの強国、
多くの国を侵略して豊富な資源を以てしても敵わなかったというのか、何人かはそう思いつつ、続きを聞いた。
「実際のウォンターの解体は戦争に負けたことによって内部勢力が分裂したのが原因だ。
早い話、そこいらに旧ウォンターの手のものが散らばる結果となっちまったってワケだ。
それが後々に世界大戦を生んじまうきっかけにもなるわけだが――
ルーティスを襲ったっていうバランデーア、ハライアル、グレアードにアレンヒルと、連中も故ウォンターの一味って感じだしな。
だとしたら――ディスタード帝国としてはなんでもいいからルーティスは守り切れっていう見方が強いのかもしれんな」
ということはつまり、ディスタード側としては手段を選ばず現状を維持しろということになりそうだ。
「でも、実際にはディスタード本土軍としては、
ルーティスがクラウディアス側と同盟を結んだりなんかしたらどうなんだろうな、
それはそれで見ものだぜ」
それに対してリリアリスは得意げに答えた。
「実はね、それは狙ってやったことなのよ、
クラウディアスと仲良くさせることで揺さぶりをかけることにしてんのよ。
そもそもガレアがルーティスを特区にしたのはルシルメアと同盟を結ぶ条件になっていることだから、
ディスタード軍がルシルメアに出入りしやすくなったことで本土軍もそれなりに恩恵を得ているワケだし、
となると、本土軍は泣き寝入りするしかなくなるわね、
そしたら、本土軍としては新しい手を考えなければいけないことにもなるわよね。」
つまるところ、リリアリスが最初に言ったように、
ディスタード本土軍に揺さぶりをかけるためにルーティスがこのような行動に出たのだという。
ディスタードがクラウディアスに侵攻してきた以上、
これまで沈黙を守ってきたクラウディアス側もはっきりと意思表示したということである。
「なるほど、つまりはこれがクラウディアスの反撃の狼煙というわけだな」
クラウディアスはそう言って納得していた。
話し合っていた4人はそのまま会議室へとやってきた。
だが、会議室の各席にはノート端末が――
「ど、どうなってんだ?」
クラフォードは驚きながら言うと、リリアリスが得意げに答えた。
「クラウディアスの国交正常化の裏側で、ルーティスやセ・ランドと共同してデジタル国家を推進しているワケよ、
もちろん、裏側だからガレアも参入している状況ね。
これからは情報化の世界になるから、これぐらいの”文房具”が使えないことにはねぇ。」
「俺、こういうのはニガテなんだが――」
すると、バフィンスがイスに座り、端末の電源を入れながら言った。
「俺もニガテだが、どうすれば使えるかぐらいはわかるぜ!
アトラストのやつに言われて最低限メールぐらいはチェックしてっからな!」
そう言うと、クラフォードも椅子に座って端末の電源を入れていた。
「ちっ、クソジジイに負けてられねえな――」
その様子を見ながらリリアリスは得意げな顔をしながら見守っていた。
「ほら、ティレックスもちゃんと動かしなさいよ、ユーシィに負けるよ?」
「は? ユーシィも使えるのか?」
「ゴメン、そもそも負けてたわね!」
「うっ……見返してやる――」