エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

あの日、すべてが消えた日 第1部 黄昏の章 第1章 黄昏の日

第2節 もう一つの黄昏時

 フェアリシアという名前の島である通り、森も”妖精の森”と言われていた。 名前こそ少しメルヘンチックだが彷徨い人を惑わす妖魔の森とも呼ばれていた。 地元民なら多少は慣れていて、ある程度の距離までなら入る人もたまにいるようだが、 あまり奥に行くと流石の地元民でも脱出は難しいとされている。
 クラフォードはその心配をしたのだが、シオラは何気ない感じで答えた。
「大丈夫よ、だって、昨日だってここまで来たんだから!」
 それには流石に他の全員がびっくりした。
「えっ、ちょっと! シオラ一人でここまで来たというのか!?」
 ティランドは心配しながら言った。
「えへへ……ごめん、一人で来ちゃった♪」
 彼女はそう言うと流石にみんなに怒られていた、なんでそんな危険なことをするのかと。 とりあえず、こってりと絞られた彼女だが、
「でもまあ、それでもなんとか帰ってこれたみたいだし、 そのおかげでこんな景色も見れたんだ、いいことにしようか」
 と、ティランドは優しく言った。それに対してアトラストは異論があったようで、
「おいおいおいおいおい! そんなんでいいのかよ!?」
 と、当然のようにもんくをぶつけてきた。しかし、それをウィーニアが遮った。
「いいのよ、ティランドが言うんだから。 ティランドが言うんだから仕方がないじゃない、なんたってシオラのことが大好きなんだから、止めたって無駄でしょうよ♪」
 と、彼女は楽しそうに言うと、クラフォードがそれに追随して意地悪そうに言った。
「ああ、いつものことだ。 相手がシオラなら絶対にデレる、ティランドはそういうやつだ」
 それに対し、ティランドはムキになって言い返した。
「ばっ、ばか! そんなんじゃない! シオラが無事だったのなら大丈夫だろうって意味だよ!」
 そんな彼に対して周囲は完全に冷かしていた。 とはいえ、それだけティランドがシオラに対して好意を寄せていることは誰の目から見ても明らかなほどであり、シオラ自身も察していた。 それに対し、シオラのほうもティランドに好意を寄せていた。

 その場所は”黄昏の丘”と呼ばれているらしいが、 実はセラフィック・ランド創世神話でもフェアリシアに登場する場所ではあるのだが、 存在についてはまったく確認されていなかった。 それなりに文明が発達し、こんな未開の地にも調査の手が届いているとは思われるのだが、 ここがその”黄昏の丘”であることを知ったのは後のことだった。
 それにしてもまだこんな景色が存在しているだなんて、 それはそれで奇跡的なことなのかもしれない、未来永劫遺していくべきなのだろう。
 あの日以来、彼らはほぼ毎日のように”黄昏の丘”へと足を運んでいた。 シオラが「行きたい!」というとティランドは賛同し、女性陣もほぼ話に乗ってくる。 そして仕方なしに、一応未開の地という場所へ行くという都合、 心配になってくるほかの男性陣も一緒に行こうという話になっていった。 そんな感じで毎日のように、彼らは”黄昏の丘”へと行っていた。
「素敵よね、ティランド!」
「そうだね、シオラ!」
 ほとんど2人の世界の状態だった。
「やれやれ、これから2人のデートだなんて、私たちお邪魔じゃない♪」
 ローナフィオルは呆れた風にそう言った。
「そうだけど、でもこんな光景めったにお目にかかれるもんじゃあないわ。 私も兄貴にこの景色を見せてあげたいわね」
 ディアナリスはそう言った。兄貴とはあのティレックスのことか。
「確かに、こういう場所があるっていうのはまさに奇跡だな。 願わくばこの光景のまま変わらずにいてほしいもんだ――」
 クラフォードはそう言った。 世界は少しずつだが戦争へと傾いていおり、それこそ少し前まで大きな戦いもあった、 だから――ここまで戦争の火の手が広がるのは避けるべきなのだ。