エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第196節 自然を操りし技術

 あの会議の後、レイリアとディアナ、そしてフラウディアとフロレンティーナの4人で話をしていた。 そこへクラフォードがやってきた。
「何してんだ?」
 レイリアが答えた。
「御覧の通り、話し合っています。ご一緒にどうです?」
「何の話? これからの話か?」
「ええまあ――それもありますが、これまでの話も必要と思いましてね。」
 それならいいだろう、そう思ってクラフォードはその輪の中に交わろうとすると、 隣にいたディアナの姿にとても驚いた。
「なんです?」
「べ、別に――なんでもない」
「ふふっ、クラフォードさんって面白い方ですね!」
「あんた……俺のこと揶揄ってるだろ」
「ええ、もちろん♪」
 クラフォードはまた頭を抱えていた、これで何度目になるだろうか、クラフォードの悩みは尽きない。

「で、どうするんだって? ヘラッセルも南側、ウォンター帝国はそこからさらに南側、 具体的な状況についてはほとんどわかっていないのに、今から何をどうするんだ?」
 レイリアは答えた。
「私たちはこのまま身を隠し、クラウディアスからいったん離れます、 そして、このままルーティス方面へと向かいます、ここまでは先ほどの話の通りですね?」
 そこまではさきほどの話で認識を合わせたばかりだが、問題はそこからだった。
「で、そのままルーティスに行って連中を抑えるって言うのは簡単だが、 それだけで抑えられるもんなのか?」
 レイリアは頷いた。
「ルーティスには立ち寄りません。 ヘラッセル軍はそれよりも南のほうからやってきますので、ルーティスは通り過ぎます。」
 クラフォードは呆気に取られていた。
「南? 大丈夫なのか?  それこそ、連中のホームグラウンドとまではいわないまでも、土地柄的に連中のほうが有利な地域になるんだと思うが――」
 確かに、敵地に近いというだけでなく、クラウディアス連合軍には情報がないハズの場所になるため、 クラフォードの心配はもっともである。
 それに対してレイリアは答えた。
「仰る通り、クラウディウスやセラフィック・ランドなどの住人にとっては外国、ましてやグレート・グランドのクラフォードさんなら尚のことだと思います。 ですので、こちらとしてもきちんと対策を取らなければ行けない状態と思いますので、まずはティレフ・ガーデンのあるライオニットの東側へと参りましょう。」
 ティレフ・ガーデン? クラフォードは首を傾げていると、次第にそれらしいものが見えてきた。だが、それだけではクラフォードの疑問を払拭する材料にはならなかった。 すると、ディアナが質問した。
「あれはライオニット大陸ですね? あそこに今言ったティレフ・ガーデンというものが?」
 レイリアは頷いた。
「ティレフ・ガーデンはガレア軍が設立した拠点です。 とにかく、ここを拠点としてへラッセル軍の元を断つ作戦を考えて行くことになるでしょう。」
 そんな拠点いつの間に――クラフォードは呆気に取られていた。 まあ、ガレア軍の活動も幅広く展開しているということでもあるわけだ。

 すると、レイリアはその場で船を止めた、そこは大海原の真ん中である。
「なんだ? こんなところで停めてどうするんだ?」
 ティレックスはそう聞くが、クラフォードがまたしても頭を抱えている光景を見て嫌な予感しかしなかった。
「なんだ? どうしたんだ?」
 スレアはクラフォードに訊いた。
「見てりゃわかる、まったく、とんでもないこと考えるやつだ――」
 すると突然、海が荒れだした――
「なんだ!?」
 船が大きく揺れだすと、プレイ・ルームでふて寝していたイールアーズが驚いて飛び出してきた。
「ああ、そう言えば忘れていました。 みなさん、初動は結構揺れますので、海に投げ出されないよう適当なところに捕まっていてくださいね。」
 淡々と話すレイリア、もはや恐怖にしか見えなかった。
 そして、船の近くは大荒れ、潮の流れの激しさはもとより、大きな渦が発生することになった。
「おいおいおい! これで敵の行く手を阻んだのはいいが、俺たちは大丈夫なのか!?」
 スレアはそう叫ぶと、レイリアはニッコリとしながら答えた。
「ええもちろん。でなければ、このシステムがついている意味がないです。」
 まったく、こんなことを平然と、どうなっているんだこいつは――
「もちろん、この辺りに誰もいないことを想定してやっていることです。 それについてはレーダーから得られた情報を通して確認済ですので、問題はありません。 これにより、ヘラッセルの後続勢が動けなくなったのも確実でしょう。 もしくは、ライオニットを西から大回りしなければいけなくなったので、 いずれにせよ、足止めしたことになりますね!」
 ライオニット大陸の東にはセレント大陸があった。 ライオニットはガレア軍が既に抑えている土地で、セレントはまた別の勢力の支配下にある土地だが、 クラウディアス軍にとっては特段問題となりそうなところではなさそうだ。
 今回、ヘラッセルの軍はライオニットとセレントの海峡を利用してクラウディアスへと進撃してきているわけだが、 その海峡付近に大渦を発生させたため、敵は海峡を渡るのが困難となったのである。 横に長いライオニットとセレントを迂回して進撃する場合、 セレント側を迂回する場合は確実に領海侵犯となる海域を侵入する必要があり、 それを避ける場合はかなり大回りを余儀なくされ、ヘラッセルとしては現実的なルートにはなりえない。
 対してライオニット側を迂回する場合のほうがさほど手間にはならないのだが、 今回は先んじてアール将軍が手を打ったため、ヘラッセル側としては苦しい迂回となることは確実である。
「で、ヘルメイズ軍に手をまわしてティレフ・ガーデンでブロックか、用意周到だな」
 と、クラフォードは感心しながら言うと、レイリアは答えた。
「よくお分かりになりましたね、 というより、クラフォードさんは大体の会議に出席されていますから、ご存じなのは当然でしたね。 ええ、ティレフ・ガーデンにはヘルメイズ軍を駐留させています。 ご存じでない方のために付け加えますと、ライオニットには本土軍とつながりのある無国籍小隊がおり、 ガレア軍によって既に攻略済、その地をティレフ・ガーデンへと改名し、ガレア軍が占領しています。 そして、ティレフ・ガーデンの地にヘルメイズ軍を置いて、 他に無国籍小隊がいないのかを含めてこのあたりの調査をお願いしているのです。」
 つまりはティレフ・ガーデンでヘラッセルやウォンターの残党をブロックできたのは偶然だったということに……。
「それより、ここで大渦作り続けている間、俺たちはこのまま動けないのか?」
 イールアーズはそう訊くとレイリアは答えた。
「いいえ。船の動力は大渦に取られるため、パワーは落ちますが、このままクラウディアスに戻って作戦を練りましょう。」
 離れてもしばらくは大渦のパワーを維持し続ける恐るべき船、 そして、この女――いや、リファリウス? リリアリス? の思考回路自体に恐るべきものがあった。

 そのままルーティスへ一旦上陸すると、ナミスが現れた。
「ヘラッセルの軍はしばらく北上できない状態が続いています。 ブロック作戦はうまくいっているようですね!」
 それに対しレイリアが答えた。
「海峡を封鎖しましたので、位置的にルーティスを縦断するルートも取れなくなっています、 それでも、ルーティスへの脅威が取り除かれたわけではありません、何とかしないことには――」
 すると、ナミスは一行を促した。
「ひとまず、港へ――」
 港? どういうことだ? 何人かが首をかしげていると、レイリスは答えた。
「”マダム・ダルジャンII”は大渦を発生させておくためにあの場に停泊させておきます。 ですから、変わりの船が必要となります。」
 代わりの船、あのマダム・ダルジャンに”II”を付け加えたところがまさに答えを言っているようなものとも思えるのだが、実際には――