エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第4章 夢と希望と現実と絶望と

第95節 区別

 それからさらに数日後――アクアレアにはとあるものが建設される法案が通り、既に完成間近を迎えていた、それは――
「ティレックス!」
 アクアレアにいるティレックスのもとにユーシェリアがやってきた。
「なんだよ、リリアさんのところに行ったんじゃなかったのか?」
 ティレックスがそう言うと、ユーシェリアは元気よく反応した。
「それもそうなんだけど、ティレックスっていつもボーっとしているから様子を見に来たんだよ♪」
 いつもボーっとしてて悪かったな、ティレックスはそう言うと話を続けた。
「そんなことよりも、何しに来たんだ?」
 ティレックスは訊くとユーシェリアは答えた。
「用事は2つあるんだけれども、1つはアルディアス大使館がどのぐらいできているかなと思って見に来たんだよ」
 そう、クラウディアスではこれまで以上に外交問題に力を入れるため、 アクアレアに各国の大使館を置くことを始めたのである。 そこにはクラウディアスならではのいろいろと問題が潜んではいるけれども、 それでもある程度は審査も通り、実現に向けて加速していったのである。
「親父たちの悲願といえば悲願だもんな――」
 ティレックスはそう言った。 クラウディアスとアルディアスは仲が悪いわけではないが、これまでの大戦の関係で外交については棚上げになっていた。 特にクラウディアスにおいては国家元首が去って鎖国体制を敷いている状態、 アルディアス側もクラウディアスとは親密な関係にあったルダトーラの長が不在となったせいで、 両国の関係は結局現状維持のまま、話が進展しなかったのである。
 そして今回、アルディアスの大使局長としてオルザードが抜擢されると、 彼は興奮しながらアクアレアのアルディアス大使館の仮設舎へとやってきていた。
「なんだかすごく楽しそうだな――」
 ティレックスが言うとオルザードは興奮しながら答えた。
「だって、クラウディアスですよ! 見ましたか、あの美しい光景を!」
 それは知っている、なかなか見飽きない素敵な光景のクラウディアスだが――オルザードはさらに話を続けた。
「クラウディアスと言えばエンブリス教にとっては大事な聖地のひとつです!  この地はエンブリス神が遣わしたとされる双子の姉妹、 初代クラウディアスのエミーリア=クラウディアスとレミーネア=クラウディアスの2人が築き上げた国なのですよ!  そうです、つまりここの住人たちはまさに神の末裔とも言われる人々の住まう国!  そのような国に来れてこれほど嬉しいことはありません!」
 確かに、見方を変えればそう言うふうにも言えるかもしれない、 神話では初代クラウディアスは創世時代のセラフィック・ランドからやってきたとも言われているぐらいだし。 だが――オルザードはなかなかぶっ飛んだキャラだった。

 ティレックスとユーシェリアの2人はオルザードを連れてクラウディアス城へとやってきた。
「あっ、あなたは!」
 オルザードは興奮しながら言った。その人物はリリアリスだった。
「やっ、また会ったわね、面倒くさいエンブリアヌスさん。」
 リリアリスがそう言うとオルザードは答えた。
「面倒くさいって言わないでくださいよ……ですが、私がここにいるのはあなたのおかげです!  本当に感謝しかありません! おお、神よ! 偉大なるエンブリスよ!  やはりあなたはこの私を見捨ててなどいなかった!」
 本当に面倒くさい――リリアリス、ティレックス、ユーシェリアの3人はオルザードの様を見ながらそれぞれ頭を抱えていた。

 そして2人はその夜、お城の寝室にて――
「ねえティレックス、起きてる?」
 ユーシェリアは話しかけるとティレックスは反応した。
「どうしたんだ?」
 2人は話をし始めた。
「ティレックスって私が拉致された後もやっぱりずっとトルーパーズの仕事をずっとやってたの?」
「そうだな――確かに、それぐらいしかなかったな――」
「そっか、私が拉致されてもティレックスだって結局戦いに身を投じていたんだから私とそんなに変わんないんだね――」
 ユーシェリアはため息をつきながらそう言うとティレックスはそのセリフに意外なことに気が付かされたのだった。
「そう言われてみればそうだな、他の生き方があるなんてこと、微塵も思わなかったな。 言っても、アルディアスの徴兵制は義務任期も3年程度なのに俺もユーシィも5年以上は従事しているはずだ。 そう言うことを考えると――ディスタード本土軍なんていうのはもっと自由のない世界だったんだろうな。 ムチで支配されている世界で生きていたフラウディアさんとかフロレンティーナさんとかもいたわけだしな――」
「そう――だね、ちょっとカワイソウかな――」
「カワイソウか――確かにそうだな。ユーシィの場合はガレアだから天地の差だよな」
「うん! ガレアはとってもいい場所なんだよ。もちろんそれはティレックスも知ってるよね!」
「あそこは特別だ。 そもそもディスタード本土軍が目の敵にしているクラウディアスとも関係がある、 ”敵の敵は味方”っていう言葉があるけれども、まさにそれだよな」
 すると、ユーシェリアは考えていた。
「なんか、変なの。どうして敵だとか味方だとか、そういう区別ができたんだろう――」
 それに対してティレックスは――
「戦争なんか起こそうなんて考えるやつは大体自分の力を見せつけたいだけだろ、権力という名の力をな。 いかに自分が偉いか、それを知ら締めさせたいだけなんだろうな。 そのせいで直接は関係しない一般民も巻き込んでまで争いがしたいだけなんだ、 本当にくだらないよな、戦争って……早くなくなってしまえばいいのにな――」
 ティレックスは悔しそうに言った、 彼が一番思ったのはやはりマウナ軍との戦いで母国のアルディアスに一時でも裏切られたことだった、 それが残念でならなかったのである。
「敵とか味方とか、そういう区別がなくなるといいね――」
 ユーシェリアはそう言った。まさにそう望むばかりである。