シルファーヌは帝国軍の軍勢に対して巨大竜巻を呼び起こした!
「あんたたちは立ち入り禁止!」
さらに竜巻に向かって突っ込んだ。
「クラウディアスから出て行け!」
竜巻の中で力をため、一気に力を解放すると大爆発を起こし、
ものすごい風の力で帝国兵すべてを吹き飛ばした!
「なんだあのシルファーヌってやつは。あんな力を解放して、使い手のほう、大丈夫か?」
しかし、リリアリスは依然としてそのまま平静を保っていた。
「どうなっているんだ、この女――」
それに対し、シャナンは思い出しながら言った。
「あっ、そういえば先ほど、精神力を奪われた軍団と遭遇しましたね――」
リリアリスは敵の精神力をごっそりと奪っていた、
相手を攻撃するための余剰エネルギーは大量にストックしているようである。
そしてどうやらここで、その力を全部発揮するつもりらしい。
それが表すかの如く、シルファーヌはさらに続けて自らの風の剣を用いて帝国軍の軍艦を狙い定めた。
「おい、まさかあのまま敵の船まで沈める気か!?」
その”まさか”だった、スレアがそう言うと、
シルファーヌはそのまま巨大な風をまといながら海上のほうへと突撃していった。
「逝け!」
今までシルファーヌの暴れぶりを静観していたウンディーヌ、いよいよ動き出した。
「さて、私の出番ですね。出でよ! 大海の化身、リヴァイアサン!」
なんと、精霊召喚の”獣”であるハズのウンディーヌが召喚魔法を発動!
大海の化身を呼び出し、クラウディアス近海に大津波を巻き起こした。
そして、大津波の中へとウンディーヌも突撃した。
「大いなる海原よ、我に力を与えん!」
さらに渦潮を発生させ、海上の敵すべてを巻き込んだ!
そのままアクアレア東沖は、強烈な台風と渦潮に見舞われ、しばらくの間、時化の状態が続くことになった。
敵の作戦はそのまま失敗に終わるどころか、部隊自体が完全に壊滅していた。
「ま、ざっと、こんなもんかなっと。」
今までトランス状態になって祈りをささげていたリリアリスがそう言った。
「そうですね、これでしばらくは敵も大人しくなることでしょう――」
同時にアリエーラも立ち上がった。
東の海にはシルファーヌとウンディーヌの姿は既にいなくなっていた。
その後、一行はお城へと帰還し、祝勝会を開いていた。
「さしづめ、”風精の舞”と”水精の舞”と言ったところでしょうか、恐ろしい力です」
シャナンはリリアリスとアリエーラの2人と話をしていた。
「”風精の舞”と”水精の舞”か、確かに、的確な表現方法ね。」
「ええ、わかりやすいですね!」
「ただ、一体、あの極意をどこで?」
もちろん、2人はわからなかった。
相手の精神を奪う技も風の刃を一斉に発射する技も、
高位の召喚獣を呼び出す術はもちろん、精霊召喚でさえもどこで修得したものかまったく覚えていなかった。
ただ、わかっているのはいずれの極意も使えることのみ。
中には使えることは間違いないけれどもちゃんとした使い方まで覚えていないものも多く、
そういったものに限って自らの命を危険にさらすような技も多く、自らに制限をかけているのだという。
特に、今回の精霊召喚についてはそういったものの中の一つではあるけれども、
クラウディアスという土地柄による補助があったことでようやく成しえた大技であったとリリアリスは言う。
つまり、精霊召喚は今の彼女らではクラウディアスにいる間しか使えない極意ということである。
「お姉ちゃんたち上位の精霊族。
上位精霊ここにいるの不思議、この世界に何か異変起きてる、そう思う――」
リリアリスとアリエーラの間を割って入ってきたカスミがそう言った。
「確かに、そうかもしれないわね。
セラフィック・ランドの一件はもちろんだけれども、
そもそも私らの記憶がないっていうのも気になるところね、言われてみれば上位の精霊族かもしれないし、
でも、どうして上位の精霊族だったんだっけとも思うし。
とにかく、私らを取り巻く環境――いえ、私らなんて言うのは氷山の一角で、
本当は誰しもに当てはまることなのかもしれない。」
リリアリスがそう言うと、アリエーラが言った。
「確かに――なんだか世界全体があらぬ方向に傾いている感は否めないですね。」
それに対してエミーリアが興奮しながら言った。
「さしづめ、リリアお姉様とアリエーラお姉様はそのために使われた正義の使者だったりして♪」
そんな、私が正義の使者だなんて――アリエーラがそう謙遜していると、リリアリスは調子よく言った。
「だとしたら、アリは勝利の女神様ってわけね。
勝利の女神様っていうと、たいていは超美人だったりするからまず間違いないわね♪」
だからそんなことは――アリエーラは再び謙遜しつつ、リリアリスに言い返した。
「勝利の女神様なら私なんかよりもリリアさんのほうこそ適任なのでは?
超美人ならリリアさんの美貌に敵う者はいませんし、それに勝利に導く女性ってことで、
まさに適任だと思いますけど?」
それに対し、エミーリアがなおも興奮しながら言った。
「どちらのお姉様も勝利の女神様! お姉様たち、綺麗に舞って敵を倒していたんだよね♪
いいなー、私ももっと近くで見たかったなー♪」
エミーリアに引き続き、こちらの方も興奮しながら直訴してきた。
「リリアお姉様! 私を弟子にしてください!」
それは何と、レミーネアだった。
似たようなお転婆タイプのバトラーである彼女、リリアリスのような人はまさに憧れの存在だった。
「そうそう! リリアお姉様って、こんなに美人なのに、超強いですよね!」
エミーリアは興奮しながら言った。
「ふふっ、美人とか言われても、流石のアリには負けるわよ。」
「ですよね! リリアお姉様も素敵な方ですけれども、
アリエーラお姉様って美しさに関しては次元が違う感じがするんですよね!」
次元が違う美しさって――エミーリアにそう言われたアリエーラ、
そこまで言われたら苦笑いしてお茶を濁すしかなかった、本当に私って何者――