あの後の処理については、アリエーラらハンターたちに対しては特に何も指令がなく、お役御免となった。
ガレア軍の圧倒的な強さにより、バランデーア軍の解体も早く、バランデーアの本土からも軍事主義的な流れは急速に低下した。
ルーティスに集まったハンターたちの上陸拠点にて、ハンター全員と、シャトがその場で待機していた。
「それにしても――私にあれほどの能力があるとはな――薄々感じてはいた、
かつては”手練れのシャト”と呼ばれていた私の腕、まさか、大軍隊を圧倒するほどの能力を持っているとはな――」
シャトは自分の右腕と左腕をまじまじと見つめながらそう言った。
「そして――その力はアリにもあるというの? あのリファリウスにも――」
シャトの話に続けてデュシアがそう言った。
「私、本当に何者なんでしょうか――まさか、あれほどの敵の数を――」
「まあ、あなたたちはそもそもその前に戦車もやっているっていうしね――」
シャトがそういうと、デュシアが指摘した。
「戦車――確かに、それを考えると、あのエイジってやつもそうなるわけか――」
デュシアはさらに話をした。
「だけど、あのリファリウスってやつ、気に入ったよ。
話は聞いたけど、まさか、そうだったなんてね、それじゃあ、アリとは恋仲にならないわけだ。
男受けは悪そうだけど、つまりはそう言うことなんだね、面白いじゃないか、
強いは強いけど、全然そういうふうには見えないし。アリとも仲がいいのも頷けるよ」
それに対してアリエーラが答えた。
「そうなんです! でも、まさか帝国の将軍をやっているだなんて、驚きです!
もちろん、あの人のことですから、何か考えてやっているんだと思いますけどね!」
シャトが言った。
「私も最初に知らされた時はびっくりしたけど――分かっていれば気が楽ね。
でも、アリが心配するような無茶なことは尽きなさそうね、私からも注意しておくね」
「はい! リファリウスさんには是非にすぐに休むようお伝えください!」
そして、ハンターたちはディスタード側で用意した船に乗ってルーティスを発った。
船には他に、シャトも乗船した。
「あら? いいの? ガレア軍は忙しそうなのに――」
デュシアは訊くと、シャトが答えた。
「ええ、私は非番なのよ、本来は。だから将軍にも休んで来いなんて言われてね」
「休んで来い、じゃなくて、リファリウスさんも一緒に休むべきなんじゃないかと――」
と、アリは心配そうにそう話を続けた。
そして、ルーティスはあの後、ディスタードによって占領され、ガレア領となった。
「中立国家ルーティスを守るための苦肉の策というわけか、なるほど。
政策は以前からの中立国家の体制を維持、懸念材料の学園の思想についてもこれまでどおり。
入国についてはバランデーアみたいなのが現れることを懸念して取り締まりを強化することになったけれども、
ルーティス学園の復興を主軸に運用していくってわけか、あの将軍ならそのあたり問題なさそうね」
デュシアが新聞を読みながらそう言っていた。ルーティスはガレアが守ることになったようだ。
「ただのバケモノではないようだね、あの将軍も、アリも、シャトも」
アリエーラはバケモノで定着したようだ。
「そうよ。美の化身というバケモノさ」
それはちょっと……アリエーラは顔を赤くしていた。
そんな話をしている中、ハンターズ・ギルドの所長がアリエーラを呼んだ。
「アリエーラさんはいるかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「キミに対して、”アリエーラさんの親愛なる風使いさん”を名乗る人から直接の依頼が来たよ」
ハンターの仕事には通常窓口と大型窓口のほかに”裏口”経由での依頼もあった、
表沙汰にはできない要人からの依頼や、特定のハンターを指名する場合に利用される方法だけれども、
裏口は料金は割高である。
でも、それを圧してまで依頼してくる人物、それに、”アリエーラさんの親愛なる風使いさん”ということはつまり――
「アリ、よかったじゃあないか! これでいよいよクラウディアスに行けるね!」
と、デュシアが言った。
「えっ、なんで知っているの?」
所長は戸惑っていた。それは、デュシアでも知っているに決まっている。
あの戦いの後、リファリウスにはクラウディアスに行きたい件に関する話をしたのだ。
それに対し、リファリウスには策があるというから、それを期待していたのである。
そして、その話がいよいよ進展することとなった。