そう、”邪悪なる者”はこの封印世界からの脱出動機と、
そして自らが持ち得る邪悪なる野望は――女神エンプレス・アヴァリスティ様によって消えてしまったのだった。
何故なら――”邪悪なる者”は男の体を得てしまったがために彼女のエモノでしかなくなってしまったからだ。
彼女のエモノとなった以上、”邪悪なる者”はもはや彼女なしでは生きられなくなってしまったのである。
これがあのエンプレス・アヴァリス=シルグランディアが用意したアヴァリス改良型の封印システムの全貌である。
だがどうだろうか、不思議なことに”邪悪なる者”は、これまでの支配欲よりも彼女によって満たされる快楽をとり、そして彼女に無我夢中である。
もしかしたら”邪悪なる者”は最初からこれを求めていたのかもしれない、世界を陥れる存在故の虚しさ――
それを彼女という存在によって埋められたのかもしれない。
しかも、自らの欲望の中に潜んでいるお気に入りの女の子が自ら迎えに来ているのである、
女の子自身は女神エンプレス・アヴァリスティ様だが。
ただ……かつてはシルグランディア女を貶めた結果にできた性欲モンスターに対し、
今はそのモンスターに対して自らがハマってしまったという大きな誤算……なんて皮肉なんだろうか。
もはやこれは女からの手痛いしっぺ返しに近いものを感じる。
とはいえ、今後も世界の悪なる者があらわれ、そして時の英雄たちによって討たれると、
そのたびにその悪のお気に入りの女の子が迎えに来てこのようなことを未来永劫し続けるのだろう。
このシステムを設計するにあたり、
あのエンプレス・アヴァリス=シルグランディアが自らのあの”アヴァリス・シンボル”の大半をシルグランディアの系譜から吸収していった。
そして、自らの精神はシルグランディアの系譜の者から独立させ、今後は女神エンプレス・アヴァリスティ様として未来永劫生きていくことを選んだのである。
さらに、女神エンプレス・アヴァリスティ様は以前の種族特徴と変わってはいないが、
そもそも封印世界内での出来事であるため生命のサイクルには全く干渉しない。
例え数多の男が生まれようと同じ女神エンプレス・アヴァリスティ様が生まれようと、
封印世界内での出来事なのでその外には全く影響を与えない。
そして、彼女はあくまで性欲モンスターであるためそれ以上の意味を持つ存在ではない、
彼女は性欲さえみたせればそれ以外のことはなんだっていいのだから。
ただ――世界は悪なる者たちからの被害から免れられることは事実だ、
”邪悪なる者”は”女神エンプレス・アヴァリスティ様”という、”永遠に逃げたくなくなる監獄”から出て行く理由がなくなったからだ。
これだからシルグランディア女って怖いよな。自らに潜在していた神話系的な欲望構造すら利用するのだから……。