再び精霊界にて――
「シルグランディアはどこへ行った?」
また別の精霊がそう訊いていた。
「カルス、いたのか。シルグランディアを見なかったか?」
彼はシルグランディアと出くわすととんでもないことを言っていたハズだが――
「ああ、先ほど見たぞ、見たのだが……その際のことは全く覚えていないのだ。
気が付いたらやつは既にその場にいなかったのだ――」
と答えた、覚えていない? するとそこへ――
「おお、ダルタニスもいたのか。シルグランディアを見なかったか?」
ダルタニスは頷いた。
「ああ、見た、見たはずなのだがあの後何があったのかはさっぱり覚えていないのだ――」
なんと、こいつまで!? するとそこへ――
「うん? あいつはクライアスだな? お前、シルグランディアがどうなったかわからないか?」
そいつの姿を見たカルスはそいつにそう訊いた。
「シルグランディア? ああ、あの女なら精霊界を出て”アトレーニア”へと向かったハズだぞ。
その後、”ウロボロス”との戦いに移行し、すべてが終わるのだろう?」
クライアスはそう言った、そうなのか、最初にシルグランディアについて訊ねていた精霊は納得していた。
「なるほど、気のせいか……?」
どうしたのだろうか、カルスは訊いた。
「いやな……なんていうか、何か妙なことが起きている気がするのだ。
それこそどう説明したものだろうか……」
それに対してクライアスは考えつつ話した。
「ウロボロス復活の兆しが起きているせいでは? それゆえか、あちこちで綻びが出始めている……
シルグランディアはそのようなことを言っていたようだぞ」
カルスは考えた。
「そうか……それを信ずるよりあるまいか……」
そしてそのままクライアスはその場を去っていった。すると、最初の精霊が訊いた。
「やつは一体何者だ?」
カルスは答えた。
「天命の精霊クライアスというらしい。
そんなヤツいただろうかと思ったが、最近新たに現れた存在らしい――」
そう言いつつカルスは去った。だが――残された最初の精霊は悩んでいた。
「クライアスだと? はて、どこかで訊いたような名前だな――」
クライアスはそのまま精霊界にもある穴倉のようなところへとやってきた。
「入るぞ――」
彼はそう言いつつ穴倉へと入った。
周囲は穴倉という通り真っ暗だが、その中央に精霊が1人ぽつんと存在していた。
「ふっ、相変わらずだな、人間界の情勢にも精霊界の情勢にも興味を示さず、
ただひたすら己がために研究を続けているとは――」
クライアスはそう言うと相手の精霊は言い返した。
「貴様はなんだ? 邪魔をするな、あっちへいけ――」
クライアスは気にせずそいつのいる場所へと近づいていた。
「ふっ、まあいいではないか――」
だが――
「聞こえなかったのか? 邪魔だと言っている。
他のことなど私の知ったことではない……私にはやらなければならんことがあるのだ、
それを邪魔だてしようものなら――」
それに対してクライアスは臆せず話を続けた。
「貴様のやろうとしていることを当ててやろう。
その方陣は少し間違っている、正式にはそこはトライアングルでなければ完成せん。
それから……もう一つ貴様が完成させようとしている方陣だが、
それを発動させるにはアーティファクトほどの力が必要となる。
あとはそうだな、”ユグドラ”についてだが……」
言われた相手の精霊はクライアスに対して驚いており、身構えていた。
「な、何故そのことを……!? 貴様、一体何のつもりだ!?」
クライアスは首を振った。
「貴様のやろうとしてることは手に取るようにわかるぞ、無論、その結果何がどうなるかについてもな――」
そう言われてさらに身構えている相手の精霊――
「貴様、何者だ!? 一体、何を知っているというのだ!?」
クライアスは再び首を振った。
「案ずるな、我は貴様の味方だ、それについては安心するがよい――」
相手にしてみれば何を安心しろとといった感じだが。
「味方だと? そんなものは要らん、私に味方するものは――」
「そう、確かにその通りだ。だから我の言うことを聞き入れるがいい、と――そう思っただけだ。
そもそも我はただ、貴様のやっていることを見届けに来ただけだ。
ただ……できることなら一つだけ忠告しておこうというだけのこと、
それさえ伝えられればあとは貴様の好きなようにするがよいだろう……
貴様がやろうとしていることがかなえられれば私はそれでも満足だ――」
ますます妙なやつ……精霊はクライアスを警戒していた。
「貴様……この私がやろうとしていることをわかってて言っているのか?
貴様は高位の精霊、知っているのなら――」
「我にとってはそれそのものが目的、ゆえに貴様のやろうとしていることは我にとっても有益なことなのだよ。
第一、貴様も高位の精霊だろう? もっとも……そのような立場など忘れて目的のためにすべてを捧げていればそんなことも考えぬか。
まあよい、先にも言ったように忠告だけしておこう。
貴様がやろうとしていることだが……残念だがそれは失敗する」
なんだと!? 相手は憤り気味にそう言うとクライアスは頷いた。
「そう急くな、肝心なのはここからだ。
だが、それは後の世で少なからず、確実に影響を与える、だから失敗については必要経費と考えるがよい。
しかし、後の世ということならば……あとはわかるな?」
そんなクライアスの態度に対して相手は驚いていた。
「何故そんなことを……」
クライアスは首を振った。
「我のことは心に留めておく程度でよい。
いずれわかること、だが……我の成すべきことは既に終わっている、後は事の成り行きを見守るのみ――
貴様の行いもまた、我の予定のうちの一部でしかないのだからな――」
そう言いつつクライアスはその場から去っていった。
残された精霊は素直に従うことにした。
「ふん、まあ……いいだろう、私の野望を果たさんため、その忠告には素直に従おうぞ! フハハハハハハ!」
どちらの精霊もやばいやつだった。
「そうだ……それにより、新たなる運命が切り開かれる……それこそがこの世界の天命にして”理”というものだ――」
クライアスはそうつぶやいていた、こいつ一体……