ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第2章 名もなき旅の序章

第47節 無限に広がる大宇宙

 ということで、早々に下山していた一行。 ディウラとリシェルナも同行していた。
「同郷の者とはなんとも心強いことだな」
 フレアは嬉しそうに言うとバルファースは漏らしていた。
「ちっ、面倒な女が増えたもんだ」
「あら! 随分なご挨拶ですね! 海賊崩れさん!」
 ディウラは楽しそうに言うとバルファースは呆れた態度をしていた。 なんか、仲がよさそうだな――そんな様子を見てリシェルナはにっこりとしていた。

 少し前、一行は例の”白妙の森”付近の休憩所へとつくと、 フレア、ディウラ、そしてリシェルナの3人は白妙の森方面へと向かって歩き出し、話をしていた。
「どうしたのです?」
 ディウラはそう訊くと、リシェルナは話を始めた。
「さて、ここならいいでしょう――。 ディウラさん、そろそろお話をする時が来たようです――」
 えっ、何を? ディウラは疑問に思っていた。
「なんとなくでしかないのですが、私にはわかります。 あなたは――この世界にとって必要な存在となるハズです」
 な、なんだって!? なんで急にそんなこと!? ディウラは焦っていた。
「どうしてかは私にはわかりません。 ただ――なんだかそんな気がしてならない、その程度のものと思っていただければいいと思います――」
 なんとも適当な……ディウラは悩んでいた。
「随分と適当な答えねぇ……。 でも、これまでも賢者様の導きでいろいろとことを成し遂げてきたんだから心の片隅にでも置いておくわね」
 いいのかそれで……フレアは悩んでいた。
「リシェルナはこんなことでウソを言うような娘じゃあないし、賢者様がそうだと言ったらそうなんでしょう。 それがなんぼのものなのかはともかく、だったら私は私にできることをするまでよ。 無論、そう言われたからって何も肩の力を入れてまで何をする必要はない、いつも通りにやっていくだけのことよ」
 そう言われ、リシェルナはにっこりとしていた。
「流石はディウラさんです♪ 前向きですね♪」
「ふふっ、当然よ♪ こうじゃなければ私じゃないわね♪」
 ……なるほど、これは確かに許嫁と結婚して何某かをするだけの優雅なお嬢様というタマでは終わらない人だな――フレアはそう思った。
「ということで物は相談なんですが、フレアさん――」
 リシェルナは改まって言うとフレアは言った。
「今回の旅にディウラを同行させてほしいということか?」
 リシェルナは頷いた。
「察しがよろしいですね、フレアさん、いえ――”アルマ=フラノエル”の子孫、フレア=フローナルさん……」
 ん、フラノエルのってまさか……! ディウラは驚いていた。
「面倒だからほかには黙ってくれるとありがたいが……」
 もちろん! ディウラはそう言うと話を続けた。
「でも、”アルマ=フラノエル”って? 確か、教えに登場するのは――」
 フレアは頷いた。
「教えに描かれているのは”エルフェリア=フラノエル”、彼女はアルマの子だ。 アルマは世界が創造される刻において大きな役割を果たしている、私はそのような彼女の直系の子孫なのだ」
 そうなのか。
「私がこの地でこうしているのも私自身の血がそういった経歴をたどっているような特異的な身の上故の者だと思ってもらえればいいだろう」
 確かに、教えの上でのフラノエルもなんとも勇猛果敢な精霊様として描かれている、 彼女もまたそうであるがゆえに精霊界から頼まれているのだろう、ディウラはそう思った。
「お願いします、フレアさん!」
 リシェルナは頭を下げて言うと、フレアは訊いた。
「そうか、グランディスと言ったな――”真理”にはたどり着いたのか?」
 どういうことだ? すると、リシェルナはこう答えた。
「いいえ、私はまだまだ未熟者ですから、それに至る存在だなんておこがましいにもほどがありますよ。ねえ、ディウラさん?」
 彼女はにっこりとした顔で答えた。
「リシェルナさんは”無限に広がる大宇宙”からそれを見つけようとしているのですよ」
 リシェルナもにっこりとした顔で答えた。
「だって、この地になければ探すところは他にないですからねぇ♪」
 確かに、そう言われてみればそれもそうだ、”無限に広がる大宇宙”か――。

 そして……相変わらずの賑わいを見せているヴァナスティア門前町、 あまりの雑多具合に嫌気がさしていた一行は早々に船へと乗り込んだ。
 途中、リシェルナがドミナントに寄りたいというのでその町で彼女を降ろすと、 彼女に見送られ、一行はそのまま東へと船を走らせ、バンナゲートへと急ぐことにした。
 こうしてカイル、フレア、ザード、パティ、バルファースとディウラの6人は旅を続けるのであった、 果たしてこの先には何が待ち構えているのか、その真理は”無限に広がる大宇宙”にあるのだろうことは想像に難くない――