ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第2章 妖艶なヴィラネシア

第17節 妖艶なヴィラネシア

 ライズは――気が付いたら、目の前にいる魔物が既に倒されていた。
「えっ、こ、これは一体――」
 一緒にいた女が答えた。 「あら、何を言っているのよ、あなたが倒したんじゃなくって?」
 この女は!? ライズは驚いていた。
「ふふっ、つれないわねぇ、さっきからずっと一緒にいるじゃないの――」
 俺が倒したって? ウロボロス・ドライブを? どうやって!? ライズは困惑していた。
「とにかく倒したのよ、もっと喜びなさいよ、ヴァナスティアが無事だったのよ?」
 そうだ、ヴァナスティアは!? ライズは我に返り、後ろを振り返ると――街は無傷だった。
「ふふっ、そうよ、あなたは聖殿都市を守った英雄様なのよ」
 自分が英雄?
「そう、私のヒーロー様よ。さてと、そろそろ私もお暇しちゃおうかしら?」
 待て! まだ話がある! ライズは彼女を引き留めた。
「その様相、もしかしてあんた、あれだろ――”妖艶なヴィラネシア”っていうのはあんたのことだろ?」
 恐らく間違いなさそうだが、ライズは改めて訊いた。
「ふふっ、私がそのヴィラネシアだったらどうするの?」
 緊張が走る! しかし、ライズは――
「いや、どうしたらいいのかなんて考えていなかった。 それでも、あんたのおかげでこいつを倒せたことは事実んだろう、だから、その――ありがとうな」
 ヴィラネシアは”七魔性聖”では強豪組と言われた存在、勝てる見込みもないだろう。 しかし、今回は敵としてではなく、このウロボロス・ドライブという伝説の魔物を倒すため味方してくれた、 そこは感謝すべきところだった。
 しかし、だからと言ってヴィラネシアはかつて―― いや、そもそも”七魔性聖”と呼ばれ、世界の脅威として君臨しているのだ。
「相手が”七魔性聖”である限り、あんたは俺の敵であり続ける、 あんたたちはそれだけのことをしてきたんだ。だけど、今回は違うみたいだから――」
「なぁに? 違うから見逃してくれるとでもいうのかしら?」
 そ、それは――それを”七魔性聖”の強豪組に言うのはさすがに身の程知らずにもほどがあるだろう―― ライズはためらった。しかし――
「ふふっ、いいのよ別に。こんなイケメン相手に戦ったら流石の私だって躊躇しちゃうわ。 だから、ここはそんなあなたに免じて見逃してもらうことにするわね! じゃあねん、私の素敵なナイト様★」
 ヴィラネシアはそう言いながらウインクを飛ばしつつ去って行った。 ……なんだったんだあの女は。あれがヴィラネシアなのか、ライズは困惑していた。 ”七魔性聖”と呼ばれ、世界の脅威として君臨しているハズのあの女、 本当にあれがそのヴィラネシアと呼ばれる存在でいいのだろうか? 謎は尽きなかった。
 とにかく、ヴィラネシアはなんだかご機嫌な様子で登山道を下って行った。

「何かあったの!? ライズ! 大丈夫!?」
 入れ違いにフェリンが駆けつけてきた。 とにかく、ライズは自分は大丈夫だったことを話したが、 彼はウロボロス・ドライブよりはヴィラネシアを相手をして疲れを感じていた。
「あれ、ウロボロス・ドライブが――」
 ライズは事の一部始終を――といっても倒す過程については一切覚えていないが、 とりあえず、ヴィラネシアと協力して倒したことをフェリンに伝えた。
「そうなんだ、ヴィラネシアがいたのね。それじゃあ彼女のこと、何かわかった?」
「いや、全然。ウロボロス・ドライブで手いっぱいでそれどころじゃなかった」
「でも、一緒にやっつけてくれるだなんて、ヴィラネシアっていい人なんじゃないの?」
 ライズは全力で否定した。
「とんでもない! ヴィラネシアは、ヴィラネシアは――」
 ヴィラネシアはとにかくとんでもなく邪悪な存在――ライズはそう言い切ろうとした、しかし――
「そう、私のヒーロー様よ。さてと、そろそろ私もお暇しちゃおうかしら?」
「ふふっ、いいのよ別に。こんなイケメン相手に戦ったら流石の私だって躊躇しちゃうわ。 だから、ここはそんなあなたに免じて見逃してもらうことにするわね! じゃあねん、私の素敵なナイト様★」
 その時の彼女と言えば、ライズが思い描いている彼女の存在とは似ても似つかない存在だった。 だが、倒さなければいけない対象であることには変わらない、だからどうすべきか――ライズは思い悩んでいた。

 妖艶なヴィラネシア、見た目通りの妖艶さで異性を一人残らず虜にする魔性の女、 ライズの中ではその術中にハマっていたのかもわからないけれども、最終的には御覧の通り無事だった。 でも、あの女を許すことはできない理由が彼にはあった、何故なら――
「あなたのお母さんを殺したの!?」
「そう、俺は――あの時最後に泣く泣く母を見捨てて逃げるしかなかった。 ところがその後に、母のほうへ振り向くと――」
 そこにはあの女が、ヴィラネシアが……母がいるその場所にライズのほうを向いて立っていた。 その傍には――ライズはその時に母が横たえている姿が今でも忘れられない。そこにヴィラネシアが――
「そう、なんだ――」
 フェリンもがっかりしていたような感じで返事をしていた。 いや、ウロボロス・ドライブを倒したんだ、だからここはそんな空気になるところではないハズだ、 そのため2人は空気を一新、前向きにヴァナスティアへと進むことにした。
 とはいえ、ライズがあの魔物を倒したとなるとほかの人々が黙っていないハズなので、 2人はその場をさっさと逃げるかのように退散した。
 ところが、せっかくヴァナスティアへ来たのに残念ながら目的である賢者ワイアントは不在であることが発覚した。 ライズはあまり宗教なんて信じないタイプだし、フェリンも御殿には特に興味がないらしく、 軽くヴァナスティアの感動的な白い街並みを回った後、その足でさっさと下山し、再びフィルフォンドのホテルまで帰ってきた。
 そして、エロ猿ライズが再びフェリンのワナにかかったことは言うまでもない。