運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第103節 こうして彼女は伝説となった――

 時は戻り、フィレイナは部屋のベッドの上で目を瞑っていた。 これまでの出来事が走馬灯のようによみがえる――幸せな人生だったようだ。
「はぁ、なんていうか……我ながらいい感じに人生を送ったんじゃないかしら。 私ってば本当に幸せ者よね。」
 そして――目の前に見えるフェレストレイアの大自然豊かな風景――
「本当に綺麗な星ね、本当に素敵――」
 フィレイナはそのままにっこりとしていた――

 フェルメリアとシェリア、そしてディルナとララミィはフィレイナの元へ行こうとしていたが、 途中でテレイズに会い――彼女は首を振った。
「一人にしてあげて、これは彼女の願いだから――」
 えっ、それというのは――
「彼女は言ってた……自分が最期の時は心配せず、 自分の子供たちにも死に際のことは伝えないでって…… 子供たちにも頭を下げてまでお願いしていたことなの――」
 最期だって!? どうして!? シェリアは訊いた。
「それは……彼女が戦士だからよ。 戦士だから、戦いでは常に死と隣り合わせ―― 言ってしまえば常に死に際、だからそんなに心配されたらむしろ困るって。 だから――」
 しかし、4人は彼女を振り切ってフィレイナの元へと急いで行った。 残されたテレイズはその場で崩れ、ただ一人泣いていた――。

 フィレイナのいる部屋、4人は恐る恐る入った。
「フィレイナお姉様――」
 彼女は窓の外に広がるフェレストレイアの大自然を眺めているようだ。
「お姉様! ここは素敵な惑星ですね!」
 シェリアは嬉しそうにそういうが――彼女からは反応がない――。
「えっ……?」
 不審に思ったディルナ、フィレイナの脈を確認すると――
「まさか――」
 フェルメリアも……
「そ、そんな……そんな――!」
 ララミィも……
「お、お姉様! お姉様ぁ!」
 フィレイナ=シルグランディア、 銀河連邦フェルドゥーナ宇宙歴698年3月11日、 彼女は惑星フェレストレイアの美しい大自然に包まれながらこの世を去った――。

 フィレイナの葬儀、それはそれはもうこれでもかというぐらい盛大なぐらいに執り行われていた。 フィレイナとしてはもっと慎ましくしめやかに送ってほしいということだったが、 フィレイナの面倒見の良さについてはもはや折り紙付きと言わんばかり、 多くの者たちが見送りしないでいるわけにはいかなかったのである。
 これまでのフィレイナの功績より、 トラジアータの一部であるフェデネールの首脳陣、 並びに周辺惑星の者たち――世界崩壊の兆しから宇宙事業から手を引いて久しい彼らもまた、 あのフィレイナがということならとすぐさま駆けつけてきたのだった。
「すごいな……彼女、ここまでの大人物だったのだな――」
 カルディアスは唖然としていた。それにはアグメイアが答えた。
「ええ、それこそ少し前まではフェレストレイアの半分は彼女の手で持っていたようなものだからね――。 それだけに、当時を知る人たちの間では彼女は伝説の人とも呼ばれるほどだったわ――」
 伝説の人が亡くなり、そして彼女はまた伝説となったのだった。 以後、彼女はフェレストレイアの伝説の戦士となり、 さらにシルグランディアよろしく伝説のエンジニアとなり、 そして……フェレストレイア女王メフィリアの側近である、 永世フェレストレイア女王メフィリア代行としての地位を授かることとなった――。