運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第73節 フローナルとフェルメリアの過去

 フローナルとフェルメリアの過去――
「あなたがフローナルさんですか!?」
「ん? ああ、そうだが……悪いがこれから仕事なんでな……」
「仕事……ですか? どんなお仕事なんです?」
「どんなって……これからイベントの打ち合わせがあるんだ、 それで仕事相手を待っているんだ」
「仕事相手? どんな方なんです?」
「そいつは秘密だ」
「秘密なんですね! それじゃあ私も秘密にしておきますね!」
「は? どういうことだ?」
「だって! フローナルさんとお仕事するんですからね!  それなら私も秘密を守らないといけませんよね!」
「えっ、おい、まさかあんた――ラブラブらーにゃのフェルリンちゃんってあんたのことか!?」
「はい! その通りです! 私が”ラブラブらーにゃ♪”のフェルリンちゃんです! お願いしますね♪」
「え……な、なんだってー!? そのフェルリンちゃんってのは男だって聞いていたハズだが!?」
「はい♪ 男ですよ♪」
「ま、マジか、マジなのか……」
「え、確かめてみます?」
「なっ!? 何言ってるんだ!」

 打ち合わせの後――
「フローナルさんってエターニスの精霊なんですか?」
「そうだ、珍しいだろ?」
「確かに! 他に見かけませんからね! 私とフローナルさんぐらい……ですか?」
「は? あんたもそうなのか!?」
「はい♪ そうなんです♪」
「すみません、そろそろ――」
 彼女のマネージャーが彼女に急かす。
「あ、そうですね! ごめんなさい、フローナルさん! またいつかお話ししましょうね!」

 次の日のイベントにて――
「フローナルさんは今度は悪役ですね。 もちろん言うことないと思いますが、 フェルリン様をケガさせないように手加減してくださいね!  ここはフェレストレイアの女王様の美しさと勇ましさを”フェレストレイアの女王フェルリン様”が表現する場だからねぇ!」
「あ、ああ、大丈夫だ――」
 だが――
「……やべっ!」
「はぁっ! とぅ! やぁっ!」
「なっ!? ちょっ、ちょっと待て! 訊いてねえぞ!」
「お黙りなさい! 悪とあらば、この私の手で葬り去るまで! でやぁ!」
 その結果――
「はーいカット! いやあー! さっすがフェルリン様だねえ!  今の台本にはなかった気がするけど、アドリブ!?  いやいや、いいんだよ! 今の最高だよ! だから今回はこれを使うことにしよう!  フェルリン様の綺麗さと可愛さならどんな悪もイチコロだ!」
「そっ、そんな――そんなことないですよ――」
「それにフローナル君も躍進の演技だねぇ!  今のアドリブの慌てっぷりとか本当にフェルリン様に追い詰められているかのようだった!  キミもなかなかの役者だねぇ!」
 いっ、いや、そんな――本当に追い詰められていたんだが…… あれが実戦で本のわずかかでもスキを見せようものならその瞬間に絶対に俺殺されてる……。

 その後、彼女は暇さえあればフローナルに連絡をし、 しかも会う約束までしていた……。
「なんだよ、お前、アイドルだろ? こんなとこ、来てていいのか?」
「こんなところだからいいんじゃないですか?」
 それはエターニス……一般民ならまず来ることがない場所である……。
「ねえフローナルさん♪ 私とデートしません!?」
 えっ……えぇ……なんで……

 2人で森の中を歩いていた――エターニスである。
「なーんにもない場所なんだけどな」
「なーんにもないからこうしてフローナルさんと一緒に話ができるんじゃないですか――」
 話か……相手はアイドルだしな、はけ口でも必要なのだろうか、フローナルは考えた。
「まあいいか、休みまで取ったことだしな。で、話ってなんだ?」
 彼女がアイドルになるまでのこと、ついてる女性アイドルの経緯、いろいろと訊いたフローナル。
「だけど……私、このままでいいのかなって――」
「何か不満なのか?」
「ん? うん……だって私、言われるままに言われるままのことしかしてないですからね……」
「確かに、流されっぱなしの人生しか歩んでいないな」
「それに最近気が付いたんですが、ついてる女性アイドルって言われるのは男なんですよ。 ついてるのは男だけなんですって……」
「そうか、そいつは面白い――」
 エターニスの精霊の価値観だな……そう思ったが、彼女の場合はさらにズレていた……こいつはちょっと重症すぎるな。
「一応聞いてみてもいいか? 男と女、どっちが好きだ?」
 えっ、それは――彼女は悩んでいた。
「私は……応援してくださるファンのみなさんならどっちも好きです!」
 訊き方が悪かった……フローナルは悩んでいた。
「あっ、でも……フローナルさんは特に好きですよ!  だって、優しいし、話も聞いてくださるし――」
 え、マジか……