運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第37節 アリフローラの生き様

 ランドグリスからの帰り道、フェレストレイアへのワープ中にカルディアスは何も言わず、 艦内に掲げている旗をすべて半旗にしていた。
「悪いわね、彼女と話がしたくてね――」
 そして、フィレイナはアリフローラの遺体と共に個室にこもった。 アリフローラはベッドの上に静かに置かれていたのである、安らかな顔をして眠っていた――。
「そっとしておいてあげましょう――」
「そうだな、それしかないな――」
「お姉様……」
 3人はその場を後にした。

 だが、フィレイナは沈んでいるわけではなかった。
「ったく――あれだけ心配してんのになんで死んでんのよ!?  それだけは勘弁してって言ったでしょ!?  ったく……アリフローラったらオッチョコチョイにもほどがあるわよね!  どーすんのよこの始末!  どう考えてもこの私のほうが年上なんだから先に逝くのは私だって決まってんでしょうよ!」
 と言いつつ、彼女はベッドに座りつつ悩んでいた。
「ったく……やれやれだわ――。 ま、言っても互いに”長老”を名乗る間柄であることに変わりないからね、 いつ死んでもおかしくはない状態なのは確かだと言えば確かだけど―― 流石に年功序列だけは守りなさいよ――」
 と、彼女のコミュニケータを取り出しながら――
「今更言っても無駄だけどね……。 そうね、私も――あと少ししたらそっちに行くわね、やるべきことをすべて終わらせてからだけどね――」
 なんだか嬉しそうにしていた、彼女の端末に残されている、2人で並んでいて楽しそうに映っている写真、 そして――彼女の笑顔――
「ランドグリスにたどり着いた、 例の正体不明の金属に魔法を当てたら何故か”エターニスの精霊”として認識され、中に入ることに成功した。 エターニス……確か、フェルドゥーナにある”彩りの大地”と呼ばれる場所だったように記憶している――」
 おっと、これは――やはり、彼女が生前に記録していたデータのようだ、フィレイナは確認していた。
「ここのシステムはどうやらそのエターニスの手の者を必要としているらしく、 内部に入った私は案の定システムから不正侵入者と判断され、内部のシステムによって殺されそうだ。 外傷はないが――日に日に自分の身体が破壊されていくような感覚だけはあるようだ。 入口も閉ざされ、もはや助かるすべはない――」
 エラーを起こしたのは外側のシステムなんだから内部でケチつけんなよ…… フィレイナは悩んでいた、遺跡のシステムにもんくを言う女。
「だが、この奥にティルフレイジアが残したとされる手がかりを見つけた、 恐らくあれが”空のカギ”と呼ばれるものなのだろう。 見た目は古に存在していたという魔獣の爪という感じだが――」
 そう、まさにあの時フローナルに取らせたものもそれだった。
「もし、これを手にした者が現れたのなら―― フェレストレイア星のフィレイアという女性に渡してほしい、 彼女であればきっと、ことを成し遂げるハズだ。 これは死に逝く者の願いだ、だから……頼む―― そしたら、次の手掛かりとして――」
 えっ、彼女、何かつかんだのか……フィレイアは考えていた。
「そして最期に……これはフィレイアという女性にあてたメッセージだ、 願わくば……彼女に伝えてほしい―― フィレイア、覚えているか? 私たちは昔……」
 と、フィレイアはその内容をにっこりとした笑顔で嬉しそうに見ていた。

 2日後……メテオ・ナイツはフェレストレイア星へと戻っていた。
「アリフローラ……あなたにはたくさんお世話になったわね――」
 メフィリア……いや、アグメイアは涙声でそう言った、アリフローラは納棺されていた。 そして艦内にて、
「アリフローラはあの遺跡で高度な魔法を食らったことで体組織の破壊が進行していたことで最期は自ら命を絶ったそうだ。 それによって体組織の破壊も止まったためにあの姿を維持できているそうだがなんともやるせないな――」
 フローナルは愕然としながらカルディアスに言った。
「そうだったのか。 聞いたところ、彼女はフェレストレイアでも勇ましい戦士だと言われていたそうだ、 だから自らに起きた事態を把握し、自らの務めとしてほかの者たちのために自らの意思をフィレイナに託したのだろうな――」
 フローナルは考えた。
「アリフローラがか……」
 どうした? カルディアスは訊いた。
「……ああ、何故だかよくはわからんが、彼女なら間違いなくそうするだろうなと思ったまでだ、 面識はないハズだが何故かそう思うんだ……」
 そうか……フローナルが言うのなら間違いないなとカルディアスは思い、にっこりとしていた。