運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第34節 虚無の世界に光を

 自然界を構成する”マナ”の気配がしない――つまり、惑星が全くないということを言っているというのである。
「そんなバカな! いや、なら彗星の類とかはどうだ!? それに”マナ”というものは――」
 カルディアスの疑問にシェリアが答えた。
「彗星にも”マナ”は含まれています。 主に火が強くて他には土の成分が、残りは彗星によりけりになりますが、 それでもなにかしらの”マナ”は含まれていますので――」
 その反応がない? すると――
「はぁ!? ちょっと、どういうことよ!?  周辺宙域に惑星はランドクリスを除いて存在しませんですって!?」
 フィレイナは検索システムを使って調べていた……どういうこと!?
「何もないだと!? ……確かに、見渡す限りの闇の空間が広がっているだけだな――」
 カルディアスは驚きつつも展望カメラの映像を見て考えていた。
「なあ、さっき言ってたその……アドカリアスってところとクバーネスってところ…… あるとしたら何処にあるんだ?」
 フローナルはそう訊くとフィレイナはデータに乗せた。
「あるとしたらこのあたりになるわね……」
 それを見てカルディアスは驚いていた。
「この艦の検索可能範囲内じゃないか!? 該当なしってあるようだが本当か!?」
 それに対してフィレイナが何か言おうとしたがディルナが先に言った。
「艦長! お姉様はそんなウソをつくような人じゃありません!」
 さらにシェリアも攻撃。
「だいたい、彼女がそんなウソを言って何の得があるんですか!」
 そう言われてカルディアスは困惑していた。
「い、いや……別にそういうつもりで言ったわけでは……その……今のは悪かった、 言い方がどうもマズかったようだ――」
 というと、フィレイナは息をつきつつ答えた。
「いえ、確かに――疑いたくなるのも無理もないわよね。でも――」
 そこへフローナルが――
「この様相、どう考えても変だ―― それこそ例えフィレイナがウソをついていたとしても明らかにおかしい……」
 展望カメラを回しながらそう言った。
「なんだ? 何かあったのか?」
 カルディアスは訊くとフローナルは首を振った。
「いや、何もない……そう、本当に何もないんだ。 惑星とか彗星とか宇宙ゴミとか……なんていうかその―― 何一つとしてあるようには見えねえんだ……」
 まさか! するとフィレイナは――
「エーテル学応用式光学探知機を使いましょう!」
 エーテル学応用? 光学探知機? フローナルは訊いた。
「艦からエーテルと共に光を発して周囲の惑星や彗星にぶつけるのよ。 それによってあらゆるもの……例えば宇宙ゴミですら探知が可能になるのよ。」
 なるほど……フローナルは考えた。
「ぶつかったものまでの距離感もわかるし、ぶつかりさえすればそこには必ず何かがある…… という理屈で合ってるか?」
「ええ、まさにそういうことね。さて、その結果は――」
 その結果はまさに驚愕の事実だった。
「艦の背後方面、つまりフェレストレイアやトラジアータ宙域方面からは反射率92.18%…… つまり、確実に何かしらにぶつかっているのは間違いないけど、 反対にアドカリアスやクバーネス宙域からの反射率は――」
 カルディアスはそれを見て愕然としていた……
「そんな、0%……そんなこと、あり得るというのか!?」
 完全に何もないというのは本来であれば考えられることではなかった、 宇宙にはそれがたとえ無人の星だろうと生命の痕跡がなかろうと必ずや何かしらがある…… それがちっぽけなごみだったとしても何かしらがある……ハズなのだが、0%では――
「反射に際して帰ってくるまでの時間が遅いということも考えられるが、 それでも……あまりにも時間が……戻ってくるのが遅すぎる――」
 以前として0%のまま、戻ってくることはなかった――
「またエターニスの精霊の感覚として言わせてもらうが―― 恐らくアドカリアスもクバーネスも違う場所にあるとかフィレイナがウソをついていたとかそう言うことじゃない。 これは――そう、この場所から目の前にあったハズのアドカリアスもクバーネスもどういうわけか消えてしまった―― 世界滅亡の予兆としてこの世から何故か消滅してしまったと考えるのが正しそうだな――」
 いや、それは――エターニスの精霊ではなくともこの艦にいるクルーの誰しもが予感していたことだった、 非常に信じがたいことだがもはやそれしか考えられない……。