運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第1節 謎の惑星

 フローナルは魔物を蹴散らし、生存者を背負って建物を出ようとしていた。
「それで、生きてるのはお前だけなのか?」
「そうだ……、そいつだけは確認した……。 俺も何があったのかわからなかった、それを突き止めていたら魔物に――」
 背後から襲撃されたんだそうだ。
「よし、わかった。 もういい、それ以上はしゃべらなくていいぞ。 とにかく、とっととこんな場所から出ていくぞ――」

 外に出ると、フローナルは先ほどの建物の中へと入って行った。
「おかえり! どうだった……って、どうしたの!?」
 女はフローナルの様子を見て驚いていた、誰かを背負っている。
「話は後だ。 ここじゃあ設備が足りねえ、一旦”本艦”に戻るぞ――」
 そう言いつつ、フローナルは先ほど助けた男をシートに座らせるとベルトでしっかりと縛っていた……本艦?
「これでいいぞ。ディルナ、早速出してくれ――」
 それに対して彼女は――
「オッケー! エンジン点火!」
 そしてフローナルもまたディルナの隣のシートに座るとベルトを締め、目の前の機械を操作していた。
「よし、発進!」
 そして……なんと、自分たちがいる建物は宙に浮きあがるとそのまま上空へ……宇宙へと飛び立った!

 世界はフェルドゥーナ歴1万と3697年……それまで世界は何度も後退し、滅びの時を迎えることになった。 だが、世界は復興すると再び繁栄し、英華を極めていった……輪廻転生、自然の摂理である。
 世界はなおも英華を極めていくと、 人々の生活をさらに豊かなものものへと発展させていく。 そしてフェルドゥーナ歴1万と3000年改め、フェルドゥーナ宇宙歴697年――人々はいよいよその手を宇宙へと向けることとなったのである。
 フローナルとディルナは宇宙探査ミッションに携わっており、まさにその任を遂行している最中である。 だが、詳細は不明だが、途中で救難信号を受け取ったためフローナルとディルナの2人は今しがた謎の惑星にて、 1人の救難者を助けてきたのである。
「本艦への到着予定時刻は……あと1時間ってところかな?」
 ディルナはそう言うとフローナルは考えていた。
「1時間……ギリギリの時間ってところだな。 本艦の転送射程圏内に入ったらこいつを先に本艦に転送させてやったほうがよさそうだな」
「そうだね! そのほうがいいよ! でないと死んじゃう!」

 フローナルは自身のケガを治療していた。
「大丈夫? 見たことのないタイプの魔物と戦ったんでしょ?」
 ディルナは心配そうに訊いた。
「とりあえず問題はなさそうだな。 それに都合よく血清の元もこの通り手に入った、 後ろのそいつもこれで何とか助かるだろうな」
 と、フローナルは試験管に自分の血液を入れ、 栓をすると目の前にあるちょうど試験管が置けそうな輪っかにそれを置いた。
「えっ、まさか血清を手に入れるためにわざと食らったわけじゃないよね!?」
 ディルナは焦って聞くとフローナルは呆れながら答えた。
「俺はそんな変態じゃねえっての。 思いのほかヤバイやつだった、だから不意にもらっちまったが……つまり結果オーライってやつだな。 こいつは感覚だが……もって2時間弱ってところだな」
 2時間弱! ディルナは再び焦っていた。
「だったらフローナルも一緒に転送したほうがいいよ!」
 フローナルはゆっくり首を振った。
「艦を動かすのは2人1組が鉄則だからそいつは無理だ。 それに俺はまだ大丈夫だ、向こうについてからゆっくりと処置を施せば間に合う。 それと、そんな俺らと一緒にいるディルナもきちんと診てもらえよな、何があるかわからねえし――」
 言われてみればそれもそうか、ディルナは悩んでいた。

 フローナルは遠目にある先ほどの惑星を眺めながら言った。
「やっぱり妨害電波が仕掛けられていたようだな。 てことはつまり、何かを隠蔽するための施設だったのは間違いなさそうだな――」
 そう言われてディルナは考えていた。
「変なの、隠蔽するんだったらそもそも妨害電波を出す意味ってあるのかな?」
 フローナルは考えた。
「普通はねえな、電波を出すってことは何かしらがあるって自ら言っているようなもんだからな。 だが、それでもあえて電波を出すってことは―― そもそも今回の研究所は正規の手続きを踏んで成立している政府がらみの施設だから妨害電波を出す必要がないんだ」
 ディルナは悩んでいた。
「正規の政府の研究所が妨害電波!? どうして!?」
 フローナルは再び考えた。
「考えられることとしては……裏で何かしらのヤバイ研究を行っているからだろうな。 表向き正規の研究をやっていれば確かにクリーンな研究所でしかないのは間違いないが――」
「でも、定期的に報告書を出すよね? そこでわからないものなのかな?  政府の研究開発費とは明らかに成果が釣り合っていなければ――」
「つまり、金の流れだけ見てもわかんねえってことだな、何かしらの裏があることは間違いない、と。 ところで――今回の調査団の艦の所在はどうだった?」
 フローナルは訊くとディルナは答えた。
「あったよ、星の反対側に置いてあったみたい。 本艦に出動要請を出したから後で回収されるハズだよ」
 フローナルはゆっくりとシートに座った。
「そうか、とりあえず今のところは予定通りに事が進んでいるようだな――」

 ”本艦”に近づいてきた。 そこにはなんとも大きな艦が宙に留まっており、 2人が乗っている艦は吸い込まれるようにその艦へと進んでいった。
「よし、そろそろこいつを転送させるか。ディルナ、頼む」
「任せて! 救護班、今転送します!」
 と、本艦のクルーとやり取りしながら作業を行っていた2人。 要救護者の姿は少しずつ消え去り、次第に姿かたちが完全に消えていった――
「うまくいったか?」
「転送収容できたって! そしたら後は私たちだね!」
 フローナルはシートに座った。
「よし、そうと決まったら早速帰艦するぞ……」
 と、フローナルは舵を握りしめていた。
「”トラクター・ビーム”の捕捉圏内に入ったよ!」
「よし、あとはビームの引力にしたがって進むだけだな――」