アーカネリアス・ストーリー

第7章 アーカネリアスの英雄たち

第234節 エピローグ・時の試練からの帰還

 邪悪なるものが斃され、然るべき処置が施されると、この世界の破壊は免れられることとなった。 あの亜空間に展開された闇の世界も消滅し、破壊の灯の火もすっかりと鎮火していた。
 そして、あれから20年の歳月が流れた。 アーカネリアスでは、また新たな刻みを迎えようとしていた――

 クロノリアにて。
「よし、そろそろよろしいかなっと」
 家の中、スクライトは立ち上がり、何やら念じていると、そこに女性が現れた。 しかし、その女性――
「痛っ! 痛いよおー!」
 廊下の柱に向かって思いっきり顔面を強打していた……。 恐らく30は過ぎているはずなのだが、彼女はクレアである。
「おおっ、ちょうどいいところに来たね!  そろそろ彼らを迎えに行かなければって考えていたところだよ。 ほら、精神修行しているんだから多分祠から出てきても満足に動けないんじゃないかなと思ってさ。 明日、クロノーラに呼び出される日だろう?」
 確かにそんな時期だったか――クレアは遠い目をしながら考えていた。
「彼らはまだ当時の姿を保っているはずだよ、懐かしく思うんじゃないかな?  別れる前に会ってきてあげなよ」
「あなたは会われないんですか?」
「私かい? これから用事があるからね、だから一週間前ぐらいに会ってきたよ、精神世界を通じて直接ね。 そしたらなんと、ロイド君に見事に怒られてしまったよ、わざわざ何しに来たんだってさ。 まっ、私なんぞはまたいつでもロイド君に会える機会が作れるからね、別に何だっていいのさ」
 そうなのか――クレアもなんだかスクライトに少々思うところがあったようだ、この人何なのだろうと。

 クレアは細い山道を登っていくと、洞窟からロイドが這い上がっていた。
「みなさん! 大丈夫ですか……!?」
 ロイドは答えた。
「ん……? まさか……クレアか!?」
 あまりの見違えっぷりにロイドは驚いていた。
「はい、ロイドさん! お久しぶりで――」
 と、そのときだった、彼女はローブの裾を踏んずけるとその場で思いっきりこけてしまい、思いっきり顔面を強打!
「うひゃあ!」
 これは――確かにクレアだ――ロイドは確信した。
「そうです……この通り間違いなく私ですよぉー! 痛いよおー!」

 クロノリアで三日ほど過ごした明かしたロイドたちだが、何名かがどうしても意識不明のまま横たわっていた。
「みなさん……大丈夫でしょうか……?」
 セレイナは心配していた、特に心配な人は恐らくリアントス……ロイドが答えた。
「この世界で最も魂の器の小さい人間族だからな、無理もない。 だが、とりあえず生きていれば大丈夫なはずだ」
 だといいんだけど――セレイナは心配していた。するとそこへ――
「あっ、みなさん! おはようございます!」
 クレアのなんとも大人っぽい風貌に慣れないロイドたち、違和感を感じつつもあいさつをし返した。
「そうか、これからクロノーラのもとへと行くんだな?」
 ロイドはそう言うとクレアはにっこりとしていた。
「はい! そうなんです! 昔は本当にいろいろとお世話になりました!  もし、今後も一緒になる機会がありましたらよろしくお願いいたしますね!  それと、皆さんに会うことがあれば、よろしくお伝えください!」
 と、そんな挨拶をすると、クレアは早々に去って行った――。

 動けないメンツをなんとか引き連れて馬車に乗り込むと、今度はそのままエルナシア平原を東に。 すると――
「あら、ロイド、ごめんね――」
 ライアが気が付いた。
「ん? あっ、悪いな、もうクロノリアを発っちまったぞ。 クレアがよろしく伝えといてくれってさ」
 クレア――ライアは考えた。
「なんだか不思議ね、彼女とはまた会えそうな気がするわ――」
 ロイドとセレイナは頷いた。
「きっとな」
「そうですね!」
 彼らはクロノリアのあるエルナシア大連山をバックにドミナント大陸を後にした。

 船でアルトレイへとたどり着いたが、町はだいぶ様変わりしていた。 その様相はもはや当時のアーカネルかと思うぐらい整備された街並みとなっており、 賑わいを見せていた。
 するとそこに――
「おやっ!? まさか、ロイドさんですか!?」
 その人は誰だかすぐに分かった、ランブルだ。 確かに少々老けた印象こそあるがそれ以上はそんなに変わった印象はなかった。
「何っ!? ロイドだと!? ここであったが百年目! 今こそあの時の雪辱を晴らす時!」
 あぁ……このセリフもなんだか懐かしいな、大きな男……ゼクスが現れるとそう言った。
「よう、破壊魔剣まだ返していないんだが、こいつ相手でよければやるか?」
 そう言われてゼクスは照れた様子で答えた。
「冗談だよ、それにしても懐かしいな――」
 そうは言うが、ロイドは改めてゼクスの様相を見て驚いていた、 あの重鎧を身にまとっていないから当人との認識が一致しなかった。 それに、身長こそ2メートルを維持してこそいるが、当時に比べるとだいぶすっきりしたような体系だった、 これはモテそうだ――
「娘にいい加減に痩せろと言われたからなぁ……それで頑張って結果がこれだ、なんとか効果は出ていると思うが――」
 いや、むしろ何をしたんだ!? ロイドたちはそう言いたくなっているほどだった。
「すみませんね、これでも仕事中でして。 街道の途中まででよければご案内いたしましょうか?」
 ランブルは気さくにそう訊くとロイドたちはお願いした。