アーカネリアス・ストーリー

第7章 アーカネリアスの英雄たち

第232節 絶望

 シルルはやられては立ち上がり、やられては立ち上がりと、とにかく邪悪なる者を追い詰めていた。
「己ぇ! いい加減にアビスへと落ちるがよい! <スター・ダスト・ジェネシス!>」
 だが、シルルはそれをなんとかやり過ごし、邪悪なる者の背部に――
「なんだと!?」
「前にばかり集中しすぎるのが悪い癖のようだな……。 まあいい、これでトドメだ! アクシズ・ドライブ!」
 と、シルルは邪悪なる者に襲い掛かった!  そして剣撃で翻弄しつつ乱舞すると、そのまま正面からの必殺の一撃で邪悪なる者を勢いよく掻っ捌いた!
「ぐはぁっ!」
 やったか!?
「くっ……不覚をとったか、だがまだまだ終わらぬ!  <エクスター・フェニックス!>」
 さらに追撃の始原の炎! しかし、シルルはそれに構わず突っ込んだ!
「バイオレンス・クリティカル!」
 彼女は正面から勢いよく突っ込んで邪悪なる者の身体をぶち抜いた!
「かはっ――」
 それと同時に、シルルもその場にしゃがみ込み、大剣を手放すと左腕を抑え込んで辛そうにしていた。
「やったか――」
 そして振り向くと、そこには邪悪なる者の身体が崩れ去ってゆく様が――
「うがあああああ!」
 そして、邪悪なる者は跡形もなく消え去った――。

 その様子に安心したシルル、とにかくネシェラの元へとやってくると、彼女に対して回復魔法を――
「なっ!? これはまさか――」
 と、なんだか様子がおかしい……地面の一部が少しずつ盛り上がているようだ――。
「遊びはこれまでだ。 さあ、真に絶望する姿を我に見せてみるがいい――」
 なんと、その場にはウロボロスが!  だが、そのウロボロスの意識は明らかに邪悪なる者――
「我は破壊するもの――虫ケラの分際で我の邪魔をするなどとは言語道断!  こうなったらやむを得ん、世界を闇に落とすことが不可能というのなら、 まずは貴様らをこの世界ごと破壊してくれよう!  そして面倒だが、すべてが消滅した後に闇の世界を作り上げるのだ!」
 と、そいつは先ほどの邪悪なる者と例のウロボロスとが融合した姿で、さらに巨大化していた…… にも関わらずメンバーは全員ボロボロ、果たしてこんな状況で勝機はあるのだろうか!?

「おい! 起きろ!」
 なんだ――アレスはその声に反応した――もしかして、お父さん……!?
 アレスは周囲を見渡したが絶望的な状況には変わらない――いや、敵を見ると、状況はもっとひどくなっている節さえある、それなのに――
「アレス! 剣を使え! その剣はただの剣じゃない!  友情によって作られた不屈の闘志の証だ! みんなを信じるんだ!」
 そう言われると、アレスは目の前に転がっている剣が視界に入った……彼は覚悟を決めた。
「わかった! 行くぞ!」
 突然立ち上がったアレスに驚いた破壊するもの、シルルをぶち破った後、彼女はその場で崩れると――
「ほう、まだ死んではおらなんだか……。 いずれにせよ、結果が変わることはあるまいが――」
 呆れ気味に言った。そしてアレスは勇気の構えを放った!
「ブレイブ・スタンス!」
 アレスの力がみなぎってくる!

「おい、起きろっつってんだろ! いつまで寝てんだテメー!」
 この声は――ロイドは気が付いた。
「ったく、いい加減にしやがれよ貴様……」
 この声まさか! ロイドは気が付いた。
「そうだ、元ハンターの俺だ」
 シャービス!? なんでお前が!? ロイドは焦っていた。
「貴様の親父は貴様に会いたかないそうだ。 既に俺が殺したからな、だから貴様と会うのはまだ早えってことらしいぞ」
 だからってなんでお前が――ロイドはそう思った。
「貴様は俺を唯一破った男だからだ、これはせめてもの礼だ。 それに――俺だって例えクリストファーとつるむことにしたとはいえ、 こんなん聞いてないからな、そいつは話が違ぇってんだ。 だったら俺を破った貴様に託すしかねえかと思ったらこのザマだ」
 それは悪かったな――ロイドはそう思った。
「俺が思うに――貴様、まだ本気出してねえだろ?」
 は? ロイドは耳を疑うが――
「いいや出してねぇ。 なんたって貴様が持ってるのは破壊の剣ってやつだ、つまり、世界すらをも破壊できる得物なんだろ?  だったらもっとうまい使い方できるやつは俺は知っている……」
 世界を破壊って、まさか――
「ああ、それしかねえだろ、どう考えてもな。 だが、やつが得た世界を破壊する力ってのはつまりはそう言うことだろ? だったら――」
 なるほど、そいつは名案だ――ロイドは剣を携えて立ち上がった!
「よしよし、それでいい。 どうせ死ぬんだったらもうちょっと粘ってほしいもんだな」
 シャービスの意識はそう言い残して消えていった、なんだったんだあいつは……。 そしてロイドは立ち上がると、
「何っ!? なんと、此度の英雄気取りは相当にしぶといようだな――」
 破壊するものはロイドを見るなり、呆れ気味にそう言った。 しかしその流れは止まらず、流星の騎士団は次々と立ち上がった――。
「まあいい――何人立ち上がろうと結果は同じことだ……」