次第にお城が見えてきた。そのお城が”バルティオス”のようである。
「バルティオス王はいるんだが、今は民主政治に完全に切り替えている。
まあ、昔の王政政治もほとんどは民主政治みたいなもんで、実際にはそこまで大きくは変わっていないらしいんだが――」
と、クラフォードはため息をつきながら言った、何故ため息?
「さてと、とにかくバフィンスを捜そう、俺もあいつに用事があってここにきたわけだしな」
とにかくそのオヤジを捜さないといけないわけだな。
バルティオスは大きな城が建っている以外はティルアと大して変わりの無い外観だった。
バルティオスは民家が比較的少なく、ほとんどが城内にあるのが特徴だった。
「どこに行けば会えるのかな?」
クレンスが訊いた。
「ノンダクレオヤジときたら、いる場所はひとつだけだ、城に行くぞ」
何故城へ? しかしすぐに謎が解けた――城内に入ってすぐに酒場があった……。
「何で城の中に酒場が……」
フェリオースは疑問だった。
「国王の酒好きが講じてこうなったんだ」
クラフォードは答えた。
「ここの国王、何を考えているんだろう――」
ラクシスは言った。
「バルティオス王は何を隠そうリオーンだからな、その一言で説明がつく」
クラフォードは答えた。リオーンといえば4人のノンダクレオヤジの1人――
「しかも、やつはシェトランド人、ヒミツなんだけどな。
まあ、秘密にしたところでヤツを殺せる人間はそうそういないだろうよ」
クラフォードによれば、やつの実力がそうなのは当然のことなんだが、
それ以上に”殺しても死なねぇ”タイプの人間だからと言うことらしい。
どうやら、そのことは4人のノンダクレオヤジすべてに当てはまる性格らしい――
「ほら! 酒が入ってねぇぞ!」
「テメェ、何をぼさっとしてやがるっ!
ボトルが空じゃねえか! ケンカ売っているのか!? ああん!?」
2人のオヤジの声が聞こえてきた。
それに対してカウンター越しのバーテンダーが慌てて対応している。
「”ボトルが空”って言ったほうがバフィンスだ、行くぞ」
正直、どっちでもいい気がする。
「バフィンス、”ルダトーラ”からの御達しがきているぞ」
「あんだぁ? なんだ、クラフォードのクソガキじゃねえか、何しに来やがったんだ?」
「”ルダトーラ”がテメェに用事があるって言ったんだ、このノンダクレのクソジジィ」
「くっ、クソジジィって……テメェ! なかなか言うじゃねえか! お前もこっちにきて酒飲め!」
「言ってる場合かクソジジィ! ほら、行くぞ!」
クラフォードはバフィンスの首根っこつかんで引きずり、席から下ろした。
そして、そのまま酒場を退場していった。
「あっ、あぅぅぅぅ……リオーンよぉ、この続きはまた今度な!
クソガキがうるせえから行くことにするぜ!」
「おう! また来いよな!」
えっ、一緒にいたあのオッサンが国王のリオーンなのか、
どう見てもただのオッサンじゃないか――
「こんなんがこいつらの日常だ」
酒場を出るや否や、クラフォードはため息をついてそう言った。
「はぁ? ”ルダトーラ”って何だ?」
「思い出すまで頭ドツキまわしてやってもいいんだぞ」
また怖いこと言うな。
「うそ、うそだっつーの、分あっった、分あったからよ。
……にしても、このエクスフォスとシェルフィスはなんなんだ?」
こんなノンダクレオヤジにもアーシェリスらが見透かされているようである。
「アンタに訊きたいことがあるそうだ」
というと、クラフォードはアーシェリスに促した。
「えっと、ワイズリアを捜しているんだけど――」
そういうと、なんと、バフィンスも10数秒沈黙した、お前もか!
「あ、ちょっと待ってろや」
すると、バフィンスはおもむろに酒場へと入っていき、リオーンを呼び出した。
「は? ワイズだと!? ……そういやあいつ、なんだか最近あちこち行っているみたいだな――」
「だよなあ? なんかこの間も”ルシルメア”に行ってきたとか、”ディスタード”行ってきたとか――
あ、俺もディスタード行ったりするけどよぉ、あいつとは会わなかったぜ?」
「何ィ~!? お前もディスタード行ったりしてんのか~!?」
「そりゃしょーがねえだろ!? このクソガキが行けってうっせぇんだからよ!
しかも今日もまた”ルダトーラ”が俺を呼んでるだのなんだのかんだの言うからしょうがねえ!」
「それは俺が悪いのか?」
クラフォードは冷ややかな目でバフィンスを見ながら言った。
「ったく! テメェは可愛くねぇガキだな!」
「そりゃどーも、んなことでテメェに褒められたところで嬉しくもなんとも思わねぇから安心していいぞ。
とにかく、それが分かったところでさっさと行くぞ」
クラフォードはバフィンスの首根っこを再びつかみ、城の出口へと歩き出した。
アーシェリスらもその後についていった。
「リ、リオ~ン! また今度な~!」
バフィンスはリオーンに向かってそう言った。
「お、おう……、気をつけろよな~!」